13 / 63
やっぱり、元カレと遭遇したじゃないか!
しおりを挟む
駅前のタワマンに引っ越してきた、元カレ・園原将嗣。
ヤツに会う心配をして、数日タワマンには近づかずに過ごしてきた。
でも、よくよく考えれば歯科医院の勤務医である将嗣の休みは、木・日曜日だったはず。それを避けた曜日の日中に買い物へ行けば、仕事をしているヤツにばったり出会うこともないだろう。
そして、今日はスーパーで水曜日のお客様感謝デーとドラックストアのポイントアップが重なる日。
こんなお得情報を逃すわけには行かないのだ。
いざ出陣!
タワマンの駐車場に車を入れ、美優をショッピングカートに乗せて店内に。
さすが、感謝デーとポイントアップが重なる日とあって人が多い。
だが、この戦いに負ける訳には行かないのだ。
先ずは、ドラックストアを目指しカートを走らせる。
カートの下の段にオムツの大パック2個を乗せ、上の段へおしりふきトイレに流せる用3個1パックを放り込む、後はテッシュペーパーとトイレットペーパー・シャンプーリンス。離乳食などの赤ちゃん用品も選ぶと、カートは既にいっぱいだ。
娘が飽きて泣きださないうちに素早い行動が求められる。しかし、レジに行けば大行列だ。
ここは、上手く美優をあやしながら並ぶしかない。しかし、並んだレジの行列はなかなか進まず、おやつの赤ちゃん用おせんべいで誤魔化すのもそろそろ限界かもしれない。
ああ、お願いだから泣かないで!
どんどん不機嫌になってぐずり始めた美優にハラハラしている時だった。
「夏希、また会えたな」
っと、不意に声を掛けてきたのは、元カレの園原将嗣だ。
よりにもよって、逃げられない、このタイミングで……。
「チッ!」心の中で舌打ちをした。
美優がフニャフニャ言い出した。
万事休すの状態にフッと名案を思いつく。
お財布から一万円札とポイントカードを取り出し、元カレ将嗣にカートを押し付けた。
「ごめん、これでレジ精算して置いてね。私、この子が泣きそうだから表のベンチで待っているわ。よろしく」
美優を抱えて、ドラッグストアの外へ逃げ出す。
「おいっ、夏希!」
呼ばれても聞こえないふりをして、店外へ急ぐ。
少なくとも将嗣は、お金を持ち逃げしたりカートを放置する人間ではないから、お会計を終えるのをベンチで待つ作戦だ。
買い物も出来て、将嗣との会話も避けられ一石二鳥。
人の熱気で熱くなったドラッグストアの店内から出ると、ホッとする。
美優のほっぺたも赤くなって、かわいそうな事をしてしまった。
適温に保たれたビルの中のベンチに座り、一息ついていると、なんで平日の水曜日に将嗣が現れたのか気に掛かる。
暫くするとドラックストアの店内から、会計を終えた将嗣がやってくる。
雑用をいきなり押し付けられたにもかかわらず、何故か満面の笑みを浮かべていた。
こわっ! 意味がわからない。
「夏希、買ってきたぞ。凄い量だな。はい、これ」
将嗣は、そう言いながら、預けた一万円札とポイントカードを渡してきた。
「あなたに日用品を買ってもらう事は出来ない。なんで、渡したお金で払ってくれなかったの!」
「レジも混んでいたしな、カードの方が便利だろう? たいした金額じゃないし気にするなよ。荷物いっぱいだろう? 家まで送るよ」
仮にも元カレ、家の場所を知っているんだった。
「自分の車で来ているから、送って貰わなくても大丈夫」
「じゃあ、車まで荷物を運ぶよ」
本当は、将嗣にさっさとお金を払い逃げ出したいが、実際問題、この日用品の山を運んで貰えたらどんなに楽だろう。
くっ!
この提案は、甘んじて受け入れるしかない。
「……お願いします」
地下駐車場へと続くエレベーターのスイッチを押すと、扉がスッと開き乗り込んだ。
混んでいる日にも関わらず、エレベーターの中は私達だけだった。
サイアク!
案の定、将嗣は話し掛けてくる。
「夏希、あの時、俺は結婚していたし、それを隠して付き合っていて悪かった。夏希が怒ったのも無理はない。けれど俺の話しを聞いて欲しい」
それを聞いて今更どうするのか? と思う。男女の関係は、別れた時点で終わりなのだ。
でも、将嗣には言っていないけど、美優の実の父親。
いま、将嗣に美優の事を言ったら将嗣はどんな反応をするのだろうか。
今、重要な分岐点に立っている事は、理解している。だけど、決心が付かない。
頭の中は大パニック、ぐるぐると色々な思いが過ぎる。
ここであることに気が付いた。
区役所で会った時は、ただ、偶然で懐かしくて声を掛けたのかも知れない。
けれど、今日、声を掛けて来たのは不自然だ。普通、子持ちの元カノなんて、「結婚したんだな」って思うはずだ。
わざわざ私に声を掛けて来たという事は、もしかて、美優の事を自分の子供だと気が付いたのだろうか?
