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しおりを挟むあれから、秋夜さんが出かけていくことも増えたし、部屋にいても忙しそうにしている…。この間聞かせてもらった計画を進めているのだそう。もうしばらく構ってあげられないってさ。
寂しいし、一人っきりで勉強するのにも流石に限界を感じる。今日も今日とて秋夜さんはお出かけしていった。それで偶にスマホに連絡が来るくらい。寂しいなぁ…。とはいえ、秋夜さんの邪魔はしたくない。
部屋に閉じこもってるのも…中々ストレスだ。生活していく分には問題ないけどさ。
それと…
「ただいま。香夜」
「おかえりなさい!」
「香夜…ん?なんで避けんの?」
「…ごめんなさい…」
秋夜さんから…他のΩの匂いがする。最近いつもそうだ…一人のΩだ。いつも同じ匂いだから。どうして俺の番なのに…俺がこんな思いをしなくてはいけないの…。秋夜さんは…どうしてこんな…
苦しい…毎日毎日苦しいよ…。外で秋夜さんが何をしているのか…分からない。疑いたくなんかない。でも…秋夜さんから俺以外のΩの匂いがすることに耐えられそうにない。
「かーぐや?なぁに?言ってくれないと分からない」
「……」
「…ふぅ…まただんまり?…まぁいいや。香夜に嫌われちゃったみたいだね、俺。」
「ちが…」
「じゃあ理由を教えて」
「あとで…いいます。だから取り敢えずお風呂入ってきてくれませんか?その間に…心の整理をするので…」
「…わかった…」
このままギクシャクしたままでいるのは嫌だ…言うしかないんだよね。こんなふうに思ってるの秋夜さんが知ったら…面倒くさいって思われちゃわないかな…。秋夜さんなら…大丈夫だよね…?
疲れている様子の秋夜さんを、煩わせたくなくて、言えなかった。俺が我慢すれば済むことだって考えていたし。秋夜さんに悟られているんだから、俺は態度に出てたんだろうけど。
秋夜さんがお風呂から上がってくる。手を広げてくれたので、素直に抱きつかせてもらう。
「来るんだ…ということは…俺は嫌われてない?」
「さっきもそう言いました。…座ろ秋夜さん…」
「ん、あと敬語とさん付け、やめるって言ったよね?」
「ごめん…秋夜…」
「いいよ、慣れてね。」
「うん」
「じゃあ理由を教えてくれる?」
「ん…秋夜が出かけていって、帰ってくるとΩの匂いがするんだ。…俺以外のΩの匂い。…いつも同じ匂いで…俺…耐えられなくて…」
「あー…なるほど…他のΩ…か…。ごめん…。面倒だから放置してた…。いつも絡んでくるやつがいて…もう絶対近づかせない…。」
「約束…だからね…秋夜…」
「ん、約束。大好きだよ香夜。ごめんね。嫌な思いさせて」
「ううん…秋夜寝る?」
「ん、香夜、一緒に寝よ」
「うん」
良かった…もうΩの匂いつけて帰ってくることないんだ。
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