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188.魔術学園2年生2
しおりを挟む1週間経って新しい学年にも少しだけ慣れた頃、どこからか俺とククルがダンジョン探索でウェネルとグループを組むことを聞きつけたらしく、ウェネルに嫌がらせする奴らが出始めた。
学年の上位二人となんであんな奴が!ってことらしいんだけど…迷惑甚だしい。そもそもウェネルの実力見抜けない人たちに口出しされたくないもん!俺達のところに直談判してくるやつもいる。3人目は俺にしろ!ってさ。
本当に本当にムカつくー!!!ウェネルも黙ってないで反論すればいいのに。むぅ…
「ねぇ、ウェネルやっぱり今度のテストはちゃんと実力見せつけよ?ね?」
「…やだ。だるい」
「もー!ご褒美あげるから!頑張ってよ!俺友達馬鹿にされるのムカつくんだよ!」
「…はぁ…わかった」
「よし!はい!アイス!」
「ぱくっ…うま…」
「ククルも食べる?」
「いや、ウェネルにやる」
「ありがと」
ぱくぱくと2つのアイスを平らげたウェネル。頭痛くなったりしないのか?まぁ喜んでくれてるので良しとしよう。約束もしてくれたし。今度のテストまで我慢するつもりもないけどさ。
クラスに戻れば、騒ぎの渦中にある俺達は若干遠巻きに見られている。まぁ元々俺にはククルとウェネルくらいしか友達居ないんだけどさ。上位5位に入るくらいのチノさんたちは分かってくれる。クラス違うからたまにしか会わないけど。その下からウェネルよりも上の奴らが煩いのだ。
「ウェネルー、おいでー!」
「…うざ…」
「もー、可愛いねぇ良い子良い子!」
最近ティナさんとウェンさんの娘っ子を可愛がっているせいか、狐が可愛いんだよね。ウェネルも嫌そうにするけど撫でさせてくれるし。もちろん耳とか尻尾には触らないように気をつけながら撫でてる。
「ナルア、そのへんにしておけ。また怒らせるぞ?」
「あ、うん」
ナルアが気軽に俺のことを撫でてくるようになった。あの里では冷たい人間関係しかなかったから、こんなふうに撫でられたりするのは初めてでそわそわして落ち着かなかった。けれど人間慣れるもので最早少し撫でられるくらいなんてことない。
少しだけ温かいあの手に触られるのが好きだったりする。ナルアには絶対に言わないけど。絶対に騒ぐし面倒なことになるに決まってるし。
ククルはそんな俺の感情に気付いているようで、釘を刺すように、ナルアには番がいると忠告してきた。そんなことは知っているし、別にナルアとどうにかなりたい訳ではない。
ナルアの幸せを壊したい訳ではないのだから。それにナルアの番と戦えば一瞬で勝敗がつく。俺が確実に負ける。それがわかっていて手を出せる訳がない。威嚇フェロモンだけで気圧されるくらいだからな。
今までだってナルア達といることを妬んで色々してきた奴らはいた。ちゃんと分からせてやったけど。その後は手出しして来なくなってたし、びびって逃げてたからナルアたちには気付かれなかった。
けれど最近のは人数が多いし大っぴらに動いてきやがるから、ナルア達の怒りを買っている。まぁ面倒だし任せるか、と放置している次第だ。アイスもくれたし。
「おい、お前!!ダンジョン探索のグループから自分から抜けると言え!!」
「……」
「わかったならさっさとギルドでメンバー変更をしに行くぞ」
俺が黙っているのを良いように解釈しているらしい。どうせ言葉の通じない相手だ。口を開く意味もないと判断しているだけなのに…だるいし。俺がびびってるとでも思ってるんでしょ。
思いっきり殺気をぶつけてやれば怯んだように動かなくなる。そして俺に怯えた目を向ける。口程にもない。俺の殺気に怯んでるようじゃナルアの殺気には耐えられないだろうな。
つらつらとそんなことを思っていると接近してくる気配が一つ。ナルアだな。俺の殺気に反応してきたらしい。
「ウェネル!!大丈夫…みたいだね?」
「ああ」
「いきなり殺気出したから何かあったのかと思ったんだけど…で?この人誰?」
「さぁ?お前たちとダンジョン行きたいらしいぞ」
「…ふーん…そういうこと…」
ナルアは普段温厚だし人好きのする顔をしていることが多いから、勘違いする奴も多い。けれど本質は内に入れた奴以外のことは対して気にしていない。というか身内を傷つけるなら容赦はしない。そういう奴だ。
もう怖気づいてブルブルと震えるだけになった奴を冷酷な目で見つめて言い放つ。
「ねぇ、俺の選んだメンバーに文句があるって言うなら俺の所に来なよ。まぁ頼まれてもお前みたいな信頼出来ない奴とダンジョンなんて絶対に行かないけどね。」
「…っ…」
「わかったなら俺の前に顔見せるな。もちろんククルやウェネルの前にもね。」
くるりと踵を返してこちらを向くと笑顔で俺の手を引いて場を後にする。残された奴の絶望…というか諦観に似たような顔を見たのは俺だけだろう。もうナルアの眼中にアイツは居ないようだからな。
「ウェネル、大丈夫だった?」
「ん、へーき。だるかったけど」
「そっか。いつでも頼っていいからね。」
「ん」
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