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しおりを挟む昼過ぎにスー兄と一緒に庭に出ているとクーが帰ってきた。今日はパパについて森に行ってたんだけど、パパがギルドに報告に行くのにはついていかなかったのかな。でもなんだか急いで帰ってきたみたい。直ぐに僕に駆け寄ってきて、周りをクルクルしたかと思えば、クンクン嗅がれた。怪我がないか確かめたらしい。
「おかえりクー」
「こん…」
僕の無事を確かめて、良かったって一先ず安心したみたいだ。けれどクーの様子はそれでも普段と違っている。
「どうしたの?」
「何かあったのかな?クーがここまで慌ててるの初めて見たよ。クー、落ち着いて。」
「……」
クーは警戒するように耳をそばだてて、じっと僕の側を離れない。それでいて視線は門がある方から外さない。そちらに警戒すべき何かがいるという事だろうか?僕はなにも感じ取れないんだけど…。
「……クー、何か来るんだね?」
「こん」
「そう…ククリは下がってな。危ないから。」
「うん…ママも呼んでくる。」
「そうだね、お願い。クーがここまで警戒する相手だ。相当手強いんだろうし。」
クーやスー兄に背を向けて、僕は家の中に駆け込む。そしてママを探して台所を覗き込む。そこには皿を洗っているママの姿があって、特に異常は感じていないらしかった。
「ママ!すぐきて!クーたちがあぶないかもしれない!」
「え?なにかあった?」
「うん…クーがそとを、すごくけいかいしてて…」
「なるほど…行こうか。」
「うん。」
事情を話すと流石にママからも緊張が感じられる。クーが警戒する相手ならママにとっても警戒しなくてはならない相手なんだろう。外にまで来て、ママは何かに気がついた様に、安堵の表情を浮かべた。
「…?……ふふふっ!大丈夫、何も怖いことは起こらないよ。」
「そうなの?ママ」
「なんでそんなこと分かるの?」
「クーが何を警戒してるのか分かったからだよ。」
「こん?」
「クーが子供達を心配して帰って来てくれたのは流石だね。隠されてるけど、あの強い気配が分かったんだね。」
もうすぐ近くまで来ているみたいだ。確かに楽しそうにしている人達が向かってきている。クーはママが大丈夫だと言ってもなお、警戒を解かなかった。そして、今にも飛びかからんばかりに姿勢を低くしている。
そしてママが家の周りに張っている結界をこえてきた瞬間に先制攻撃を仕掛けるクー。ママは止めることもせず、成り行きを見守っている。クーは強い魔獣だと聞いているし、攻撃された人達が心配になった。
「クー!おいで!」
「…こん…」
「まもろうとしてくれて、ありがとう。」
「こん」
引き下がってくれたクーも、入ってきた二人も特に怪我はなさそうだ。攻撃されたというのに、特に気にした様子もなく、近付いてくる。
「おお、驚いたぞ。妖狐を番犬にしてるのか!ははは!」
「ヘンリーさん、ネルさんお久しぶりです。」
ママが挨拶している間に僕は皆の後ろに引っ込む。そして隠れながらそっと覗く。クーの攻撃をいとも容易く防いだ人は30代前半くらいに見える。そして連れ添っている人はもっと若そう。
「おお、久しいな!リオ!スイ!…それからそこの小さいのがククリか!」
「……」
「ククリ、お祖父ちゃんだよ。」
「おじいちゃん?」
そんな見た目じゃないけど?どう見たって30代そこそこの二人がお祖父ちゃんだなんて信じられない。でもママが嘘を言っているとも思えない…。
「そうだよ。ククリご挨拶は?」
「…はじめまして…ククリ…です。よろしくおねがいします。」
「ククリの兄のスイです。よろしくお願いします。」
「おうおう!二人とも可愛いじゃねぇか!」
「そうだね。それに賢そうだ。」
「こんな所では何ですし、上がってください。準備はしてあるので。」
お祖父ちゃん…には見えないけど、確かにパパの面影を感じさせる顔立ちだったので少し納得した。それに僕についての反応も上々なようだ。少しだけ安心した。
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