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71.小学校編34
しおりを挟むティナが起きるのを待ちながら、一旦部屋を出てこれからのことを考える。俺としては、取り敢えずテスラ団長が国を去るならこの国に仕える意味はないんすよねー…。恩があるのはテスラ団長だけっすからね。
テスラ団長と国を出るか…それともこの国で一応地位を上げて何時でもテスラ団長の役に立てるようにしておくか…。ティナを巻き込むことになるっすから。そこが問題っすね。多分ついてきてくれると思うっすけど。
部屋を出たところで背をドアに預けて考える。思わずため息がもれる…。
「ふぅ…」
「どうしたの?ウェンさん…元気ない?」
…たまたま通りかかったリオネルくんに見られていたみたいっすね。元気ない?と問うてくるリオネルにこそ元気がないように見える。はじめはナルアくんのことが心配で堪らないのかと思ってたんすけど…。これだけ経ってもってことは…何か他に理由があるのかもしれないっすね。
「ん?リオネルくん、見られちゃったっすね。大丈夫っすよ。少し悩みがあるだけっすから。」
「そっか…それならよかった!」
「それより、リオネルくんこそ大丈夫っすか?」
「……ずっと考えちゃうんだ…あのときのこと…ずっとナルアを守るって言ってさ…なのにいざというときには何も出来なかった…」
苦しげな面持ちで発された言葉には、後悔の念が込められているようだった。7歳の男の子がこれだけ背負おうとしてるんすね…。正直、リオネルくんは何も悪くない。ティナのことを考えていて、即座にナルアくんを守ることが出来なかった俺にこそ責任があるっす。
「…俺も動けなかったっすからね…。情けないっす。…リオネルくん、俺と訓練してみるっすか?今度こそ守れるように。」
「…いいの?」
「もちろん、いいっすよ」
「ありがとう!」
ぱぁっと晴れやかな表情に変わったリオネルくんに少しだけ安心する。良かったっす。リオネルくんは強い子っすね。後悔して苦しんで、それでも前に進もうとする。良い子っす。
教えると言ったからには、スパルタで行かせてもらうっすけど!頑張ってくれるっすよね!リオネルくんは強い子っすから!はじめだし、ナルアくんよりも甘い感じでいけば、ちょうどいいっすかね。
初めてのウェンとの訓練を終え、リオネルは早くも若干心が折れそうになっていた…。ウェンはナルアにするよりも甘く指導していたので、甘やかしている"つもり"でいた。しかしながら、常人からすれば頭がおかしいと言われてもおかしくないレベルのものであった。
ウェンの幼い頃から制限され、厳しい常人離れした訓練に明け暮れていた暗殺者としての指導である。当然といえば当然のことだ。
しかしながら、前世持ちで異常とも言える忍耐力があるナルアに教えていたことで、子供への指導方針が固まっているのだ。ウェンにとっての基準がナルアであったことで、子供に求めるハードルが跳ね上がったのだ。
「こんなにやってたんだ…ナルア…僕はまだまだ甘えてた…。だから追いつけなかったんだ…」
身体も痛いし、メンタルだってぼろぼろだけど…ナルアに追いつきたい。もっと頑張らないと。それにしてもナルアはコレにずっと耐えてきたなんて超人か何かなのかな…。それともドM…。
「はぁ…疲れたなぁ…明日からもがんばろ…でも…今は早く寝たい。」
ガチャリとドアを開けて、部屋に戻れば、ティナは目を覚していた。
「ティナ起きたんすね。」
「あ…うん…あの…こ、これかけてくれて…ありがとうウェン」
「どういたしまして。」
「り、リオネルくんといたんだね」
「そうっすね。訓練つけてあげてたっす。」
「そ、そっか…」
「ティナ、回復薬とか作っておいてほしいっす」
「あ、うん…もう作り始めてるよ」
「ありがとっす」
「うん!」
「あと…もし俺が国外に行くことになっても…ついてきて欲しいっす。」
「う、うん!もちろん!」
「ふぅ…良かったっす…実はちょっと不安だったんすよ…。」
「…そ、そうなの?僕はウェンといられるならどこへでも行くよ」
「えへへ!大好きっすティナ!!」
「わわっ!」
どこへでも…か。正直めちゃくちゃ嬉しいっすね。可愛いこと言われたっす。マジで射抜かれたっす。気持ちが高まって思わずティナを抱きしめる。びっくりしてたっすけど、おずおずと俺の背に手を回してくれて…本当に可愛いっす…。
「ティナ、愛してるっすよ」
「……ぼ…ぼくも……あ、あ、あい…あいしてる…」
「もー!!ホントに可愛いっす!!!」
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