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第2の異世界ーお金持ちと結婚したい女
第17話 金持ちの男を紹介するが……
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次の日、俺はサワキフクをデュロリアンの助手席に乗せて町を走っていた。
「ずいぶん古い車ですね」
「古いのか?」
町ではいろいろな種類の自動車を見かけるが、どれが新しいとか古いとかはわからない。デュロリアンと同じ形のは見かけないので、珍しいものとは思っていたが。
「古いですよ。昔の映画に出てたんで、有名な車ではありますけどね」
「エイガ……?」
また知らない言葉が出てきて返答に困る。
「ほう、この世界にもあの映画はあるんじゃな」
後部座席でパソコンをいじりながらツクナが言う。
「この世界?」
「なんでもない。その映画とは、デュロリアンで過去と未来を行き来するものじゃろ?」
「そうそう。ツクナちゃん、小さいのによく知ってるね」
「古い映画はじーちゃんとたくさん見たからのう」
「あーそうなんだ。おじいさんがねぇ。もしかしてこの車っておじいさんの?」
「うむ。じーちゃんのコレクションを譲り受けたものじゃ」
「く、車をもらっちゃうんだ。今どきの小学生ってすごいんだね。あ、もしかしてツクナちゃんのおじいちゃんってお金持ちだったりするのかな?」
わくわくしたような表情でサワキフクはツクナに問う。
「別に普通じゃ」
「あ、そ」
一転して顔から興味が消え失せる。
「金持ちだったらじいさんと結婚でもするつもりだったのか?」
「そんなつもりはないですよ。ツクナちゃんのおじいさんがハバンさんのお父さんだったら、いずれは遺産が入ってハバンさんがお金持ちになるかもって思っただけです」
「そ、そうか」
なるほど。そういう考え方もあるか。別に感心することでもないが。
「素朴な疑問だけど、金がほしいなら自分で稼いで金持ちになればいいんじゃないか?」
「ハバンさん、お金持ちになるって大変なんですよ。実力だけでなく運も必要です。残念ながら私にはお金持ちになるほどの能力はありません。自分のことだからわかります」
「そうなんだ」
「はい。けれど、お金持ちと結婚できる美貌はあると思うんです。どうですか?」
「えっ? あ、まあ、そうだな。美人だとは思うよ」
「ですよねー。イケメンのハバンさんにそう言ってもらえると嬉しいです」
「ははは……」
イケメンってどういう意味なのかはいまだにわからないけど。
「それで、紹介してくれるお金持ちってどんな人なんですか?」
「もうすぐじゃ」
ツクナの指示通り、車を進めて行き、やがて大きなビルの前に着く。
「あの男じゃ」
ビルの入り口から恰幅の良い年配の男が出て来るのが見える。
「大手不動産会社の社長じゃ。年齢は59で、妻とはおととしに離婚しておる。どうじゃ? あれはかなりの大金持ちじゃぞ」
「ど、どうって……」
サワキフクが助手席の窓からその男に目をやるが、
「歳が離れすぎかな……」
「金持ちなんてほとんどおっさんじゃぞ」
「け、けど、59ってお父さんより年上だし、もっと若いほうがいいかな」
「しょうがないのう。ハバン、次じゃ」
「ん、うん」
車を発進させて次へと向かう。
次に到着したのは大きな豪邸の前だ。
「門から出て来てリムジンに乗ろうとしているあの男は先ごろ多くの土地を相続された資産家の大金持ちじゃ。年齢は35でさっきの男よりずっと若いぞ」
「うーん……」
男を見るサワキフクの目はどんよりと暗い。
「なんかデブいし臭そう」
「金持ちならいいんじゃろ?」
「ああいう人は生理的にちょっとね……無理」
「むう。まあよい。まだ候補はおるしの。ハバン。次へ行くのじゃ」
「うん」
言われて次へ向かうが……。
「チビガリ」
「ハゲ」
「顔がね……。タイプじゃない」
十分なほどの金持ちたちを見せるも、サワキフクはどれも嫌がって納得しない。
30人目を嫌がったとき、
