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しおりを挟む僕、空紅梨は1歳(仮)になりました!
正確な誕生日は不明なものの、この家で過ごして一年が経ったらしい。新鮮なことが多くて、何だか長く感じられた1年だった。
少し話せるようになって、リオさんのことはママ、ケルさんのことはパパ、スイ君のことはスー兄って呼ぶようになった。一度名前にさん付けで呼んだら凄くポカンってされて、それから何度もママ、パパだよ、と教えこまれることになった。
クーは今日のために美味しい食材を獲ってきてくれたらしい。リオさん改め、ママが喜んで調理してくれた。相変わらず標準体重よりもおそらく重いんだけど、それでも可愛い可愛いって言ってくれる三人には感謝しかない。
僕の好きなご飯が所狭しと並べられた食卓を皆で囲む。3人ともニコニコしてて、とっても楽しそうだ。僕も釣られて笑顔になる。僕の横にクーが飛び乗って、皆が揃う。
「よし、それじゃあ始めようか。」
「おう!」「うん!」「こん」
「ククリ、1歳の誕生日おめでとう!」「「誕生日おめでとう!」」「こーん」
おめでとうの言葉と共にママが魔法でピカピカとした光を降らせてくれる。そんな景色が綺麗で、何だか泣きそうになった。なんとかやり過ごして笑顔で取り繕う。
「んふふー!ありあと!」
「よし、じゃあまずはククリからご飯取り分けようね。何食べたい?」
「ぜんぶ、おいしそ!」
「ふふっありがとう。じゃあいろんな種類を少しずつ食べようね。」
「ん!ありあと!まま!」
取り分けて貰ったご飯はどれも美味しそうで、早く食べたいけど皆で食べたいから頑張って我慢する。そんな僕に気がついているらしく、皆素早く自分の取皿に取り分けてくれた。クーの分は別で準備してあるので、クーも僕と一緒に待っていた。
「「「「いただきます!」」」」「こーん」
「…もきゅもきゅ…んー!おいち!まま、ありあとね!!クーもありあと!」
「ふふっ喜んでもらえて良かったよ。いっぱい食べてね。」「こーん!」
「うん!」
僕は頬いっぱいに食べ物を頬張る。多分ハムスターみたいになってるけど止まらない美味しさなんだよね。
「ふはは!いい食いっぷりだな。」
「んふふ!ククリ、ほっぺにおかずついてるよ。取ってあげる!」
「んー?ありあと、スーにぃ」
「どういたしまして!可愛いククリ」
食卓いっぱいに並んでいたはずの料理たちは、あっという間に平らげられていった。そしてその後は、片付けを出来る範囲で手伝って、ママにヨシヨシしてもらった。んふふ!子供になったからか、ママに褒めてもらえるのってすごく嬉しい。
「よし、じゃあお楽しみのプレゼントタイムだな!」
「じゃあまずは僕から。守護の付いた髪飾りだよ。」
「ふぁぁ!ありあとー!!だいすき!まま!」
キラキラした六芒星型のヘアピンだった。ベースに使われているのはオーパルのようで、傾けると様々な彩色が見られる。とっても嬉しくて、ママに飛び付くように抱きつく。
「ママずるーい!スイも!スイもプレゼントする!」
「はいはい。ククリ、君を守ってくれるものだから普段から身に着けてくれると嬉しいよ。」
「うん!つけて?」
「…はい、出来たよ。」
「んふふー!にあう?」
「うん、かわいいよククリ!」「似合ってるぜ。」「うん、似合ってる。」
みんなに見えるようにくるりと周ったら、色んなところから返事が返ってきた。似合ってるようで何より!そして僕の前にスー兄がやってきた。後ろ手に何かを隠している。何をくれるつもりなんだろう。
「ククリ、はいどーぞ!」
差し出されたのは美しい花束だった。白、オレンジ、黄色、緑、といった花々だった。綺麗にリボンが結ばれている。
「ありあとー!」
「うん!この花、みんなに手伝ってもらって採ってきたの!綺麗でしょ?」
「うん!スーにぃありあとー!とってもきれー!これ…のこせゆ?」
「そうだね、ドライフラワーにするか保存魔法を掛ければ暫くおいておけるよ。」
「まま、やってくれゆ?」
「うん、あとでね。」
「ありあと!まま、もっててー。」
花束をママに預け、スー兄に飛びつく。そして短い腕を伸ばして頭を撫で撫でする。
「えへへ、ククリー!大好きだよ。」
「んふふ!」
「んじゃ最後は俺だな。」
「えー!まだぎゅーしてたいのに!」
「また後にしろ。ククリ、これが最後のプレゼントだ。」
「…なぁに?」
「守護石だ。」
「しゅご…しぇき…」
「おう、自分のステータスを見れるもんだな。あと身分証にもなる。」
「しょーなんだ…?」
「おう、まぁ今はまだ分かんねぇかもしれないけどよ。大事なものだからな。」
「うん、わかっちゃ!」
ステータスを見れるってことは自分がどれくらい強くなってるか直ぐに分かるんだな。身分証っていう実用面もあるのか。それは確かに大事なものだな、特に血縁も居ない孤児である僕にとっては。
みんなに祝われて甘やかされて、僕の誕生日(仮)は終わっていった。とっても楽しい1日だった。来年も、その先もこうして祝ってもらえるのだろうか?祝ってもらえるといいな…。
______________
おまけ 空紅梨のもふもふ
あの獣神様にこの世界に転生させてもらってもう1年も経つのか。思う存分もふもふと触れ合える身体を貰って、僕はとても幸せだ。毎日クーが側にいることが当たり前になって、撫でさせてくれる。日本にいた頃では考えられない事だった。
「くー?」
「こん?」
「んふふ!だいしゅき!」
「こーん」
思うままに抱き着いて、クーの背中に顔を埋める。そんな僕を落とさないように、じっとしていてくれるクーは本当に優しい。ふんわりとした毛並みにすりすりと顔を寄せる。
「んー!しあわしぇ!」
「ん?ああ、クーに遊んでもらってるのね。」
「うん!」
「クーもククリのことは可愛がってるよな。」
「こん」
「んふふ!クーかぁいい!」
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