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しおりを挟むコクヨウの学校が始まるまでの間、あと8日程ある。その間も俺はダンジョンに行くし、コクヨウは暇だろう。ということで、ギルドが行っている初心者向け講習を受けさせることにした。
俺もギルドに行くので、コクヨウも共に連れて行き、そこで別れる。
「行くぞコクヨウ」
「うん」
「冒険者学校に行く奴らも結構参加してるみたいだから友達出来るといいな」
「うん。でも出来なくてもいいよ。今は早く…強くなりたい。」
生き急ぐかのように早く強くなりたい、というコクヨウに弱冠の不安もある。しかし俺の心配を他所にコクヨウはどんどん実力をつけてきた。俺が訓練を見てきたが、もう剣だけなら負けるんじゃないか…?
けれど学校から帰るなり直ぐに手伝いをしてくれる上、それが終われば剣の素振りを行う。もっと青春を楽しんでいいと思うのだ。若い時にしか出来ないことだってある。
まぁ俺だって孤児院を出て直ぐに冒険者になったからな…だからこそコクヨウには楽しんでほしいのだと思う。
「そう急がなくて良いだろ。焦りは身を滅ぼすからな。ゆっくりでいい。着実に頑張れ」
「…うん」
「じゃあダンジョン行ってくるな」
「行ってらっしゃい。気をつけてね」
「おう」
コクヨウと同じ年頃の奴らも矢張り結構な数見受けられる。そいつ等が真新しい装備を身に着けているのを見て、やはり装備を整えてやりたい、という気持ちが大きくなる。
自分よりもコクヨウの事を優先してしまうのは、悪い癖なのかもしれないが、コクヨウの方が大切なのだから仕方がない。
さて…今日も出来る限り稼いで来よう。かと言って命の危険がない限度で。またコクヨウを泣かせてしまう様な事はしたくないからな。
スールエの街で冒険者をしていた時よりもよっぽど効率よく稼ぐことが出来る。このペースだと入学までに剣くらいは買ってやれるな。またコクヨウが自分に金を使え!と怒りそうだが…まぁ弁明は卒業、入学祝いってことでいいか。
1日ダンジョンに潜り、ギルドに戻ってくると、コクヨウの周りに人だかりができていた。しかし俺が戻ったことにいち早く気付き、こちらにやってくる。
「おかえりタカミ!」
「おう、ただいまコクヨウ」
「今日は怪我してない?」
「おう、あー…擦り傷くらいだな」
「むぅ…そっか。あとで手当てするからね」
「ありがとな。んで、コクヨウは…」
言葉を区切ってコチラを…というかコクヨウを見つめる面々の方に視線を向ける。コクヨウは視線にも慣れたように無視しているが…友達になりゃいいのによ。冒険者という性質上男が9割だが、女もいる。彼女らはキラキラとした目でコクヨウを見つめている。そりゃ綺麗な顔してっからな。ここでもモテるらしい。
「友達出来たか?」
「ううん。友達とかいらないし。早く帰りたいもん」
「…そうか。んで、今日は何やったんだ?」
「んとね、あとで話すよ。ほら受付順番きてるし」
「おう、そうだな。あとで聞かせてくれ」
「うん」
受付で換金し、引き受けていた魔石収集依頼の達成手続きをしていた。俺の傍らで大人しく待っているコクヨウに話しかけたいのだろう面々がまだ諦めることなくこちらを見ている。
…俺が無理に強制したりしないというのは、コクヨウと過ごすようになってずっと意識してきた事だしな。まぁ人との交流も良いことだけではないからな。コクヨウの好きにさせてやったらいいか…。注意する程の事でも無いしな。
「帰るぞ。」
「うん、手」
「おう」
俺達が手を繋ぐことにギョッとした視線を向けられるが、それについては慣れたものだ。男同士の恋愛も割りかしある事だが、やはり俺とコクヨウでは釣り合いが取れていないからな。余程似合わないのだろう。
まぁ、そもそも親子の関係な訳だが…。そんなこと周りは知らないからな。わざわざ知らせることもないだろう。
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