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この日は、使用人たち全員が休みだった。
定期的に、全員がいっせいに休みを取ることになっている。
その理由はわからない。何代か前の当主が思いつきで始めたらしく、その習慣が今でも残っているらしい。
それはいい。みんなはいつもがんばってくれているから、休みはあって当然。
問題なのは、ハワードとふたりきになるということ。
正直、彼とふたりきりだとどうしていいのかわからない。
当日、みんなはやくから出かけてしまった。
執事のジョシュアから、ハワードはこの日は用事がないから在宅するときいている。
だから、この日の食事はわたしが準備するつもりではある。
食事はいつも、ジェイミーと作っている。ジェイミーが休みの日には、わたしが作る。
ハワードは、当然食べてくれる。が、一度たりとも感想を言ってくれたことはない。それこそ、不味いとけなすことさえ。
朝食の準備をし、彼を起こした。
彼には彼のルーティンがあるので、いっさい邪魔をしない。
彼は、食堂のテーブル上に並んだいつものメニューを無言のまま食べていた。
ランチは、サンドイッチとフルーツを準備した。
それをテラスにセッティングすると、彼は無言のまま食べていた。
気まずすぎる。
この日ばかりは、時間が経つのが長く感じられる。
昼食後、彼は執務室で仕事をするらしいので、お茶を持って行った。
特製のジンジャークッキーを添えて。
無言のままローテーブル上にそれらを置き、彼に一礼して出ていこうとした。
すると、彼が言った。
「いまからドレスを買いに行きたいので、付き合って欲しい」
そのように。
いますぐ、という。
困惑せずにはいられないけれど、彼は立ち上がってジャケットを羽織っている。
わたしに拒否権はない。
だから、同道した。
肌寒いけれど、陽がポカポカしている。
ふたりして歩いて行った。
わたしはともかく、公爵の彼も歩いているのである。
とにかく会話がない。だけど、心地はいい。会話がなくても、彼と並んで歩くのはそうイヤではない。
定期的に、全員がいっせいに休みを取ることになっている。
その理由はわからない。何代か前の当主が思いつきで始めたらしく、その習慣が今でも残っているらしい。
それはいい。みんなはいつもがんばってくれているから、休みはあって当然。
問題なのは、ハワードとふたりきになるということ。
正直、彼とふたりきりだとどうしていいのかわからない。
当日、みんなはやくから出かけてしまった。
執事のジョシュアから、ハワードはこの日は用事がないから在宅するときいている。
だから、この日の食事はわたしが準備するつもりではある。
食事はいつも、ジェイミーと作っている。ジェイミーが休みの日には、わたしが作る。
ハワードは、当然食べてくれる。が、一度たりとも感想を言ってくれたことはない。それこそ、不味いとけなすことさえ。
朝食の準備をし、彼を起こした。
彼には彼のルーティンがあるので、いっさい邪魔をしない。
彼は、食堂のテーブル上に並んだいつものメニューを無言のまま食べていた。
ランチは、サンドイッチとフルーツを準備した。
それをテラスにセッティングすると、彼は無言のまま食べていた。
気まずすぎる。
この日ばかりは、時間が経つのが長く感じられる。
昼食後、彼は執務室で仕事をするらしいので、お茶を持って行った。
特製のジンジャークッキーを添えて。
無言のままローテーブル上にそれらを置き、彼に一礼して出ていこうとした。
すると、彼が言った。
「いまからドレスを買いに行きたいので、付き合って欲しい」
そのように。
いますぐ、という。
困惑せずにはいられないけれど、彼は立ち上がってジャケットを羽織っている。
わたしに拒否権はない。
だから、同道した。
肌寒いけれど、陽がポカポカしている。
ふたりして歩いて行った。
わたしはともかく、公爵の彼も歩いているのである。
とにかく会話がない。だけど、心地はいい。会話がなくても、彼と並んで歩くのはそうイヤではない。
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