52 / 137
51
しおりを挟む秋夜さんに注意されたけど、あれから何事もなく過ごしていて、少し気が抜けていたのは事実だ。秋夜さんや茜くん達が一緒にいてくれなくても、道がわかるようになってきたので、一人でも大丈夫だと思ったんだけど…。迷子にはならなかった。けれど、追いかけてしまったんだ…秋夜さんそっくりのあの人を。
だって前のときは見間違いだと思ったんだ。でも学校内で見て、本当にいるとわかったらつい後を追ってしまっていた。本当にいるなら秋夜さんとどういう関係なのか気になってしまったんだ。
人が周りにいなくなったあたりで振り返る。そしてこちらに近づいてくる。気づかれてたのか。
「んー?あれ?秋夜のお気に入りの子だね?」
「あ…黒秋夜さん…」
「ん?黒秋夜さん?…プッアハハハハハ!!!!フハハハ」
「……」
思いっきり笑われてついしかめっ面になってしまう…。まぁ…黒い秋夜さんにしか見えない外見からは想像もつかないほど、軽い人なようだ。よく笑う。…それにしたって笑いすぎだ…
「そんな顔しないでよ…ふふふっ…」
「…」
「ええっと…俺は秋夜の双子の弟の春夜。よろしくねぇ」
「…如月です」
「んー?硬いなぁ…香夜ちゃん。俺のことは春夜でいいよー?」
「…知ってるんじゃないですか…」
「まぁねぇ。あの秋夜が興味持つ子なんて気になるじゃん?もしかしたら俺とも相性いいかもだし!なんたって双子だからね!」
「俺は良くないと思いますよ。相性。…俺秋夜さんのところに戻るんで。失礼します」
「えぇ?追いかけてきたくせに…まぁいいや。今日は逃してあげる。またねー!」
踵を返す俺に向かって、笑顔でひらひらと手を降っている。軽そうな人だけど、どことなく暗い雰囲気を感じた…。あの人の視線や雰囲気が怖かった。冷たくて…非情な感じだ。
もう会いたくない…けれど、あの人は「またね」って言った。確信を持ったような笑みで…。一応秋夜さんに報告しておこう。なんだかあの人は危険な気がするから。
あの人の視界から外れて、段々と歩が早くなって、最終的には走って秋夜さんのところに向かっていた。少しでも早く離れたかったから。離れてなお恐怖心が湧き上がってくる。得体のしれないものに遭遇してしまった恐怖…。
ガチャ!
「ん?香夜?」
「秋夜さん!!」
寮の部屋にいた秋夜さんの腕の中に飛び込む。少し驚いた様子だったけど、すぐに受け入れて抱き返してくれた。
「おかえり、香夜」
「ただいま…秋夜さん」
「なにかあった?」
「春夜って人に会いました…」
「そう…何もされなかった?」
「はい…少し話しただけです…でも怖かった…」
「俺のせいで怖い思いさせてごめんね…」
「あの…俺…秋夜さんのせいとか思ってません。」
「ん、ありがと…」
「でも…俺やっぱり…秋夜さんがいいです!」
「ふふっありがと」
38
お気に入りに追加
1,290
あなたにおすすめの小説
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
変なαとΩに両脇を包囲されたβが、色々奪われながら頑張る話
ベポ田
BL
ヒトの性別が、雄と雌、さらにα、β、Ωの三種類のバース性に分類される世界。総人口の僅か5%しか存在しないαとΩは、フェロモンの分泌器官・受容体の発達度合いで、さらにI型、II型、Ⅲ型に分類される。
βである主人公・九条博人の通う私立帝高校高校は、αやΩ、さらにI型、II型が多く所属する伝統ある名門校だった。
そんな魔境のなかで、変なI型αとII型Ωに理不尽に執着されては、色々な物を奪われ、手に入れながら頑張る不憫なβの話。
イベントにて頒布予定の合同誌サンプルです。
3部構成のうち、1部まで公開予定です。
イラストは、漫画・イラスト担当のいぽいぽさんが描いたものです。
最新はTwitterに掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる