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しおりを挟む向こうが接触してくるならと、もう割り切って俺を側に置くことにしたらしい。俺としても一緒にいられる方がいいので異論は無い。…けれど、俺が居ようが関係ないらしく、図々しく秋夜に接触しようとしてくる。
挙げ句の果てには、rionの面々に俺に罵られたとか、苛められているとか言っているらしい。rionに対しては猫被ってるらしいし、良い様にrionの生徒を使うつもりなんだろうね。
これに関しては、直属の者達には春夜さんが押さえているので、後は小物ばかりだから大丈夫だと言っていた。それから逆に俺を罵っている時の録音をバッチリ握っている鳴海もいるので、心配しなくてもいいと思う。
「秋夜さん、婚約者なんだから隣に立つのは僕でしょう?ほら、その子を早く退けてよ。」
「……邪魔だ。藍!茜!」
「「はい!」」
二人がかりで奴は連行されていった。藍君たちには悪いけど、とても有り難い。今度二人の好きなものでも差し入れよう。それにしても煩いなぁ…。耳がキンキンする。
「秋夜、あの人いつ居なくなるの…?」
「そろそろだ。向こうが行動を起こす。それを待つ。香夜を狙ってくると思うから注意してね。」
「ねぇ、俺が囮になって早く終わるなら、それくらいするよ?」
「駄目だ。」
「…分かった…」
「香夜は危ない目には絶対に合わせない。それにそんな必要ないくらい簡単なことだから大丈夫。」
「うん」
付き纏われるストレスというのもあるし、俺の番に近づこうとする奴が居るのだって嫌だ。追い払う事ができても、rionの面々からは責めるような視線を受けるのだ。彼らにとっては政略結婚など当たり前で、それをぶち壊した俺が悪者だ。
目は口ほどに物を言うとはよく言ったものだ。秋夜が側にいる手前直接何かを言ってくる人は居ない。けれど視線は絶えることなく注がれる。GRACEの人たちが遮ってくれるけれど、それでも気配に敏感になっている俺には、容赦なく視線が注がれているのが分かる。
「はぁ…」
「…香夜…大丈夫?帰ろっか。」
「ううん、平気。ありがとう秋夜」
「無理はしないで。いつでも呼んでいいから。」
「うん」
「如月ちゃん、お兄さんが癒やしてあげるよ。さぁこのスイーツをお食べ!」
「ふふっありがとう咲人さん」
「ん、どういたしまして。」
周りはずっとザワザワしてたけど、急に煩くなったと思ったら、人垣の中から春夜さんが現れた。近づいてきた春夜さんはそのまま俺に顔を寄せてくる。見上げれば、いつもの軽薄さに心配気な視線が混じっている。
「あー、思ったより元気なさそうだねぇ…シオンが心配してたから様子見に来たけどさぁ。」
「春夜…何しに来た?」
「んー、だから香夜ちゃん見に来たの。この感じだともっとちゃんとrionの馬鹿共抑えてあげた方が良さそうだねぇ。」
「最初からやれ。馬鹿が。」
「うんうん、ごめんってぇ。だって秋夜がどうにかすると思ってたからさぁ。秋夜」
「ん」
「ん?秋夜?」
何故か秋夜に抱っこされた…何事?え?春夜さんなんかするの?
秋夜は何も言わないし。咲人さんも秋夜の側に寄った。神谷さんも鳴海を抱いてるし…
何がなんだか分からないと思ってるうちに、春夜さんが何かをしたらしい。周りの人たちが総じて怯えている。中には崩れ落ちるように座り込んでしまう人もいる。
誰も話すことを許されていない。そんな空気を作り出した当本人が口を開く。
「お前たちさぁ、本当に馬鹿ばっかりだよねぇ。俺はAランクだけど…秋夜はその上なんだよ?分かってる?その番を害そうなんて死にたいのかなぁ?…ねぇ、俺ちゃんと忠告してやったでしょ?」
口調は変わっていないけど、とても冷たくて重い。言う事を聞かないといけないような気になる。
「俺達の邪魔をして平穏に生きていけると思うなよ?rionは俺の管轄だけどぉ…だからこそ、いつでも潰せるんだってこと忘れるなよ。こんだけ懇切丁寧に言ってやってるんだし、解るよねぇ?どんだけ馬鹿なお前らでもさ。わかったら…良い子にしてな…?」
そう言い切って、春夜さんは威圧感?を引っ込めた。俺の為にしてくれたようだ。正直とても有り難い。
「…ありがとう、春夜さん」
「んー、どういたしましてぇ、と言いたいところだけど、今回のは俺の監督不行届だから、rionの奴等が迷惑かけてごめんねぇ。」
「いえ、シオンさんにも心配ありがとうって伝えてください。」
「ん、言っておくねぇ。じゃあまたね。シオンも会いたがってたし」
「はい!俺もシオンさんに会いたいです。」
「ありがとねぇ、シオンも喜ぶよ。じゃあね、もし何かされたら教えてね?」
「はい」
ひらひらと手を振って去っていった。シオンさんに言われたからみたいな感じでやってきたけど、本当は春夜さんも心配してくれてたんだろうな。なんだかんだ優しい人だ。でも初めてあった時は怖い人だと思ったんだよね。
「秋夜、春夜さんって何したの?」
「フェロモンで威圧したんだよ。俺も出来るけど。」
「αはみんな出来るの?」
「出来るんじゃない?ある程度のランクなら、だけどね。」
「ふーん…じゃあ春夜さんに初めて会った時、怖いなぁって思ったのってフェロモン感じ取ってたってことかぁ…」
「まぁそういうことだろうね。でも、俺の時は思わなかったの?」
「ん?秋夜?いい匂いだなって思ったかな?別に怖いとかは一切ないけど」
「ふふっそっか…。俺との相性、やっぱり最高に良いんだね。」
「えへへ!俺の運命の人かもね?」
「…本当にそうだよ。俺はそう思ってる。愛してるよ。運命の人。」
「っ!?」
冗談で言ったつもりが、思いの外真剣な言葉が返ってきて動揺する。
「そろそろ行こうか。ここに居ても不愉快だし。」
「う、うん」
未だに立ち上がれない人や震えている人がいる中、俺達はその場をあとにした。
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