「なんじゃっ! 金持ちなら誰でもよいのではないのかっ!」
毎度毎度、難癖をつけて断るサワキフクにイラついていたのかツクナが吠えた。
「ずいぶん古い車ですね」
「古いのか?」
町ではいろいろな種類の自動車を見かけるが、どれが新しいとか古いとかはわからない。デュロリアンと同じ形のは見かけないので、珍しいものとは思っていたが。
「古いですよ。昔の映画に出てたんで、有名な車ではありますけどね」
「エイガ……?」
また知らない言葉が出てきて返答に困る。
「ほう、この世界にもあの映画はあるんじゃな」
後部座席でパソコンをいじりながらツクナが言う。
「この世界?」
「なんでもない。その映画とは、デュロリアンで過去と未来を行き来するものじゃろ?」
「そうそう。ツクナちゃん、小さいのによく知ってるね」
「古い映画はじーちゃんとたくさん見たからのう」
「あーそうなんだ。おじいさんがねぇ。もしかしてこの車っておじいさんの?」
「うむ。じーちゃんのコレクションを譲り受けたものじゃ」
「く、車をもらっちゃうんだ。今どきの小学生ってすごいんだね。あ、もしかしてツクナちゃんのおじいちゃんってお金持ちだったりするのかな?」
わくわくしたような表情でサワキフクはツクナに問う。
「別に普通じゃ」
「あ、そ」
一転して顔から興味が消え失せる。
「金持ちだったらじいさんと結婚でもするつもりだったのか?」
「そんなつもりはないですよ。ツクナちゃんのおじいさんがハバンさんのお父さんだったら、いずれは遺産が入ってハバンさんがお金持ちになるかもって思っただけです」
「そ、そうか」
なるほど。そういう考え方もあるか。別に感心することでもないが。
「素朴な疑問だけど、金がほしいなら自分で稼いで金持ちになればいいんじゃないか?」
「ハバンさん、お金持ちになるって大変なんですよ。実力だけでなく運も必要です。残念ながら私にはお金持ちになるほどの能力はありません。自分のことだからわかります」
「そうなんだ」
「はい。けれど、お金持ちと結婚できる美貌はあると思うんです。どうですか?」
「えっ? あ、まあ、そうだな。美人だとは思うよ」
「ですよねー。イケメンのハバンさんにそう言ってもらえると嬉しいです」
「ははは……」
イケメンってどういう意味なのかはいまだにわからないけど。
「それで、紹介してくれるお金持ちってどんな人なんですか?」
「もうすぐじゃ」
ツクナの指示通り、車を進めて行き、やがて大きなビルの前に着く。
「あの男じゃ」
ビルの入り口から恰幅の良い年配の男が出て来るのが見える。
「大手不動産会社の社長じゃ。年齢は59で、妻とはおととしに離婚しておる。どうじゃ? あれはかなりの大金持ちじゃぞ」
「ど、どうって……」
サワキフクが助手席の窓からその男に目をやるが、
「歳が離れすぎかな……」
「金持ちなんてほとんどおっさんじゃぞ」
「け、けど、59ってお父さんより年上だし、もっと若いほうがいいかな」
「しょうがないのう。ハバン、次じゃ」
「ん、うん」
車を発進させて次へと向かう。
次に到着したのは大きな豪邸の前だ。
「門から出て来てリムジンに乗ろうとしているあの男は先ごろ多くの土地を相続された資産家の大金持ちじゃ。年齢は35でさっきの男よりずっと若いぞ」
「うーん……」
男を見るサワキフクの目はどんよりと暗い。
「なんかデブいし臭そう」
「金持ちならいいんじゃろ?」
「ああいう人は生理的にちょっとね……無理」
「むう。まあよい。まだ候補はおるしの。ハバン。次へ行くのじゃ」
「うん」
言われて次へ向かうが……。
「チビガリ」
「ハゲ」
「顔がね……。タイプじゃない」
十分なほどの金持ちたちを見せるも、サワキフクはどれも嫌がって納得しない。
30人目を嫌がったとき、
「なんじゃっ! 金持ちなら誰でもよいのではないのかっ!」
毎度毎度、難癖をつけて断るサワキフクにイラついていたのかツクナが吠えた。
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