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しおりを挟む部屋にシオンを送っていくといった春夜から連絡が入る。部屋に行って、インターホン押しても誰も出ないということらしい。香夜にもちゃんと伝えている。それで出ない…ということは香夜に何かあった?
一抹の不安がよぎる。先程まではシトシトと降っていた雨だったが、次第に部屋に響く雨音が大きくなっていく。雨脚が強まった天気に不安が大きくなっていく。
春夜からの連絡を受けてすぐに、学校の自室に戻る。ドアの前にいた春夜たちを退けて、鍵を開ける。
「香夜!」
返事はない。香夜の靴は置いてあった。しかし靴がグチャグチャに転がっている。玄関で誰かと争った…ということか?中に入ってみても、香夜は見つけられなかった。
「香夜…」
「やっぱりいない?」
「…」
「そう…番にまで手出すんだ…。ホント…苛つくなぁ。」
「ハル…僕のせい…僕のせいで香夜くん…」
「シオン、良いから。シオンのせいじゃないし。取り敢えず、おとなしくしてて。俺達で見つけて助けるから。」
「…うん…」
「秋夜、行くよ」
「ああ」
荒々しく部屋を出ていく秋夜を見送る。
「あーあ…秋夜ガチギレじゃん…ホント…馬鹿だよねぇ。」
俺も怒ってるけどさぁ。秋夜の番に手出すなんて…ホント馬鹿すぎて笑えない。Sクラスを舐めすぎだよ。Sクラスがなんで特別視されるのか、全然わかってない。そしてSクラスのαにとって、自身の番がどれだけ大切なのかも…分かってなさすぎる。
「シオン、避難してな。」
「…でも…僕にできることとか!」
「ないよ。大丈夫だから。良い子にしてて」
「…うん」
シオンも責任感じてシュンとしちゃってるし。はぁ…一旦シオンを安全なところに連れて行くかな。それから秋夜のお手伝いに行きますかね。
香夜がさらわれた。許すつもりは微塵もない。他への被害なんかどうでもいい。大事なのは香夜の安全だけだ。抑えてコントロールしていたフェロモンを開放する。
SクラスがSクラスたる所以…それは…他のαを完全に支配下に置くことが出来る事だ。その辺にいるαに片っ端から命じていく。
「香夜の行方は?」
「…知りません」
「じゃあ知ってる奴、連れてこい」
「はい…」
αたちは動く。従順に。反抗することなく、香夜の行方を知っている奴を連れてくるだろう。学校の全体を支配下に置いているから、おそらく犯人も見つけられる筈だ。外部の犯行にしては、手口が雑すぎる。
しかし、そうと分かっていても気が急いて、落ち着かない。
香夜…頼むから無事で居てくれ…。
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