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しおりを挟む香夜の元親友…腹が立つ、と同時によくやったとも思ってしまう俺は狂っているのかもしれない。香夜の周りのやつが排除され、高校に来て俺とすぐに出会ってくれた。とんでもない幸運だったんだろうな。
話を聞かせてくれた香夜の首筋をするりとなぞる。項にはまだガーゼが貼られている。必要以上に強く噛んでしまった。それについては申し訳なかった。俺のα性としての特性が強く出過ぎた。
「ねぇ香夜、番になってくれてありがとう」
「っ!?こちらこそです!えへへ!」
にこりと笑っていってくれる香夜が愛らしくて大好きだ。まぁ世間一般に言ったら香夜の顔立ちは、普通だと言われるんだろう。けれど、俺にとっては違う。他のΩのように醜い顔をしない。
この子がどれほど愛しいか。香夜は特別だ。ちょっと眠そうにしている。昨日も普通に寝てたけど、まだ香夜の身体は回復を欲しているらしい。静かにしておくか。
「おやすみ香夜」
「おやすみなさい…秋夜さん」
香夜はとても優しい性格をしている。人を蹴落とそうともしない。にこにことして側にいてくれる。この子の側にいられれば、俺も少しは優しくなれる気がする。
他のΩは蹴落としあって、そして自身の見てくればかり気にしている。αが何も気づかないとでも思っているのか?醜いところばかり見せられれば、Ωという存在自体を嫌いになるというものだ。性欲処理として使うとか、そんな風にしか扱われていない"ハーレム"のΩたち。そんな風に扱われている時点で、番になんてなれるわけ無いって気付けばいいのに。自分だけは特別だなんて夢見ているんだから。滑稽だ。
αは番を大切にする。自身の番には過保護なほどの干渉を見せ、大事に大事に守ろうとする。基礎の基礎として学ぶことだろうに…わざと見ないようにして…本当に呆れるね。
まぁ本当ならハーレムのΩ達なんて俺には関係ないし、どうでもいいんだけど…。
最近、Ωに不穏な動きがある。原因は分かりきってるけど。十中八九家のクソ親だろう。やっはり春夜が脅しても駄目だったらしいな。本当に…馬鹿だなぁ。俺達に手を出さなきゃ、潰すまではしなかったのに。
クソ親側についたらしいαの意思を汲んで、そのαのハーレムのΩたちが動き始めた。暫くは香夜は外に出さないほうが良いかもね。会社の力を使って学園に通うαたちを脅しているんだろう。
春夜とも、こういう展開になるだろうことは予測していたし、本当に行動が単純で予測しやすい単細胞共だ。大方、俺達のランクが高いから、勝手に婚約でも結んだんだろ。
俺も春夜も番以外と結婚なんて絶対にしない。やっぱりさっさと会社を潰しておけばよかったな。俺達の慈悲が仇になったか。
香夜はもともと眠そうにしていたけど、膝枕をして頭を撫でていたら寝れたようだ。香夜を起こさないようにそのままの姿勢で、連絡を取る。
「春夜か?」
「もしもし!シオンだよ!ええっと…秋夜さん?」
「そうだ。さっさと春夜に代われ」
「はーい……ハル!秋夜さんから電話だよー!」
「ん、ありがとぉシオン。でも勝手に出たら駄目だよぉ」
「ごめん!」
「秋夜?ごめんねぇ、用件はあれだよね?」
「ああ、本格的に潰すぞ。」
「りょーかい!んじゃまぁ、乗っ取り始めますかぁ」
「ああ…それから知っているだろうが…狙いは俺達の結婚だろうから番の周りには注意してやれ。」
「はーい。秋夜もねぇ。学園の生徒たちも"良くないこと"しようとしてるみたいだしねぇ。」
「ああ、俺達を敵に回したこと、心から後悔させてやろう。」
「ふふっだねぇ!秋夜も楽しそうだねぇ。」
「そうか?まぁ…やっとあのクソ親共に思い知らせてやれるんだ。楽しいだろう?」
「まぁね。悪い子にはお仕置きが必要だよねぇ。じゃあ作戦開始と行こうか。」
「ああ。」
「またねぇ秋夜」
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