でも、知らない間に父親にされてしまったとしたら、こんなに自然と声を掛けてくる事が出来るとも思えない。
ただ、過去の過ちを謝罪したいだけなのだろうか?
本当に、将嗣の目的ってなんなんだ?
ヤツに会う心配をして、数日タワマンには近づかずに過ごしてきた。
でも、よくよく考えれば歯科医院の勤務医である将嗣の休みは、木・日曜日だったはず。それを避けた曜日の日中に買い物へ行けば、仕事をしているヤツにばったり出会うこともないだろう。
そして、今日はスーパーで水曜日のお客様感謝デーとドラックストアのポイントアップが重なる日。
こんなお得情報を逃すわけには行かないのだ。
いざ出陣!
タワマンの駐車場に車を入れ、美優をショッピングカートに乗せて店内に。
さすが、感謝デーとポイントアップが重なる日とあって人が多い。
だが、この戦いに負ける訳には行かないのだ。
先ずは、ドラックストアを目指しカートを走らせる。
カートの下の段にオムツの大パック2個を乗せ、上の段へおしりふきトイレに流せる用3個1パックを放り込む、後はテッシュペーパーとトイレットペーパー・シャンプーリンス。離乳食などの赤ちゃん用品も選ぶと、カートは既にいっぱいだ。
娘が飽きて泣きださないうちに素早い行動が求められる。しかし、レジに行けば大行列だ。
ここは、上手く美優をあやしながら並ぶしかない。しかし、並んだレジの行列はなかなか進まず、おやつの赤ちゃん用おせんべいで誤魔化すのもそろそろ限界かもしれない。
ああ、お願いだから泣かないで!
どんどん不機嫌になってぐずり始めた美優にハラハラしている時だった。
「夏希、また会えたな」
っと、不意に声を掛けてきたのは、元カレの園原将嗣だ。
よりにもよって、逃げられない、このタイミングで……。
「チッ!」心の中で舌打ちをした。
美優がフニャフニャ言い出した。
万事休すの状態にフッと名案を思いつく。
お財布から一万円札とポイントカードを取り出し、元カレ将嗣にカートを押し付けた。
「ごめん、これでレジ精算して置いてね。私、この子が泣きそうだから表のベンチで待っているわ。よろしく」
美優を抱えて、ドラッグストアの外へ逃げ出す。
「おいっ、夏希!」
呼ばれても聞こえないふりをして、店外へ急ぐ。
少なくとも将嗣は、お金を持ち逃げしたりカートを放置する人間ではないから、お会計を終えるのをベンチで待つ作戦だ。
買い物も出来て、将嗣との会話も避けられ一石二鳥。
人の熱気で熱くなったドラッグストアの店内から出ると、ホッとする。
美優のほっぺたも赤くなって、かわいそうな事をしてしまった。
適温に保たれたビルの中のベンチに座り、一息ついていると、なんで平日の水曜日に将嗣が現れたのか気に掛かる。
暫くするとドラックストアの店内から、会計を終えた将嗣がやってくる。
雑用をいきなり押し付けられたにもかかわらず、何故か満面の笑みを浮かべていた。
こわっ! 意味がわからない。
「夏希、買ってきたぞ。凄い量だな。はい、これ」
将嗣は、そう言いながら、預けた一万円札とポイントカードを渡してきた。
「あなたに日用品を買ってもらう事は出来ない。なんで、渡したお金で払ってくれなかったの!」
「レジも混んでいたしな、カードの方が便利だろう? たいした金額じゃないし気にするなよ。荷物いっぱいだろう? 家まで送るよ」
仮にも元カレ、家の場所を知っているんだった。
「自分の車で来ているから、送って貰わなくても大丈夫」
「じゃあ、車まで荷物を運ぶよ」
本当は、将嗣にさっさとお金を払い逃げ出したいが、実際問題、この日用品の山を運んで貰えたらどんなに楽だろう。
くっ!
この提案は、甘んじて受け入れるしかない。
「……お願いします」
地下駐車場へと続くエレベーターのスイッチを押すと、扉がスッと開き乗り込んだ。
混んでいる日にも関わらず、エレベーターの中は私達だけだった。
サイアク!
