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しおりを挟む階下に降りてみれば、たしかに先程まで見ていた写真の中の奴がいた。とはいえ、成長しているし、写真を見ていなければ本当に誰だか気づかなかっただろう。特になんの感慨もない。地味目の顔立ちながら、陽キャと呼ばれる人種に属していた彼は、髪を染めて、キッチリとセットしていた。
まぁ…そんなことをしようとも寝起きの秋夜のほうが断然かっこいいんだけど。本当にイケメンって罪だよな。人の努力ではどうにもならない部分だ。
「あ!久しぶりだな!香夜!」
「ええと…ああ、うん…そうだね」
「……」
向こうは距離感バグってるのかと思うほど、グイグイ来る。昔の知り合いとはいえ、今は他人ですけど…?名前とか勝手に呼び捨てしないでほしい。そのおかげでめちゃくちゃ微妙な反応をしてしまった。俺の傍らの秋夜はと言えば、無言で若干の不機嫌オーラを漂わせている。そっと秋夜の後ろに隠れさせてもらって、秋夜の腕にしがみつく。
「帰ってきてるって母さんから聞いてさ!会いたくて来ちまったよ!いきなりで悪かったな!」
「ああ…そう…それで…なんのよう?」
テンションの差がエグいまま、取り敢えず用件を聞いてみることにした。まぁ大したことじゃなさそうだし…。それに向こうは秋夜のことをスルーするつもりらしい。よくこの状況で…とも思うが、秋夜も加わったら余計状況が悪化するのは目に見えている。現状維持で行こう。
「え?…あー…そうだな、ただ久々に話してみたかっただけだよ。よかったら出かけねぇ?」
「…俺は話すことなんて無いよ。帰ってくれる?」
「…え?……あー…そう…だよな…悪い…帰るわ…」
きっぱりと断れば、気まずそうな顔をしてすごすごと帰っていった。…はぁ…疲れたぁ。なんか母さんも俺のことびっくり顔で見てたけど…。まぁ…母さんには伝えてなかったし仕方がない。アイツこそが俺がΩだと広めてくれやがった張本人なのだから。家が隣なだけあって、母同士で仲が良く、よく一緒にお茶なんかをしていたから、そのときにでも向こうの親に言ってしまったんだろう。それを知ったあのクソ野郎は散々言い触らしてくれた。
そのおかげでどれほど嫌な思いをしたことか…。高校を期に街を出たから短い期間ではあったけど。それでもそんなことを水に流してやるほど俺は寛容ではないし、相手の神経を疑うね。全く…どの面下げて会いに来たんだか…。
「ねぇ、母さん、アイツのこと一切家にあげたりしないでね。あと、余計なことも話さないで。俺のこと伝えたりしないでほしい。」
「わ、わかったわ…」
「秋夜、疲れた…甘やかして」
「ん、了解」
部屋に戻って秋夜の膝に頭を乗せて撫でてもらったり、軽いキスをしてもらったり、とめちゃくちゃ甘やかしてもらった。
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