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113.魔術学園都市5
しおりを挟むテスラさんとの夜のお出かけは先ず冒険者ギルドに行くことから始まった。東区に向かうにつれて、ガタイのいい人が増えてくる。冒険者の方々だろう。慣れたように足をすすめるテスラさんに手を引かれて歩く。
冒険者ギルドの方面に入ると、雰囲気はまたガラッと変わる。先程までの楽しげな雰囲気は無くなり、物々しい感じになる。灯りも無骨な炎で照らされているだけだ。建物自体も頑丈そうな石を組んで建てられている。
おおよそ東区の中心辺りまで歩いてくると、一際大きな建物が見えてきた。あれが冒険者ギルドらしい。冒険者ギルドの中にも酒場が併設されており、食事やお酒を低額で楽しめるのだそうだ。
「あそこで登録証を書いて提出するんだ。あとは戦闘力や魔物についての簡単な試験を受けたら登録完了だ。」
「はい!じゃあ書いてきます!」
「おお?そんな細腕で冒険者になろうってか?それに…よく見りゃ首輪付きじゃねぇか…悪いことは言わねぇ、辞めとけ」
横から口を出してきたのは、大柄な牛の獣人だ。ミノタウロスっぽい。忠告してくれているらしい。
魔術学園都市は強い人が多いだけあってΩに対する差別も顕著だ。まぁ、それも仕方がないことだ。オメガには草食動物も多いし、アルファの中にはオメガは性欲処理の道具という考えをする人もやはり一定数存在する。
でも、今回声を掛けてきたのは、ただ純粋に心配してくれている人のようだ。その視線からは蔑みを感じないから。冒険者の中には力をひけらかして、オメガを無理矢理に犯そうとする人がいるからね。冒険者にとっては生命に関わることだから、力こそ正義、的なところもあるからね。力の弱いオメガは生きるために、そんなアルファに屈することもある。だからこそ、この人は俺を止めてくれているのだ。
そんな冒険者の犠牲にならないために。
「…ありがとう。でも、俺は大丈夫だから。冒険者になれる実力はあるから」
「…どうしても冒険者になるのか?」
「うん」
「そうか、まぁなんかあったら頼れや…お前みたいな若いのが…酷い目に合うのは気分がワリィからよ。」
「うん!ありがとう親切なおじさん」
「おう!…っておじさん?!俺ァまだ20代だぞ!」
「ええと…ごめんなさい?名前聞いても?」
「おう、俺はセスだ。呼び捨てでいいぜ。よろしくな新人」
「うん!よろしくセス!俺はナルア、それでこっちはテスラさん!あ、いくらテスラさんが格好いいからって取らないでね!俺の大事な人だから!」
「取らねぇよ…ナルアな。そっちはテスラか、よろしくな」
「ああ、よろしく頼む。セス。それと、ナルアに手を出したら許さない。」
「おいおい!俺はそんなに軽い男じゃねぇ。人のもんに手ぇ出したりしねぇよ!」
何だかんだいい人そうだ。けれどまだ会ったばかりだから完全に信用はできないけど。あと声がおっきい。酒場が騒がしいから声も大きくなるのかな?体格もいいし。
「そうか、それならばいい。ナルア、手続きを。」
「はい!」
名前、性別、バース性、戦い方、等々を記入して用紙を提出する。提出したら、試験を受けることが出来る日程を教えてもらった。試験は昼間にしか行われていないらしいので、またここに来る必要がある。
「取り敢えず、今出来る手続きは以上です。ありがとうございました。」
「こちらこそありがとうございました。また明日来ます!テスラさん!行きましょう!」
「ああ、行こう。」
そのまま街に繰り出して、夜ならではの景色を見たり、ご飯を食べたりして、宿に帰った。次の日の昼間に、テスラさんと冒険者ギルドに顔を出して、筆記と試合形式の戦闘力の試験だ。
特に問題なくパスすることが出来て、冒険者になる事ができた。晴れてFランク冒険者だ。Fランクではダンジョンに入ることが出来ないのでランクを上げる必要がある。コツコツ頑張ろう!
「試験お疲れ様でした。合格されましたので、冒険者証が発行されましたので、お渡しします。どうぞ」
「ありがとうございます!」
「冒険者証を無くされると再発行にはお金がかかりますので、ご注意ください。それから冒険者証の機能についての説明は聞かれますか?」
「それは私が後から説明しよう。」
「じゃあ説明は無くて大丈夫です。」
「それでは登録はこれで完了になります。安全に気をつけて、頑張ってくださいね」
「ありがとうございます!」
受け取ったばかりの冒険者証を両手に持って掲げる。そしてテスラさんの方に見せる。
「テスラさん!やりました!俺も冒険者です!えへへ」
「ああ、おめでとう。ナルア」
「お揃いですね?」
「そうだな、どうせならランクも揃えるか。」
「だ、駄目だよ!俺頑張るから!テスラさんは待ってて!ランク上げてお揃いにするからさ!」
「ふふっ待っている。が、早めに頼むぞ?ナルア」
「はい!」
早急に冒険者ランク上げないとな。危ないことするつもりはないけどさ。安全マージンを取りつつ頑張ろっと。
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