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133.小学校最高学年後編8

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今までも何度も行ってきた、実力測定だ。ケイン先生はしっかりと評価してくれるので、自分の実力を見直す事が出来る。魔力操作から魔法、身体能力を見るための短距離走、長距離走、試合、等々をしていく。 

今回の最高学年だけは特別で、他クラス合同だ。最終的に優秀な生徒が育つようにということで、実力差をわかってもらい、努力を促すんだとか言っていたと思う。まぁ言ってしまえば、先生方にとっても生徒の出来は評価対象なので、生徒に頑張って欲しいということだ。

訓練場に皆が集まっている。他のクラスの人たちも居る中でぐるぐる回りながら、交代で測定を行っていく。優秀な生徒が集まっているAクラスは、他クラスからの視線を集めているので少し緊張する。そう思っているのは俺だけかもしれないと言う程皆堂々としてる。ついに俺の番か。

「頑張ってナルア」

「うん…」

「ふふっ大丈夫だよナルア!」

「ふぁいと!ナルアくん!」

「うん、ありがとメル…緊張する…」

「うんうん、ナルアなら大丈夫!」

みんなに応援してもらってようやく初種目に挑む。最初の測定は短距離走だ。さっと走れば大丈夫!そう言い聞かせて、スタート位置につく。俺の実力をしっかり知っているのはAクラスの面々くらいなので、他クラスのこちらを見ていた人達はびっくり顔でこちらを見ている。

リオネルの背に隠れて視線を遮った。こんな時だけは小さくてよかったと思う。完全にリオネルの背にすっぽり全部隠れられるし。

「ふにゃぁ…そんなに見なくてもいいじゃん…」

「ナルア、堂々としてなよ。」

「だってぇ…皆見てくるから恥ずかしいんだもん。」

「代表挨拶とかは普通にしてるでしょ?なんで今だけ?」

「むぅ…なんか違うんだよ!俺だって分かんないけど!なんていうか…代表挨拶とかは、人前に出るってメンタル作ってるからさ!」

「そうなの?まぁいいや。じゃあ僕次行ってくるから。」
 
「あ!待って!」

スタスタとリオネルが行ってしまって、また視線に晒される。コソコソと近寄っていって近くに立っていたウルの背に入る。

「あ"あ?何やってんだ…?」  

「隠れてるの!!」

「はぁ?意味わかんねぇ…。ってかお前は普通に気配消しゃあいいんじゃねぇの?」

「はっ!?その手があったか!ありがとウル!」

気配を消してしまえば、皆ちゃんと見失ってくれたようで視線が外れる。良かった良かった。っと!次の測定行かないと。順番きてるや。長距離走か。まぁいつも走り込んでる距離に比べたら全然短いから余裕だな!

……あれ?始まらない?

「…ナルアはどうした?」

他の並んでいる生徒、メルに向けて先生が問いかける。俺ちゃんと並んでるよね…?

「さぁ…?さっきはウルの後ろに隠れてましたけど…」

「…あれ?ケイン先生!俺ちゃんといます!」

「…気配を消すな。お前が気配を消すと本気で分からん。」

「うっ…でも俺、その…なんか視線多すぎて嫌です。」

「悪いが我慢しろ。ここ通るときだけでいい。俺が認識できないと記録取れねぇだろうが。」

「了解です!」

気配消す許可を得た。先生の前を通るときだけ気配遮断をしなければいいんだな。それならそんなに注目が集まることはないだろう。良かった!ケイン先生好き!そんなこんなで、ちゃちゃっと走り終わる。

取り敢えず、身体能力の測定は終了。一旦休憩が入って、それから俺の専門分野、魔法に関する測定だ。魔術学園へ入学するべく鍛え上げた俺の魔法!とくと見よ!いや…嘘です。見ないでください。切実に。



ナルアやAクラスの上位陣であるリオネルたちを見ていた他クラスの生徒達にとって、自身と彼らとの実力差は想像以上のものだった。同年代でそんなに差があるなんて思っていなかったのだ。彼らは格が違う。魔法や剣を習っているとはいえ、それは基礎的なものであって、実戦のための本格的な訓練は高等学院などに進学してから覚えるものだと高を括っていた。

だからこそ、洗練されたAクラスの面々を見て、内心戦々恐々としているものがほとんどだった。今回は魔法に関する測定が終わったら、クラス交流名目のクラス対抗試合が設けられている。Aクラスの相手はもちろん一つ下のBクラスだ。Bクラスの代表は、Aクラス代表であるナルアやリリスを見て、一矢報いてやると息巻いていたが、身体能力の測定が終わる頃には代表を代わってくれないか?と周りに頼むほどの気の変わり様だった。

当然ながら引き受けるものなど居るはずもない。みんなAクラスを見ていたのだから。あんな猛者集団の中でもトップクラスとなれば、勝てるはずもない…。誰も勝てない相手に挑みたくないだろう。Aクラスに入れずともBクラスだ。プライドだけは高いからな。






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