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しおりを挟む改めて友達をゲットした喜びを噛み締めつつ、授業を受ける。しばらくは浮かれてしまいそうだ。かと言ってスキルの扱いがどうにもならないので、段々とダメージが蓄積していく。やっぱり駄目だなぁ…。
一定の範囲内の人の感情が全部が流れ込んでくるのを自力で遮断出来るようにならないとねぇ…。生活もままならない。少しずつスキルの扱いも進歩している…と思いたい。昨日よりも平気だし!
「ククリ、お昼一緒にたべよ?」
「ごめんねファリス…少し一人になりたくて…」
「そっか…じゃあまた今度!」
「うん、ありがとう。」
ファリスは断った僕に対しても、悪感情を持つことなくニコッと去っていき、別のグループに入っていった。僕は教室を出て、昨日と同じ場所へ向かう。まだまだ知らない場所もあるのだけど、もうあの場所は馴染みがある感じがする。
お弁当片手にクーと共に木の根本に座る。アイテムボックスからクー用のお肉を取り出して、お皿に出して置く。僕もママの作ってくれたサンドイッチにかぶりつく。うん、美味しい。凄くお腹空いてたから、直ぐに1切れ食べきってしまった。
「ははっいい食いっぷりだな」
「…?あ、レンドーレさん!」
「おう、昨日ぶりだな、ククリ」
「うん。レンドーレさんはご飯食べたの?」
「あー、いつも食べてねぇんだ。」
「え…食べないの?」
「いや…俺は孤児院だからよ。贅沢出来ねぇんだ。」
「そっか…じゃあ僕の食べて!」
「え、いやそれは貰えねぇよ。」
「ううん、昨日のお礼!」
そう言って押し付けるように差し出すと、遠慮しながらも手を伸ばしてくれた。
「じゃあ1切れだけ…」
「うん!でも美味しかったらもっと食べていいよ!僕、余分に持ってるから。」
「うま…これすげぇ美味いな!」
「えへへ、そうでしょ!」
「ククリ!!」
名を呼ばれた方を向けば、スー兄が歩いてきていた。昨日もここにいたから、見当をつけて来たのだろう。
「あ、スー兄」
「お前またククリといるのか…」
「おう。」
スー兄が軽くレンドーレさんを睨みつける。スー兄ったら…。スー兄は気が立っているらしく、クーにもその矛先を向ける。
「クー、ちゃんとククリを守ってくれないと困るよ 。」
「こーん」
スー兄に文句をつけられたクーはそっぽを向いてスー兄を無視する。まぁクーは何も悪くないもんね。スー兄、お腹空いてイライラしてるのかな?
「スー兄、レンドーレさんは良い人だよ。お腹減ってる?」
「ククリ…腹は減ってる」
「うん、ほら食べよ?」
「わかった。」
レンドーレと反対側に腰を下ろしたスー兄にランチボックスを差し出す。スー兄はサンドイッチを引っ掴むとパクパクと食べ進める。よっぽどお腹減ってたんだね。僕も食べよっと。
食べ終えると、レンドーレさんは腹ごなしに、と体を動かし始める。スー兄は僕の側を離れることなく、じっとレンドーレさんを観察するように見ている。
「ねぇ、スー兄、お礼は?」
「ああ、剣技を教えるってやつね。まぁ、今でもいいかな。おい、レンドーレ」
「お?なんだ?」
「…この間ククリを助けてくれた礼にこの間聞きたがってた剣技を教える。」
「…マジで?」
「…一回だけだ。」
「おう!ありがとな!」
嬉しそうにするレンドーレさん。スー兄は一度だけと言いながらも、聞かれたことにはしっかりと答えてあげていた。スー兄って教えるの上手なんだよね。レンドーレさんも教わってすぐに分かったって言える辺り能力値が高いんだな。
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