上 下
79 / 87

79

しおりを挟む







 改めて友達をゲットした喜びを噛み締めつつ、授業を受ける。しばらくは浮かれてしまいそうだ。かと言ってスキルの扱いがどうにもならないので、段々とダメージが蓄積していく。やっぱり駄目だなぁ…。

 一定の範囲内の人の感情が全部が流れ込んでくるのを自力で遮断出来るようにならないとねぇ…。生活もままならない。少しずつスキルの扱いも進歩している…と思いたい。昨日よりも平気だし!

「ククリ、お昼一緒にたべよ?」

「ごめんねファリス…少し一人になりたくて…」

「そっか…じゃあまた今度!」

「うん、ありがとう。」

 ファリスは断った僕に対しても、悪感情を持つことなくニコッと去っていき、別のグループに入っていった。僕は教室を出て、昨日と同じ場所へ向かう。まだまだ知らない場所もあるのだけど、もうあの場所は馴染みがある感じがする。

 お弁当片手にクーと共に木の根本に座る。アイテムボックスからクー用のお肉を取り出して、お皿に出して置く。僕もママの作ってくれたサンドイッチにかぶりつく。うん、美味しい。凄くお腹空いてたから、直ぐに1切れ食べきってしまった。

「ははっいい食いっぷりだな」

「…?あ、レンドーレさん!」

「おう、昨日ぶりだな、ククリ」

「うん。レンドーレさんはご飯食べたの?」

「あー、いつも食べてねぇんだ。」

「え…食べないの?」

「いや…俺は孤児院だからよ。贅沢出来ねぇんだ。」

「そっか…じゃあ僕の食べて!」

「え、いやそれは貰えねぇよ。」

「ううん、昨日のお礼!」

そう言って押し付けるように差し出すと、遠慮しながらも手を伸ばしてくれた。

「じゃあ1切れだけ…」

「うん!でも美味しかったらもっと食べていいよ!僕、余分に持ってるから。」

「うま…これすげぇ美味いな!」

「えへへ、そうでしょ!」

「ククリ!!」

名を呼ばれた方を向けば、スー兄が歩いてきていた。昨日もここにいたから、見当をつけて来たのだろう。

「あ、スー兄」

「お前またククリといるのか…」

「おう。」

スー兄が軽くレンドーレさんを睨みつける。スー兄ったら…。スー兄は気が立っているらしく、クーにもその矛先を向ける。

「クー、ちゃんとククリを守ってくれないと困るよ 。」

「こーん」

スー兄に文句をつけられたクーはそっぽを向いてスー兄を無視する。まぁクーは何も悪くないもんね。スー兄、お腹空いてイライラしてるのかな?

「スー兄、レンドーレさんは良い人だよ。お腹減ってる?」

「ククリ…腹は減ってる」

「うん、ほら食べよ?」

「わかった。」

レンドーレと反対側に腰を下ろしたスー兄にランチボックスを差し出す。スー兄はサンドイッチを引っ掴むとパクパクと食べ進める。よっぽどお腹減ってたんだね。僕も食べよっと。

食べ終えると、レンドーレさんは腹ごなしに、と体を動かし始める。スー兄は僕の側を離れることなく、じっとレンドーレさんを観察するように見ている。

「ねぇ、スー兄、お礼は?」

「ああ、剣技を教えるってやつね。まぁ、今でもいいかな。おい、レンドーレ」

「お?なんだ?」

「…この間ククリを助けてくれた礼にこの間聞きたがってた剣技を教える。」

「…マジで?」

「…一回だけだ。」

「おう!ありがとな!」

嬉しそうにするレンドーレさん。スー兄は一度だけと言いながらも、聞かれたことにはしっかりと答えてあげていた。スー兄って教えるの上手なんだよね。レンドーレさんも教わってすぐに分かったって言える辺り能力値が高いんだな。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる

塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった! 特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。

悪役令嬢に転生したが弟が可愛すぎた!

ルカ
BL
悪役令嬢に転生したが男だった! ヒロインそっちのけで物語が進みゲームにはいなかった弟まで登場(弟は可愛い) 僕はいったいどうなるのー!

完結・虐げられオメガ側妃なので敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン溺愛王が甘やかしてくれました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

メインキャラ達の様子がおかしい件について

白鳩 唯斗
BL
 前世で遊んでいた乙女ゲームの世界に転生した。  サポートキャラとして、攻略対象キャラたちと過ごしていたフィンレーだが・・・・・・。  どうも攻略対象キャラ達の様子がおかしい。  ヒロインが登場しても、興味を示されないのだ。  世界を救うためにも、僕としては皆さん仲良くされて欲しいのですが・・・。  どうして僕の周りにメインキャラ達が集まるんですかっ!!  主人公が老若男女問わず好かれる話です。  登場キャラは全員闇を抱えています。  精神的に重めの描写、残酷な描写などがあります。  BL作品ですが、舞台が乙女ゲームなので、女性キャラも登場します。  恋愛というよりも、執着や依存といった重めの感情を主人公が向けられる作品となっております。

精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる

風見鶏ーKazamidoriー
BL
 秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。  ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。 ※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

バッドエンドの異世界に悪役転生した僕は、全力でハッピーエンドを目指します!

BL
 16才の初川終(はつかわ しゅう)は先天性の心臓の病気だった。一縷の望みで、成功率が低い手術に挑む終だったが……。    僕は気付くと両親の泣いている風景を空から眺めていた。それから、遠くで光り輝くなにかにすごい力で引き寄せられて。    目覚めれば、そこは子どもの頃に毎日読んでいた大好きなファンタジー小説の世界だったんだ。でも、僕は呪いの悪役の10才の公爵三男エディに転生しちゃったみたい!  しかも、この世界ってバッドエンドじゃなかったっけ?  バッドエンドをハッピーエンドにする為に、僕は頑張る!  でも、本の世界と少しずつ変わってきた異世界は……ひみつが多くて?  嫌われ悪役の子どもが、愛されに変わる物語。ほのぼの日常が多いです。 ◎体格差、年の差カップル ※てんぱる様の表紙をお借りしました。

処理中です...