不良×平凡

おーか

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副総長×平凡11

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秋夜さんに送られて高校について、駆け込むように教室に入る。

ガラッ

なかなか勢い良く開けてしまったので、視線が集まる。

「如月、はよ。」「はよ。」

「おはよ!茜くん、藍くん。茜くん元気になったみたいで良かった!」

「おう、昨日はありがとな」

「うん!…あ!あと今日からお世話になります。よろしく」

「任せといて、でも自分でも気をつけて」

「あー…藍に昨日聞いたけど、ホントに気をつけろよ、お前抜けてそうだし。」

「むー…皆して俺をポンコツみたいに…」

「かぐちゃん!おはよ!僕も混ぜて混ぜて!」

「鳴海、おはよ。」

ちょうど鳴海がこちらに来たあたりでチャイムがなる。みんなが席につく流れに逆らわず、俺達もみんな座った。少し遅れて先生が入ってきて、ホームルームが始まる。

最近鳴海とは全然話せてないから少し話したかったけど。質問攻めされそうで少し怖い気もする…。

そう思っていたけれど、鳴海は人前では何も聞いてこないままで、一般的な世間話しかしなかった。

「やったー!!お昼だ!さっ!かぐちゃん、話聞かせてもらうからね!」

「ごめん!今日も秋夜さんのところで食べることになってて」

「行くぞ、如月」

「あ、うん!ごめん鳴海!」

「なんで…?僕も一緒に食べたい!一緒に行く!」

「あ?無理だろ、GRACEの溜まり場に赤の他人が入れるわけないし」

「入れるよ!茜くんよりもGRACEのことよく知ってるし。」

「ふーん…アリス?」

「ッ!?…さぁね?教えてあげない!」

「藍くんアリスって?」

「あぁ、如月は知らなくてもいいよ。」

「鳴海、アリスって何?」

「……お弁当一緒に食べてくれるなら教えてあげる。」

「…わかった…取り敢えず俺が秋夜さんにお願いしてみる。」

「やった!!早く行こ?」

嬉しそうに鳴海が俺の腕を取って歩き出す。その後に続くように、少し面白げな顔をした藍くんと、どうしようか迷っているような茜くんがついてくる。

鳴海の向かっている方向は正解らしい。今日はGRACEの溜まり場に行くんだよな。今まで秋夜さんと二人だったから他の人がいると思うと緊張する。

秋夜さんは大丈夫しか言わないし…。凰李さんしかあったことないのに。そんな俺の葛藤を物ともせず、前を歩いていた鳴海によって簡単にドアは開け放たれた。

ガラの悪い人がすぐさま入り口を塞ぐように立ちふさがる。

「誰だ、テメェ。喧嘩売ってんのか?」

「僕のことは知らなくても、かぐちゃんのことは知ってるんじゃない?」

「あ?…佐久間さんか…どうぞ。如月さん」

「あ、どうも」
 
俺を送ってくれた藍くんと茜くんの役割はここまでだったようで、またな、と言って引き返して行った。

「ん、来たね。おいで香夜」

「秋夜さん、鳴海も一緒に食べていいですか?」

「ん?ダメ」

「お願いします!」

「んー、じゃあ香夜は俺の膝の上座ってくれる?そしたら許してあげる。」

「…わかりました。」

秋夜さんにおいでおいでと招かれるままに、向かい合うように座る。

「ふふっかわいい。けどさ、香夜がお弁当食べれないから反対向きね。」

確かに!ってか人前だったのに普通に向かい合って座っちゃった。恥ずかしい。

「僕のこと放ってイチャイチャしやがって!僕がかぐちゃんと一緒にご飯食べるんだから!邪魔しないでよね。rionに情報流してやってもいいんだよ?」

「…なに?脅してるつもりなの?香夜がいるのに君はそんなことできやしない。そうだろ?…アリス」

「なーんだ…知ってたんだ。僕がアリスだって」

「あ!そうだ!結局アリスって何?鳴海がアリス?」

「そうだよ。僕がアリス。アリスっていうのは、情報屋みたいなもので、正体ばれると危ないからアリスって名乗ってたんだよ。」

「ふーん?そうなんだ…だからやけに詳しかったの?」

「そう!っていうか、かぐちゃんに危ないことがあったら嫌だから、かぐちゃんのために情報集めて情報流してたのに!かぐちゃんってば、そんな冷酷腹黒に捕まっちゃってるし…。はぁ…。」

「??秋夜さんのこと?秋夜さんは優しいよ?」

「そうだよね。俺優しいよね、香夜。…ざまぁないな、クソ情報屋が」

おぉ?喧嘩ムード?いや、先に悪口言ったのは鳴海だけど。秋夜さんが悪態をつくの初めて聞いたかも。というか、姿勢的に耳元で話されてくすぐったい。声近いし、恥ずかしい。

