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しおりを挟むああ、憂鬱だ…。ククリから離れて、わざわざ面倒な奴らに会いに行かなくちゃならないなんて…。貴族でもないのに何故パーティーに参加しなくてはならないのか未だに理解できない。
だが、ククリの格好いい兄でいる為にそれなりに猫を被って頑張ろう。そして面倒なパーティーなどという物が終わればすぐに帰ろう。いつかククリもパーティーに参加しなくてはならないのか…?あの子がパーティーに参加しようものなら、悪い虫が寄ってくるに違いない。なにせあの子は生粋の人たらしだからね。悪い虫がつかないようにしないと。
それなりに権力を持っている人間との繋がりも持っておいたほうがいいか。何かあった時にあの子を守れるように力があるに越した事はない。面倒だけれど、父と母に紹介してもらえばなんとかなると思うし。
「父さん、母さん、俺終わったらすぐ帰るから。」
「まぁ、構わねぇが。パーティーはちゃんとやれよ。」
「わかってる…俺はククリの格好いいお兄ちゃんだからね。」
「ははは!そうだぜ。カッコ悪い噂流されないように気を付けるんだな!」
「うん」
「相変わらずの溺愛ぶりだな。」
「レオナルドのところもじゃないの?リリアちゃん、可愛いだろ。」
「それはそうだな。シグナルドも妹可愛がってるぜ。な?」
「ん、リリアは可愛い。」
シグナルドの妹、確かに顔立ちは整っていた印象がある。ククリにも懐いていた筈だ。まぁククリに悪意を向けないなら、問題はない。それよりもノワールの方が目障りだ。突然押しかけてきたり、大量の手紙を送りつけたり…。そんなことをしていてもククリは優しいから受け入れてしまっているし。
「はぁ…ククリに会いたい。」
「おいおい、まだ王都についてもいねぇぞ。」
「わかってるけど…」
「俺もリリアに会いたい。王都に着けば会えるから急ぐぞ。」
「シグ、危ないから落ち着いて魔馬を走らせろ。」
「…わかった。」
王都に着いてからも慌ただしい。出立をギリギリにしているので、到着後すぐにパーティーの準備が始まる。まず風呂に入れられ、クリームを塗りたくられ、髪を整えられて、燕尾服を着る。この行程に3時間から4時間ほどかかる。
そしてパーティーに行く準備を整えると、時間を見て王城に向かう事になる。そこからパーティーの開始まで待って、パーティーが始まれば挨拶まわりに、ダンスなどの社交をこなす。
「はぁ…」
「スイ、国王様に挨拶行くぞ。」
「分かった。」
国王はそれなりに容姿の整った有能そうな人だった。こちらの考えは見透かしているような顔をしている。俺の真偽眼と同じようなスキルでも持っているのかもしれない。
「国王陛下、お久しぶりにございます。」
「おお!久しいな。顔を出してくれて嬉しく思う。そちらがスイか?」
「ええ、息子のスイです。」
「お初にお目にかかります、ケルとリオの息子のスイと申します。」
「ああ、よろしく頼む。…パーティーは楽しめているかね?」
「ええ、勿論です。」
「…そうか。他に気にかかる事があるようだね。」
「ははは!スイは弟のククリが心配で堪らないんですよ。」
「そうなのか。スイを夢中にさせるククリにもいずれは会えるのかな?楽しみにしていよう。」
「ククリをパーティーに出す予定はありません。あの子には自由にいて欲しいですから。」
「そうか…残念だ…。だが、いつかは会わせておくれ。」
「…はい…あの子がそれを望んだなら。」
「ふふっ余程大事にされているんだね。わかったよ、無理強いはしない。」
「ええ、それが宜しいかと。」
母が拒否してくれて安心した。あの子には貴族社会みたいな、裏の読み合いはやらせたくない。伝心のスキルを持ったあの子がこんな場所に来れば辛い思いをするに違いないから。
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