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誤解を解くには、
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「沙羅……沙羅、起きて」
慶太の声に反応して、沙羅はモゾリと動いた。
「ん……おはよぅ」
けだるい体を反転させ、ゆっくりと瞼を開くと、沙羅の横で肩肘を付いた慶太の顔が近づき、チュッとキスを落とされる。
「おはよう、と言っても夕方なんだけど、沙羅は時間大丈夫?」
「えっ、いま何時?」
「もうすぐ18時になるところ」
「私、急いで帰らないと美幸の塾のお迎えがあるの」
これから身支度をして、ギリギリの時間だ。
沙羅は、慌ててベッドから立ち上がったが、ゴージャスな部屋の惨状に唖然とする。
床には脱ぎ散らかした服が散らばり、体には何も着ていない。
その体のありとあらゆるところにキスマーク。もちろん慶太が付けたものだ。
「きゃあ」
驚いた沙羅は、体育座りのようにしゃがみ小さくなる。
相変わらず様子に慶太は安心したようにクスリと笑い、沙羅をガウンで包み込む。
「ごめん、無茶させた」
「ううん、大丈夫。私……不安だったの。だから、慶太にたくさん愛してもらえて嬉しかった。……変なこと言ってごめんね」
沙羅の言葉を聞いた慶太は眉尻を下げ、困ったような顔をする。
「不安にさせて、すまない。……昨日のパーティーは、父に言われて、顔つなぎのつもりで出席したんだ。それなのに、断ったはずのお見合い相手が居て、仕事がらみで仕方なくエスコートするしかなったんだ」
やっぱり……。
萌咲から聞いて、覚悟してしていた沙羅だったが、慶太から直接聞くのは想像していたよりもキツかった。
立華商事のご令嬢とのビジネス絡みの大きな縁談は、慶太の父親が乗り気だと言う話しだ。
それにパーティーで、うまく立ち回っていた彼女と、その場に馴染むの必死だった自分では、TAKARAグループの総領の妻の座という面を考えれば、天秤にかけるまでもない。
親ならば、バツイチ子持ちの女より、然るべきところのご令嬢を息子の嫁にしようと考えるのは、至極当然だと思う。
また、別れさせられてしまうかも知れない……。
沙羅は、泣かないようにギュッと目を瞑り、気持ちを立て直す。
ゆっくりと瞼を開き、慶太へ顔を向けた。
「わかった……。大人の事情が絡むと仕方ない事があるよね」
そう言って、沙羅は微笑む。
その笑顔に慶太の胸はしめつけられる。沙羅が自分を気づかい無理に笑っているわかったからだ。
沙羅を悲しませるすべての事から守りたいと思っていた。それなのに、いま沙羅を悲しませているのは、他ならぬ自分自身だと奥歯を噛みしめる。
「昨日は、父が具合悪くなってしまって出来なかったが、この縁談は断るつもりだ。それに、父が無理やり話しを進めるようなら、俺はTAKARAを辞める」
慶太の真っ直ぐな瞳に嘘偽りは無いのだろう。
そこまで慶太から強く思われているのを沙羅は嬉しく思った。
でも……。
東京駅でデートをした時、慶太はTAKARAの仕事が好きだと笑っていた。自分のために責任のある役職を手放す選択は、慶太にとって良いのだろうか……。
「私は大丈夫だから、あまり感情的にならないで……」
「ん、沙羅に心配かけないように踏ん張るから大丈夫だよ。それより、沙羅が男の人にエスコートさているのを見て俺も妬けたよ」
「あ、あの人は、藤井様の親戚で、私のはとこにあたる人なの。親類に会うチャンスだからって、藤井様があのパーティーに連れて行ってくれての」
「沙羅がきれいで、あのまま攫って行きたかった」
「慶太もフォーマルが似合っていて恰好良かったよ」
「ありがとう」と微笑んで、慶太は沙羅の唇にキスを落とした。
慶太の声に反応して、沙羅はモゾリと動いた。
「ん……おはよぅ」
けだるい体を反転させ、ゆっくりと瞼を開くと、沙羅の横で肩肘を付いた慶太の顔が近づき、チュッとキスを落とされる。
「おはよう、と言っても夕方なんだけど、沙羅は時間大丈夫?」
「えっ、いま何時?」
「もうすぐ18時になるところ」
「私、急いで帰らないと美幸の塾のお迎えがあるの」
これから身支度をして、ギリギリの時間だ。
沙羅は、慌ててベッドから立ち上がったが、ゴージャスな部屋の惨状に唖然とする。
床には脱ぎ散らかした服が散らばり、体には何も着ていない。
その体のありとあらゆるところにキスマーク。もちろん慶太が付けたものだ。
「きゃあ」
驚いた沙羅は、体育座りのようにしゃがみ小さくなる。
相変わらず様子に慶太は安心したようにクスリと笑い、沙羅をガウンで包み込む。
「ごめん、無茶させた」
「ううん、大丈夫。私……不安だったの。だから、慶太にたくさん愛してもらえて嬉しかった。……変なこと言ってごめんね」
沙羅の言葉を聞いた慶太は眉尻を下げ、困ったような顔をする。
「不安にさせて、すまない。……昨日のパーティーは、父に言われて、顔つなぎのつもりで出席したんだ。それなのに、断ったはずのお見合い相手が居て、仕事がらみで仕方なくエスコートするしかなったんだ」
やっぱり……。
萌咲から聞いて、覚悟してしていた沙羅だったが、慶太から直接聞くのは想像していたよりもキツかった。
立華商事のご令嬢とのビジネス絡みの大きな縁談は、慶太の父親が乗り気だと言う話しだ。
それにパーティーで、うまく立ち回っていた彼女と、その場に馴染むの必死だった自分では、TAKARAグループの総領の妻の座という面を考えれば、天秤にかけるまでもない。
親ならば、バツイチ子持ちの女より、然るべきところのご令嬢を息子の嫁にしようと考えるのは、至極当然だと思う。
また、別れさせられてしまうかも知れない……。
沙羅は、泣かないようにギュッと目を瞑り、気持ちを立て直す。
ゆっくりと瞼を開き、慶太へ顔を向けた。
「わかった……。大人の事情が絡むと仕方ない事があるよね」
そう言って、沙羅は微笑む。
その笑顔に慶太の胸はしめつけられる。沙羅が自分を気づかい無理に笑っているわかったからだ。
沙羅を悲しませるすべての事から守りたいと思っていた。それなのに、いま沙羅を悲しませているのは、他ならぬ自分自身だと奥歯を噛みしめる。
「昨日は、父が具合悪くなってしまって出来なかったが、この縁談は断るつもりだ。それに、父が無理やり話しを進めるようなら、俺はTAKARAを辞める」
慶太の真っ直ぐな瞳に嘘偽りは無いのだろう。
そこまで慶太から強く思われているのを沙羅は嬉しく思った。
でも……。
東京駅でデートをした時、慶太はTAKARAの仕事が好きだと笑っていた。自分のために責任のある役職を手放す選択は、慶太にとって良いのだろうか……。
「私は大丈夫だから、あまり感情的にならないで……」
「ん、沙羅に心配かけないように踏ん張るから大丈夫だよ。それより、沙羅が男の人にエスコートさているのを見て俺も妬けたよ」
「あ、あの人は、藤井様の親戚で、私のはとこにあたる人なの。親類に会うチャンスだからって、藤井様があのパーティーに連れて行ってくれての」
「沙羅がきれいで、あのまま攫って行きたかった」
「慶太もフォーマルが似合っていて恰好良かったよ」
「ありがとう」と微笑んで、慶太は沙羅の唇にキスを落とした。
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