「喧嘩しないでください!取り敢えず、昼休み終わる前にご飯食べましょ?ほら、鳴海も食べるよー。俺もう食べ終わってるし」

「ん、わかったよ。かぐちゃんが言うなら。」

「…そうだね。香夜が作ってくれたお弁当食べないとね?香夜、食べさせて?」

「え?自分で食べてくださいよ。」

「香夜が膝にいるから食べにくいんだよ。香夜を離すのもなし。」
  
「むぅ。わかりました。」

もぞもぞと秋夜さんの腕の中で動いて、横向きになって座り直す。自分の上にお弁当をおいて、せっせと秋夜さんの口に食べ物を運んでいく。

「ん、美味しい。香夜が作ってくれるのいつも美味しいな。いつもご飯作ってくれてありがとね。」

「いえ、いつも美味しそうに食べてくれて嬉しいです。」

「また僕を放ってイチャイチャしやがって!!かぐちゃんも酷いよ!僕も居るんだから僕のこともかまってよ。」

「香夜は俺と一緒に食べてるんだよ。だからお前に構う理由なんかない。邪魔するな。」

「秋夜さん!あんまり鳴海をいじめないでください。鳴海もごめんね?」

「ん!良いけどもっと話そう?最近全然話せてないからさ」

「…まぁいいか、香夜は俺のだし。」

はぁ…ハラハラする。なんでこの二人こんなにバチバチな感じなの?あんまり喧嘩とか慣れてないから勘弁してほしい。二人は喧嘩腰のままだったけど、なんとか乗りきって食べ終わる。

もうすぐ時間だし。あとはゆっくりするだけ!と思ったら、教室のドアが開けられた。金髪でピアスも両耳軟骨まで空いてる、すっごいチャラそうな人が入ってきた。その人のことは、門番?みたいなガラの悪い人も止めなかったから、多分GRACEの人なんだろうけど。

「ん?秋夜いるじゃん!めずらしっ!ってかその子誰さ?あ!話題になってたお気に入りちゃん?」

「うるせぇ、咲人(さきと)。黙ってろ。お前にこの子は紹介しねぇ…それに、なんで戻ってきた。昼は俺がここ使うって言ったよな。」
  
秋夜さんの知り合いなんだ。というか口悪いな。不良だしそんなものかな?俺の前では見せない一面だな。これはこれで、いいかも。

「んー、だって面白くなりそうな予感したし!俺の勘ってよく当たるもんね!」

「うぜぇ、理由そんだけならぶん殴る。」

「ごめんごめん!ちゃんと理由あるから!アリス、凰李が呼んでる。行くよ?」

「サクちゃん、行きたくない。」

「だーめ!凰李拗ねてたし!アリスが行かないともっと面倒くさいし」 

「鳴海、凰李さんと知り合いなの?」

「んー、幼馴染なんだよね。」

「へー、じゃあ仲良いんだね。」

「まぁね、でも、今は行きたくない!」

「何かあったの?」
 
「そういう訳じゃないんだけど、授業始まっちゃうし…」

「アリスはやく!秋夜も怒ってるし、凰李も拗ねてるし!!」

咲人さんが鳴海に近づいて、鳴海の腕を掴み腕を引く。鳴海はそれに逆らわず立つと、いかにも面倒くさいという顔で部屋を出る。

「かぐちゃん、授業行けないと思うから、頼んだ!」

「りょーかい!」

よく話す咲人さんと鳴海がいなくなると、部屋の中はいつもの二人きりの時と同じくらい静かになる。

「秋夜さん、凰李さんと鳴海が仲良いって知ってました?」  

「ん、知ってたよ。気になるの?」

「鳴海は友達なのに、俺何も知らなかったから。」

「あー、凰李の弱味みたいなもんだから。隠してたんだろ。」

「俺が狙われてる?みたいに?」

「そうだな。それにアイツ情報持ってるし。余計危ないしな。」

そうだよね。俺は秋夜さんに大事にしてもらってるけど、チームのことに関しては何も知らない。今少しずつ知っていっているけど。多分、俺が無知過ぎるだけで、他の人はみんな知っているようなことしか教えられてない。アリスのことは、多分別だけど。

キーンコーンカーンコーン

「そろそろ教室戻りますね?」

「俺が教室まで送る。」

「よろしくお願いします。」

「ん、そういえば今日は帰りは?」

「特に何もないですよ。」

「じゃあ授業終わりまた迎え行く。」

「はい!待ってます。じゃあまたあとで!送ってくれてありがとうございます!」

「ん、またあとで」






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