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しおりを挟むベッドで休んだレンドーレさんは1時間もしない位で目を覚ました。幾分か疲れの取れた様子だった為、話を聞かせて貰うことにした。
「…っ…クソッこんなところでぶっ倒れてる場合じゃ…」
「レンドーレさん、お話、聞かせてくれませんか?」
「…巻き込めねぇよ。ありがとな。」
「…こんなこと言いたくないが、お前が何も言わなかろうがククリは首を突っ込んでくぞ。お前が心配だからってな。だからさっさと口を割れ。」
「…わぁったよ…。4日前くらいから家の子供たちが帰ってこねぇんだ。行き先も街に行ったとか、森に行ったとか…よく分からなくてよ…だからといってじっとしてられなくて片っ端から心当たりを探し回ってたって訳だ。」
「人探し、か…。うーん、クー、匂いとかで追ってあげられる?」
(ふむ、4日前となると難しいな。)
「そっか…ありがとう。」
伺うようにこちらを見る二人にフルフルと顔を振って無理だと言うことを示す。しかし子供がいなくなったとなると…考えられる可能性は、人攫いや迷子、遭難…。4日前であれば一刻一秒を争う。急がなくちゃ。
じっとやるべき事を頭の中で整理していると、誰かがやってきたのが気配で分かる。しかし…体が勝手に震え出す程に危険な気配。ギュッとクーに抱きつく。真っ黒でドス黒い、と言っていい感じだ。今までで一番だ。抜き身のナイフを首元に突き付けられているような…類としてはロコさんの優しい感じを消して、暗殺者の性質を煮詰めに煮詰めて、ドロッドロに濃くした様な危ない気配。
「チッ…また来やがった…」
「ククリ、大丈夫?」
「…うん…」
「レンドーレ、あれは誰だ?」
「ここ3ヶ月位前からウチの孤児院に来るようになった奴だ。正直あの男のことはよく知らねぇよ。良い印象が無かったんでな。関わらないようにしてたし。」
「ククリ、何か感じ取ったの?」
「うん、今来た人、すっごいヤバイ…よ…。ねぇ、あの人が子供たちを攫ったとか…ない?」
「…分からねぇ。そもそもアイツがどこの誰で、ここに何しに来てんだかも分からねぇ。調べようとはしたんだがな…キレイに撒かれる。それだけの実力があるのは確かだな。」
近づいてはいけない、と本能が警鐘を鳴らす。そんな男が孤児院に出入りしているのは、怪しまずにはいられない。
ガチャッ
「「「っ…」」」
「お客さんがいらしていると聞きましてご挨拶しておこうと伺いました。この施設に寄付をさせていただいております、スヴェンと申します。」
「…」「…」
「…随分と警戒されているようですね?ふふっ私は貴方がたを知っていますよ。ククリ様、スイ様。私、ロコの先生をしておりました。時折手紙を貰うのですが、その中に貴方がたの名前が出て来ましたよ。」
「ロコさん」
「ふふっ随分と懐いてくれるのだと、喜んでおりました。」
「ロコさんのししょー、なの?」
「ええ、そうです。ロコに暗殺術を仕込んだのは私です。」
本当なのかな?とチラリとスー兄を伺うと頷きが返ってくる。つまり…本当にロコさんの師匠ってことだ。まじか……。怪しいと思った人が身内の関係者だなんて…
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