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109.魔術学園都市1

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王国を出て順調に進み、一週間と少しで魔術学園都市に到着した。2週間かかるはずのところを4日ほど短縮して移動できたのは、テスラさんやウェンさんの索敵能力の高さと、殲滅力の高さ故である。普通なら街なかで寝るためにまだ昼間でも街に留まるところを、テスラさんの結界を頼りにガンガン進んで来れたから早かったらしい。

ともかく到着したのだ。テスラさんの母校に!そしてウェンさんとティナさんの母校でもある。まだ街の外だけど。魔術学園都市の外観は、前世で言う洋風建築で美しい彫刻の入った柱を中心に外壁が造られており、白くて美しい。高さもしっかりとあり、近くで見ればめちゃくちゃ見上げるくらいだ。

いまは魔術学園都市に入るべく、列に並んでいる最中だ。箱の中から顔を出して眺める。まだまだ街に入れるまでには、時間がかかりそうだ。魔術学園都市は通行条件が厳しいだけあって、審査も厳しいので時間がかかる。

「ナルア、危ないから顔を出しすぎないでくれ。」

「でも凄いですよ!!」

「幾らでも見られるからな。後にしなさい」

「はぁい」

「これからの予定でも立てるか?ナルアはどうしたい?宿の確保をしたら後は自由だが」

「えっと…取り敢えず街歩いてみたいです!」

「わかった。案内しよう。」

「ありがとうテスラさん!」

コンコン

「どうしたっすか?テスラさん」

「ああ、街についたら取り敢えず宿の確保をする。その後は私はナルアと街を見てこようと思う。ウェンたちも自由にしてくれ」

「わかったっす」

「は、はい!」
 
魔術学園都市の地図をテスラさんが用意してくれて、どこに何があるのか教えてくれる。街の中心にあるのが魔術学園で、その周りには学園の生徒向けの市場やごはん処が建ち並ぶ。
そして、街の中心から見て西側には魔法研究を行っている人たちが集まっていて、魔導具制作なんかも盛んだ。
東側には、ダンジョンがあり、ダンジョンを中心に冒険者ギルドがあって武器商人がお店を出していたり、冒険者向けの酒場なんかが建ち並んでいる。
北側は商人御用達の宿があったりする。そして南側には様々な国から集まってきた商品の市場がある。

というわけで初めに向かうのは、宿の多い北側の地区だ。そこで宿を見つけて、竜車を預ける。それが終わったら自由時間だね。…うん、まだまだ掛かりそう。全然進まないもんね。俺達の前にもまだ10組以上が待ってる。

早めに着いてこんなに待つのなら、受験直前とかだったらもっと混むんだろうな…。もう1時間位待ってると思う。多分1時間で10組くらいしか終わっていないお昼くらいには着いたんだけど、夕方になっちゃいそうだ。

「テスラさん…中でお昼食べたかったですけど、お腹空きました…」

「そうだな…ご飯にしよう。ウェン、ティナ、中に入って来い。」

「はいっす!」「は、はい」

二人が箱の中に入ってくる。4人で座って、魔導具の空中に固定できる机を取り出す。ここに来るまでの街で買い込んでいたご飯も一緒に出して、皆で食べる。

「「「「いただきます!」」」」

「む、美味しい!」

「そうだな、確かこれは魔物の雷魚だったか?」

「そうっす!美味いっすね!」

「…う、うん!すっごく柔らかいね!味も染みてるし!」

皆でご飯を食べて、食後のお茶まで飲んで、ゆっくりとしていた。その間に地味に進んでいて、やっと次で入れるところまで来た。そして、門の前で竜車から降りるように言われて降りる。

門番をしていたのは、大柄なゴリラの獣人と熊の獣人だった。威圧感たっぷりだね。王国を出た時点で変装を解いているテスラさんを睨めつけるように見ている。

「なんだ?何か問題でも?」

「いや…見覚えがあるんだが…だが…なんだかとても思い出したくないような…そんな気がするんだ…」

「何言ってんだ…ゴリー…この顔…これはテスラ様…そうテスラ様じゃねぇか!?」

「て…テスラ様ぁー?!!な、お、お帰りになったんですね!ど、どうぞ…」

テスラ様…ふむ?テスラさん、ここで何したんだろう…?あの怯えよう…何かあったとしか。

「審査はいいのか?」

「ええ!テスラ様が入ろうと思えば…どうしたって入れますからね。確かめる意味が皆無です!」

「おいおい門番のセリフじゃねぇだろ。まったく…とはいえ、事実なんですが。どうぞ、お通りください。」

「まぁ…一応権利書を提示する。」

「はい!確認致します!」

渡した全員分の権利書を持って確認に向かったゴリーさん。暫く待っているとすぐに戻ってきて、権利書を返してくれた。確認は以上だそうで、簡単に通してくれた。

「ええと…良かったんですかね?テスラさん」

「良かったのではないか?早く入れたんだ。」

「確かに…?」

「それじゃ北区に向かうっす!」

「ああ頼む」

北側の門から入ったのだけど、外壁を越えてもまだ内壁があり、二重に守られている。通信魔法で、国に入る人を管理しているので、不法侵入が難しい仕組みになっている。内壁と外壁の間は、魔物の素材の解体なんかが行われるスペースもある。とはいえ、ダンジョンのある魔術学園都市ではあまり死体の残る魔物は倒されないので、狭くても問題はない。

おお…魔物の死体の臭いが…
鼻がしぬ……。元になった動物の特性を受け継いでいるだけあって、鼻がいいんだよね。

「む?ああ…空間隔離」

「ぷはぁ!!ありがとうテスラさん」

頑張って息を止めているのに気がついたテスラさんが、臭いを遮断してくれたので、息できるようになった。

「どういたしまして」

「俺らにもお願いするっす」

「ああ…空間隔離」

内壁の街の中に入ればもう問題はない。街の中も洋風建築。見た目は中世辺りのものだ。美しい街並み。宿屋は大きめの洋館のような建物のところだ。ティナさんのお友達がやってるとこなんだって。とても素敵で、宿屋の主人も感じのいい人だった。





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