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しおりを挟むこれからのことを秋夜と話し合わないといけないと思いつつも、やはりそんなにすぐに決められることでも無いし、後回しにして荷物の準備を開始した。服とか、必要なものを淡々と詰めていく。
実家にも連絡を入れていて、両親は秋夜を連れて行くことを喜んでいたようだった。まぁ…歓迎してくれる分にはいい。けどなぁ…若干不安だ。家の親はやり過ぎそうなんだよね。
「秋夜、準備終わった」
「ん、俺も終わったよ。それで明日は昼頃にお邪魔して、泊まらせてもらって、次の日は香夜の暮らしていた街を見に行く。そんな感じでいい?」
「うん…あのさ、家の両親が変なことしたらごめん…」
「ん?そんなに不安なの?大丈夫大丈夫。香夜のご両親に何されても気にしないよ。」
「俺も頑張って止めるけど、嫌なことはちゃんと嫌って言っていいからね。」
「ふふっわかったよ。じゃあ今日は早めに休もっか」
「うん」
翌朝は早めに起き、秋夜の手配してくれた運転手付きの黒塗り外車に乗り込んだ。お高そうなだけあって、その乗り心地は最高だった。そして、途中で寄り道して朝ごはんを済ませ、俺の家にたどり着いた。
「ここが香夜の家?」
「うん、そう。」
「ん、楽しみ。」
「楽しみ?」
「だって香夜の部屋とか小さい頃の写真とか見れるでしょ?」
「まぁ…でも…程々にしといてね。恥ずかしいし」
「ふふっわかったよ。」
秋夜から見たらびっくりするくらい小さな家かもしれない。それでも思い出深い俺の育った家だ。持っていた鍵でドアを開く。
「ただいまー!」
「お邪魔します」
一歩踏み入れば、懐かしい家の香り。いつまで経ってもやっぱり実家ってなんか特別だよね。家を出ていたこともあるけどさ。俺の声が聞こえたらしく中からバタバタとした足音が聞こえる。そしてリビングにつながるドアがなかなかの勢いで開かれる。
「あらあら、おかえり。早かったのね。」
「おかえり香夜!待っていたぞ!それで、その後ろの方が?」
慌てた足音を立てておきながら、すました感じで出てきた父と母は、秋夜を見るなり、一度固まる。そして俺に視線を戻して、何事もなかったかのように挨拶してくれる。
「ああ、うん、俺の番の佐久間秋夜さんです///」
「佐久間秋夜と申します。よろしくお願いします。」
「あらあらご丁寧に!私は香夜の母の真結美(まゆみ)です。こちらこそよろしくね!今日は自分の家だと思って寛いでいってね!」
「私は父の広大(こうだい)だ。よろしく頼むよ。こんなところで長々とすまんね。さぁ上がってくれ。」
両親が喜んでくれているのはわかっていたが、やはり嫌な予感は当たっていたらしい。リビングに入れば、歓迎パーティーと題して、大きな紙に飾り付けられてようこそ!!と書かれていたり、そこかしこにバルーンが…。
ここは誕生日パーティーの会場か…?
「ふふっ凄いですね、飾り付けしてくださったんですか?」
「え、ええ!その、歓迎しているのが目に見える形でも伝わればいいと思って。どうかしら?」
「嬉しいです。形で示してくださって」
「そ、そうかそうか!!ほらな!やって正解だったろう!」
「あらやだ!提案したのは私でしょう?」
「だが、実行したのは私だ!!」
自慢気に父が言う。両親はなんだか言い合っているが、いつものことなので放っておく。アレでもラブラブなのだ。夫婦喧嘩は犬も食わない、と言うやつだ。横にいる秋夜を見上げてみれば、その言葉通り、とても嬉しそうにしていたので…これはこれでアリなのか?
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