31 / 87
31
しおりを挟むスー兄とパパが僕のためにお風呂を入れてくれている。もうすぐ入れるみたいだし、服とか準備して待ってよーっと。ママはご飯作るみたいだから、お風呂から上がったら、お手伝いしよっと。とは言っても、危ないからって台所に入れてもらえないから、カトラリーを並べるくらいだけど。
「おっふろー♪おっふろー♪」
「楽しそうですね。ククリ様。」
「えへへ!ロコさんとはいるもん!」
「ふふっどうしてそんなに私に信頼を寄せてくださるのでしょうね?」
「んー、ククリにはちゃんとわかるんだよ!」
「…そうですか。ククリ様には何か不思議な力がお有りなのですね。」
「だろうな。ククリは警戒すべきやつはちゃんとわかってる。」
「そうだね、僕が大丈夫だと思うような人でも、ククリは駄目な人には近付かないし。」
「ふむ、それは凄いですね。そしてそれが本当なら、私のような人間には懐いてはだめだと思うのですがね。」
ロコさんはそう言っているけど、懐いても良い人だって分かってる。いつも心配してくれて、守ろうとしてくれる人だもん。
「はははっ!ククリの基準は分からねぇが、あんたがククリの味方なのは確かだろ?」
「それはそうですね。」
「なら何も問題はない。ほら、ククリに付き合って風呂行ってくれ。」
「はい、そうしましょう。ククリ様、行きましょうか。」
「うん」
ロコさんが僕の手を取ってくれたので、ぎゅっと握る。柔く握り返してくれたので、そのままお風呂場へと歩く。脱衣場で服を脱ぎ捨てて、ササッと体を洗いに向かう。はっ!今更だけど、ロコさんと裸の付き合いをすることになるのか!
振り返るとロコさんが浴室に入って来るところだった。バッキバキなんだけど!?筋肉凄すぎる…。格好いい人は身体もかっこいいんだなぁ。
「どうしました?」
「んと、からだ、かっこいいね!」
「そうですか?ありがとうございます。」
身体を洗うためにロコさんが椅子に座ると、その背中にかなり大きな傷跡があるのが見て取れた。切り傷なのかな…。左肩から右腰に向けての傷跡だ。
「ふぁっ!!せなか!おっきいきず…」
「ああ、これは昔の傷跡です。子供の頃のものですので。」
「そーなんだ…んー、いたそう…」
「痛みはありませんよ。とうの昔に治っていますから。」
「うん…」
危険な仕事をしていたのだから当然怪我をすることだってあるんだろう。それでもこうして実際に傷跡を目の当たりにすると、凄く胸がぎゅっと締め付けられる思いになる。もう治ってるし、大丈夫なんだけど、それでもロコさんの過去の苦しみを思わずにはいられない。
「ふふっそんな顔をされるとは思わなかった。」
「だって…ロコさん…」
「ふふっあなたは本当に優しい子ですね。他人の為にそこまで心を砕けるのですから。」
「むぅ…ロコさん、もうケガしないでね!」
「ええ、気をつけますよ。」
「うん、からだ、あらってあげる!」
石鹸をつけて泡立てたタオルでロコさんの背中をごしごし洗う。流し終わって、やはり目に入る傷跡をそっと撫でる。過去にロコさんが感じた苦痛が少しでも和らぐといいな。
「ふふっくすぐったいですよ、ククリ様。」
「んふふ、ごめんね!」
「それでは交代しましょう。私も洗って差し上げますよ。」
そう言って全身綺麗にされてしまった。洗ってもらうのは少し擽ったかったけど、嬉しかった。そうして綺麗になった僕達はお風呂へと浸かる。
「ふぁー…きもちいい」
「…確かに悪くないですね。」
「でしょー!!つかれもとれるし!」
「そうですね…癒やされます。」
ロコさんにもお風呂の良さが伝わって嬉しい。普段よりも表情が緩んでいる気がするし、リラックスしてる雰囲気が伝わってくる。
「またいっしょに、はいろーね!」
「ええ、もちろんです。」
「んふふ!」
70
お気に入りに追加
964
あなたにおすすめの小説
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
完結・虐げられオメガ側妃なので敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン溺愛王が甘やかしてくれました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
目覚めたそこはBLゲームの中だった。
慎
BL
ーーパッパー!!
キキーッ! …ドンッ!!
鳴り響くトラックのクラクションと闇夜を一点だけ照らすヘッドライト‥
身体が曲線を描いて宙に浮く…
全ての景色がスローモーションで… 全身を襲う痛みと共に訪れた闇は変に心地よくて、目を開けたらそこは――‥
『ぇ゙ッ・・・ ここ、どこ!?』
異世界だった。
否、
腐女子だった姉ちゃんが愛用していた『ファンタジア王国と精霊の愛し子』とかいう… なんとも最悪なことに乙女ゲームは乙女ゲームでも… BLゲームの世界だった。
転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる
塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった!
特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる