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119.魔術学園都市11

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試験が終わって、各自解散すればいいらしい。合否の発表は、家に結果が届けられるのだそうだ。

「お疲れ様でした。それではナルア様、またお会い出来ること楽しみにしております。」

「ふふっまたって…入学出来るかわからないでしょ?でも…会えるといいね!お見送りありがとうユニ。あと、フェルノ学園長にお土産ありがとうって伝えてくれる?」

「もちろんです。必ず伝えさせていただきます。」

「ありがとう」

試験を終えて、俺を待っていたユニに手土産を持たされて、学園の門のところで見送られて帰路につく。けれど異様に気配の薄い人が…ん?あれって…ウェンさんだ!

「ウェンさーん!」

「お!ナルアくん、お迎えに来たっすよー!お疲れ様っす。どうだったっすか?」

「んー、多分大丈夫…かな…?っていうか、ウェンさんもテスラさんも学園長と知り合いだったんだね!教えてくれればいいのに!お土産貰っちゃった」

「学園長?誰っすか?」

「え?知ってたんじゃないの?フェルノさんだよ」

「フェルノ…ふーん、そうなんすね。今はフェルノが学園長っすか。」

「うん、そうみたい。」

「面白いことになってるっすね!ところで、狐獣人見たっすか?」

「え?うん、居たよ。ウェンさんと同じ出身地の人かなーと思ったんだけど」

「まさにその通りっすよ。けど、油断して近づいたら駄目っすよ」

真面目な顔で忠告してくるウェンさん。仲良くなれそうだなーと思ったんだけど…駄目なのか…。少し残念。でもウェンさんがなんの意味もなく忠告する訳もないので、何か事情がありそうだけれど。

「おい!!」

後ろから大声で呼びかけられた。一瞬無視しようかと考えてしまったけど、俺は悪くない…。だって名前呼ばれたわけでもないし…。だからといって諦めてくれる気がしないんだよねー…。だって先程聞いたばかりの声だし。

「………ああ…えっと…ククルさん…?なにか?」

「ああ、少し話せないかと思ってな。今からどうだ?」

「あー…ええと…ごめんなさい。」

引き気味にさりげなーく、ウェンさんの後ろに隠れさせてもらう。それを察してくれたウェンさんが俺を隠してくれる。

「こりゃまた大物の面倒事を引っ掛けてきたっすね。ナルアくん?」

「うぅ…ただ戦っただけだよ?」

小声でそういったウェンさんは、彼が何者か知っているのだろう。少しジト目で見られた。ウェンさんの耳が立てられ、前後左右にぱたぱたと動く。その様子が警戒していることを示している。

「まぁいいっすよ。困ったらテスラさんが追い払ってくれると思うっす。」

「そっか!えへへ!」

「ふむ、断るか…まぁいい。また入学後にでも話そう。それではな、ナルア。俺のこと、忘れてくれるなよ?」

「……」

そう言い残してククルはご機嫌な様子で去っていった。その後ろを一人の男がついて歩いている。こちら振り返って、一礼し彼も去っていく。…嵐のような人だったな。俺のことは忘れてくれれば…と思っていたけど、それも難しそうだな。

なんでこんなことになったんだ!?

「ナルアくん帰るっすよ」

「うん…なんか疲れたや…テスラさんに癒やしてもらお…」

「俺もっす。ティナ…」

「早く帰ろっか」

「それがいいっす」

お互いに同意して足早に帰り道を歩いていく。宿に帰って愛しい人に甘やかしてもらうことを想像しながら、早く会いたくなって足が早まる。もはや我慢できなくなって駆け出した。ウェンさんも同じだったようで、屋根の上を通らせてもらって、近道して宿に帰り着いた。

バタン!と音を立てて、宿の扉を開けば、宿の中が飾りつけられている。どうやら俺のお疲れ様会をしてくれるつもりだったようだ。それも嬉しいけど、それよりも今はテスラさんに触れたい。勢いそのままに抱きつけば、少し驚いたようだったが、受け入れて、抱き返してくれる。そんな俺に甘い所も大好きだ。

「おかえりナルア」

「ただいま!テスラさん!大好き!」

「ふふっ私も好きだよ。」

ふぁぁ…落ち着く…。ぐりぐりと頭を押し付ければ、撫でてくれる。にこやかに微笑んでくれるお顔が美しい。ついつい尻尾もテスラさんに巻き付いてしまうというものだ。尻尾も邪魔だろうに、当の尻尾を巻きつけられたテスラさんは嬉しそうに俺の尻尾に自身の尻尾を絡めている。

ああ…これだよこれ!この全力で甘えても受け入れて許してくれる感じ…本当に安心するし大好きだ!!





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