59 / 137
58
しおりを挟むあれから、何事もない平穏な日々が続き、たまに暑いと感じる日が混じりはじめた5月のはじめ。待ちに待ったゴールデンウィークがやってきていた。楽しい旅行の予定だが、それと同時に、来なければいいとも思っていた。
秋夜さんに触れられるのは嬉しい…しかし発情期でもない今、秋夜さんを誘惑して興奮させられる自信が微塵もない。発情期だったらフェロモンが出て勝手にやってくれるのに…。
秋夜さんに隠れて色々調べたり、恥を忍んで茜くんや鳴海、咲人さんに聞いてみたものの、キスしてやれだの、相手に任せておけばいいだのと言われ全くもって参考にならなかった。まぁあの三人は何もしなくても魅力的だからこそ、だろうな。
それに比べて俺は…平凡な顔に貧相な体。経験がなくて、積極的にも行けない。…結論…俺では勃たないのでは?ということだ。
「香夜、そろそろ出るよ」
「あ!はい!」
準備をした荷物を持って、部屋を出る。そしてさり気なく秋夜さんに荷物を奪われる。色々…主に夜のことで頭が一杯でぼーっとしていて秋夜さんに荷物を持たせてしまっていることにも全然気づいていなかった。申し訳ない…。
「香夜、最近良く考え事してるみたいだけど、何か困ってることがあるなら相談乗るから」
「はい…でも大丈夫です!」
流石に夜のことで悩んでますなんて…秋夜さんにだけは言えない…。
「そう?まぁ…言いたくないことなら仕方ないね」
「すみません…」
「ん、いいよ。許してあげる。代わりに旅行中は出歩いたりするとき手繋ごうね」
「えっと…はい…」
「ん、ありがと。デート楽しみだね」
「楽しみ、ですね」
「いい思い出にしようね」
「はい!」
秋夜さん楽しそうだな。というか、楽しくしてくれてるんだ。俺も夜のことは一旦忘れて、秋夜さんとのデートを純粋に楽しもう!そうじゃないとせっかくの一日が勿体無いもんね!寮を出て、秋夜さんが手配してくれた車に乗り込むと、運転手さんが車を目的地まで走らせてくれる。
「浴衣とかも良いですね!」
「だね、香夜浴衣似合いそうだよね」
「そうですか?俺は秋夜さんが浴衣着てくれたら絶対格好いいと思います!」
「ふふっありがと。」
「ついたら取り敢えず、温泉入りましょ!それから部屋でゆっくりしたりお土産買いに行ったり!」
「そうだね」
車中でも色々なことを話しながら、今日泊まる宿に到着した。見た目は純和風の造りで、とても豪華で綺麗なところだ。今日泊まるのは旅館なので、着物を着た従業員の方が出迎えてくれた。
「ようこそいらっしゃいました」
「予約している佐久間です」
「佐久間様、2名様ですね。承っております。お荷物お運びさせていただきます。」
「荷物は自分たちで運ぶので」
「畏まりました。それではお部屋ご案内させて頂きます。」
「はい」
対応は秋夜さんがしてくれて、案内に従ってついていくと、離れのようになっている部屋についた。少々距離が取ってあるので、音なども気にせず楽しめるようだ。宿選びは一応一緒にしたけどここまで豪華なところだったとは…。
でも秋夜さんは平然としている。高いところも慣れてるんだな。住む世界が違うというかなんというか。普段一緒に暮らしているだけでは気づけない部分だったな。
27
お気に入りに追加
1,288
あなたにおすすめの小説
元執着ヤンデレ夫だったので警戒しています。
くまだった
BL
新入生の歓迎会で壇上に立つアーサー アグレンを見た時に、記憶がざっと戻った。
金髪金目のこの才色兼備の男はおれの元執着ヤンデレ夫だ。絶対この男とは関わらない!とおれは決めた。
貴族金髪金目 元執着ヤンデレ夫 先輩攻め→→→茶髪黒目童顔平凡受け
ムーンさんで先行投稿してます。
感想頂けたら嬉しいです!
花婿候補は冴えないαでした
一
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。
本番なしなのもたまにはと思って書いてみました!
※pixivに同様の作品を掲載しています
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
【完結】あなたの恋人(Ω)になれますか?〜後天性オメガの僕〜
MEIKO
BL
この世界には3つの性がある。アルファ、ベータ、オメガ。その中でもオメガは希少な存在で。そのオメガで更に希少なのは┉僕、後天性オメガだ。ある瞬間、僕は恋をした!その人はアルファでオメガに対して強い拒否感を抱いている┉そんな人だった。もちろん僕をあなたの恋人(Ω)になんてしてくれませんよね?
前作「あなたの妻(Ω)辞めます!」スピンオフ作品です。こちら単独でも内容的には大丈夫です。でも両方読む方がより楽しんでいただけると思いますので、未読の方はそちらも読んでいただけると嬉しいです!
後天性オメガの平凡受け✕心に傷ありアルファの恋愛
※独自のオメガバース設定有り
初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる