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スー兄の真偽眼のスキルがある為、スヴェンさんが嘘を言ってないのは分かってる。ロコさんの師匠だし、今でもロコさんから連絡が来るくらいには親しいのだろう。僕の大好きなロコさんの関係者な訳だ。けど、とても危険だ!と感じる。それだけの実力者だし、必要なら僕らに対しても容赦なくその力が振るわれる、と確信出来るからだろう。  

怪しいこの人に話を聞きたい。けど、口を開くのが躊躇われる。みんなが黙りこくっている中、レンドーレさんが意を決したようにスヴェンさんを見据えて、話し始める。

「…聞きたいことがある。」

「ええ、構いませんよ。」

「孤児院の子供たちが帰ってこねぇんだ、何か知ってるか?」

「ええ、存じていますよ。」

「なっ…」「知ってるの!?」「……」

あっさりと口にされたその回答に、驚く。スヴェンさんは何か企んでいるのだろうか?だからこんなにもあっさりと子供達の事を口に出したの?

「どこにいるの?」

「ふむ…簡単に答えを教えてしまうのも詰まらない。探し出してみてください、彼らを。待っていますよ?」

「あ、待って!!」

「…くそっ…逃げやがった…」

待っていますよ、と言って姿を眩ませたスヴェンさん。まるで目の前から掻き消えたかのようだった。一瞬で視認できなくなったのだ。

ロコさんのことは見つけられる僕が探しても分からない。ということはもうスヴェンさんはこの辺りには居ないか、僕のスキルを欺くことが出来るか…。どちらにしろまた振り出しに戻ったようなものだ。

「どうやって探せってんだよ!!」

「レンドーレさん…」

「落ち着け。冷静になれ。でなければ、しない筈の失敗をする。」

「……すぅ…はぁ……悪い。」

「えっと取り敢えずロコさんに連絡とってみるね!何か知ってるかもだし!」

「ありがとう、ククリ」

「うん」

聞きたいことを書きつづって、連絡を送る。ロコさんからの返答は期待したものでは無かったけれど、一つ朗報をもたらしてくれた。

『親愛なるククリ様へ

まずはご期待に添うことが出来ないことをお詫び申し上げます。師匠から口止めされており、伝えられることがほとんどありません。師匠はとても怖い御人です。くれぐれもお気を付けて。

私から伝えられる唯一のことは、子供達はおそらく全員無事だということです。まぁ追い詰められては、いるかもしれませんが…。

ククリ様がお元気に過ごされる事を心より願っております。

ロコ』

「取り敢えず無事らしいな。」

「ああ、それがわかっただけでも有り難い。」

「うーん…どうやって見つけたらいいんだろ…」

「取り敢えずシスターに話聞くか。」

「…そうだな。」








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