案の定、将嗣は話し掛けてくる。
「夏希、あの時、俺は結婚していたし、それを隠して付き合っていて悪かった。夏希が怒ったのも無理はない。けれど俺の話しを聞いて欲しい」
それを聞いて今更どうするのか? と思う。男女の関係は、別れた時点で終わりなのだ。
でも、将嗣には言っていないけど、美優の実の父親。
いま、将嗣に美優の事を言ったら将嗣はどんな反応をするのだろうか。
今、重要な分岐点に立っている事は、理解している。だけど、決心が付かない。
頭の中は大パニック、ぐるぐると色々な思いが過ぎる。
ここであることに気が付いた。
区役所で会った時は、ただ、偶然で懐かしくて声を掛けたのかも知れない。
けれど、今日、声を掛けて来たのは不自然だ。普通、子持ちの元カノなんて、「結婚したんだな」って思うはずだ。
わざわざ私に声を掛けて来たという事は、もしかて、美優の事を自分の子供だと気が付いたのだろうか?
でも、知らない間に父親にされてしまったとしたら、こんなに自然と声を掛けてくる事が出来るとも思えない。
ただ、過去の過ちを謝罪したいだけなのだろうか?
本当に、将嗣の目的ってなんなんだ?
3
お気に入りに追加
27
あなたにおすすめの小説
社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。
上司は初恋の幼馴染です~社内での秘め事は控えめに~
けもこ
恋愛
高辻綾香はホテルグループの秘書課で働いている。先輩の退職に伴って、その後の仕事を引き継ぎ、専務秘書となったが、その専務は自分の幼馴染だった。
秘めた思いを抱えながら、オフィスで毎日ドキドキしながら過ごしていると、彼がアメリカ時代に一緒に暮らしていたという女性が現れ、心中は穏やかではない。
グイグイと距離を縮めようとする幼馴染に自分の思いをどうしていいかわからない日々。
初恋こじらせオフィスラブ
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
身分差婚~あなたの妻になれないはずだった~
椿蛍
恋愛
「息子と別れていただけないかしら?」
私を脅して、別れを決断させた彼の両親。
彼は高級住宅地『都久山』で王子様と呼ばれる存在。
私とは住む世界が違った……
別れを命じられ、私の恋が終わった。
叶わない身分差の恋だったはずが――
※R-15くらいなので※マークはありません。
※視点切り替えあり。
※2日間は1日3回更新、3日目から1日2回更新となります。
もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
泉南佳那
恋愛
イケメンカリスマ美容師と内気で地味な書店員との、甘々溺愛ストーリーです!
どうぞお楽しみいただけますように。
〈あらすじ〉
加藤優紀は、現在、25歳の書店員。
東京の中心部ながら、昭和味たっぷりの裏町に位置する「高木書店」という名の本屋を、祖母とふたりで切り盛りしている。
彼女が高木書店で働きはじめたのは、3年ほど前から。
短大卒業後、不動産会社で営業事務をしていたが、同期の、親会社の重役令嬢からいじめに近い嫌がらせを受け、逃げるように会社を辞めた過去があった。
そのことは優紀の心に小さいながらも深い傷をつけた。
人付き合いを恐れるようになった優紀は、それ以来、つぶれかけの本屋で人の目につかない質素な生活に安んじていた。
一方、高木書店の目と鼻の先に、優紀の兄の幼なじみで、大企業の社長令息にしてカリスマ美容師の香坂玲伊が〈リインカネーション〉という総合ビューティーサロンを経営していた。
玲伊は優紀より4歳年上の29歳。
優紀も、兄とともに玲伊と一緒に遊んだ幼なじみであった。
店が近いこともあり、玲伊はしょっちゅう、優紀の本屋に顔を出していた。
子供のころから、かっこよくて優しかった玲伊は、優紀の初恋の人。
その気持ちは今もまったく変わっていなかったが、しがない書店員の自分が、カリスマ美容師にして御曹司の彼に釣り合うはずがないと、その恋心に蓋をしていた。
そんなある日、優紀は玲伊に「自分の店に来て」言われる。
優紀が〈リインカネーション〉を訪れると、人気のファッション誌『KALEN』の編集者が待っていた。
そして「シンデレラ・プロジェクト」のモデルをしてほしいと依頼される。
「シンデレラ・プロジェクト」とは、玲伊の店の1周年記念の企画で、〈リインカネーション〉のすべての施設を使い、2~3カ月でモデルの女性を美しく変身させ、それを雑誌の連載記事として掲載するというもの。
優紀は固辞したが、玲伊の熱心な誘いに負け、最終的に引き受けることとなる。
はじめての経験に戸惑いながらも、超一流の施術に心が満たされていく優紀。
そして、玲伊への恋心はいっそう募ってゆく。
玲伊はとても優しいが、それは親友の妹だから。
そんな切ない気持ちを抱えていた。
プロジェクトがはじまり、ひと月が過ぎた。
書店の仕事と〈リインカネーション〉の施術という二重生活に慣れてきた矢先、大問題が発生する。
突然、編集部に上層部から横やりが入り、優紀は「シンデレラ・プロジェクト」のモデルを下ろされることになった。
残念に思いながらも、やはり夢でしかなかったのだとあきらめる優紀だったが、そんなとき、玲伊から呼び出しを受けて……
ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~
菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。
だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。
車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。
あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる