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しおりを挟む藍くんにお礼を言って、部屋を出る。入学式も迷わないように迎えに来てくれると言っていた。大変お世話になっている。仕事だからって言ってたけど、親切な人で良かった。
自分の部屋はどうやら5階のエレベーターから一番遠い部屋だった。部屋の中に入れば、先に送っておいた荷物のダンボールが積んであった。片付けないとだけど、お腹減った…。
よし!もらったパンフの地図見ながらスーパーみたいなところに行ってみるか。腹ごしらえしてから、片付けにしよう。
が、初めての場所で且つ広大な敷地を持つ学園で迷うのは必然的だった。スーパー行きたかっただけなのに…。お腹空いてるのもあって限界…。
「ここどこ…?はぁ…最初からこれじゃあ…先が思いやられるなぁ。」
ふらふらと辿り着いたのは、四方外廊下に囲まれた中庭のような場所だった。真ん中に椅子が見える。とりあえずそこに座って、今一度場所を確認しようと思った。
疲れていたし、不注意になっていたから気付かなかった。その椅子に寝そべっている人がいるなんて思わなかった。ふらふらと近づいて行けば、そこにはとても美しい人が寝ていた。
銀の髪が風に揺られてサラリと流れる。まるでドラマの一場面のような光景にしばらく呆然として、見ていた。ハッと気が付き、邪魔をしてはいけないと、立ち去ろうとするが、もう遅かったようだ。
綺麗な人の目がぱちりと開かれる。銀の髪だけでも幻想的だったが、目を開けば、さらにその雰囲気は神秘的に見えた。彼の瞳は、紫だった。光が入ればキラキラと煌めいて目が離せなくなる。
「ん…誰?見たことねぇな」
「あ、えっと、今年から一年に入りました。如月です。」
「ふーん、下の名前は?」
「香夜です。」
「俺は佐久間秋夜ね。よろしく」
「あ、はい!よろしくお願いします」
「んで、こんなとこでなにしてんの?」
「あー…迷っちゃって…本当は食料品のところに行きたかったんですけど…。」
「食堂じゃねぇの?」
「あ、自分で作ろうと思ってまして…」
「ふーん…料理出来るんだ」
「一応ですけど出来ます」
「ん、じゃあ案内してやるよ。代わりにご飯食べさせて」
「あー…不味くても怒りませんか?」
「よっぽどじゃなきゃ怒らない」
「わかりました…じゃあ案内よろしくお願いします」
「ん、香夜は中学は外部なの?」
「はい、Ωだって、わかったのが遅くて…はっ…はぁ…」
歩き出したのはいいけど、足の長さの差を思い知らされる…。歩くの速いよ佐久間さん…。息が切れる。体力ないんだよね、俺。
「ん?ああ、歩くの速かったか悪い」
前を歩いていた佐久間さんが割とすぐに気づいて、息が整うまで止まってくれる。その後歩き始めてからも、俺の様子を見ながらスピードを調整してくれた。
「あ、いえ…はぁ…すみません、体力なくて」
「いや、合わせる。Ωだってわかったのいつ?」
「中学は卒業間近でした。なので進学先なくなっちゃって…ここに来ました。」
「なるほどね。香夜は、αに興味あんの?」
「今のところはあんまりです。そもそもΩだっていきなり言われても受け入れ切れなくて…。」
「ま、そりゃそうか。ん、ついた。」
自動ドアをくぐって中に入れば、食材がズラリと並んでいた。しかし利用者はほとんど居ないらしく、人影もなかった。
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