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番外編2
母親たちのお茶会
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「最近クロウの様子がおかしいのです。なんだかよく泣くようになってしまって、聞き分けが悪いというか……」
「まあ」
「クロウちゃんが?」
王太子宮のアリシアの部屋である。
アリシアはマルグリットとオレリアの3人でお茶を飲んでいた。
クロウが生まれてからこうして3人でお茶を飲むことが増えた。
以前はオレリアとサンドラ、アシュリーが3人でお茶をしながら子どものことを話し合ったりしていたものだが、サンドラが亡くなり、アシュリーも領地にいることが多くなってしまった為、いつの間にか母親たちの集まりは無くなってしまっていた。
それが今はマルグリットとオレリアに子育て中の経験を聞きながらアリシアが相談をするという形で復活している。マルグリットもオレリアも、クロウとマーレットの祖母として、同じ立場の茶飲み友達ができて楽しそうだ。
因みにこのお茶会にレイヴンとレオナルドは参加していない。
初めの頃は顔を出していたけれど、「わかりますわ。レオナルドが生まれた時も……」「まあ、それではレイヴンも同じですわ」と記憶にない赤子の頃の話を蒸し返されて肴にされる為、早々に退散してしまったのだ。
「それで、クロウちゃんはどんな様子なの?」
「私がお会いした時は変わりないようだったけど……」
「それが……」
オレリアが異変に気づかないのも無理はない。
オレリアやマルグリットといる時は、以前と変わらない様子だとマリアンから聞いていた。
だけどアリシアといる時は違うのだ。
そうしてアリシアは最近の出来事を話しだした。
マーレットが生まれてから、アリシアとレイヴンは空いた時間を子ども部屋で過ごすことにしていた。
以前はクロウをアリシアの部屋へ連れてきてもらっていたが、幼子を2人移動させるよりもアリシアたちが動いた方が良いだろう。レイヴンと2人でそう話し合ったのだ。
「かぁちゃ!!」
アリシアたちが部屋を訪れるとクロウは嬉しそうに声を上げる。
パァッと顔を輝かせて両手を伸ばすクロウを心から愛しいと感じられる。
そうしてアリシアはクロウを抱き上げ、遊んでいた積み木やぬいぐるみの相手をするのだ。その間レイヴンはベビーベッドで寝ているマーレットの様子を見ている。
「一緒に遊んでいる時は良いのです。クロウもにこにこと楽しそうにしていますから。ですが……」
子ども部屋にはマーレットもいるのだ。
クロウも可愛ければマーレットも可愛い。
いくらレイヴンが様子を見ているとはいえ、アリシアもマーレットの顔が見たい。
だけどアリシアが立ち上がり、マーレットのいるベビーベッドへ向かおうとするとクロウがひしっと抱きついてくる。
「かぁちゃあ!!こえ!こえぇっ!!」
持っているのは、絵本だったりぬいぐるみだったり、近場にあるものである。
それを差し出し、アリシアをその場に留めようとする。
「マーレットのお顔を見てからね?」
そう言って宥めても、「やぁあ!こえぇっ!!」と言ってぐずりだす。
クロウの声に驚いてマーレットが泣き出すこともよくあった。
「最近はずっとそんな感じで……。子ども部屋から私たちが帰る時もずっと泣いているのです」
以前はアリシアの部屋に連れてきてもらっていたが、執務の時間など、これ以上一緒にいられないことを理解しているように見えた。悲しそうにして、ぐずることがあってもマリアンやルクセンヌ伯爵夫人にあやされればすぐにご機嫌が直っていたのだ。
だけど最近はアリシアたちがいなくなった後もずっと泣き続けているという。
「話を聞くと胸が痛くて……。どうしたら良いのでしょう」
アリシアがしゅんとして目を伏せる。
マルグリットとオレリアは顔を見合わせた。
思い当たることは1つしかない。
「それは……。マーレットちゃんに嫉妬しているのではないかしら」
「……嫉妬、ですか?」
アリシアは目を瞬かせる。
ずっと末っ子だったアリシアには思いがけない言葉だった。
「そうよ。特にクロウちゃんは一人っ子だったでしょう。お父様とお母様の愛情をこれまで独り占めしていたのに、急に妹と分け合わないといけなくなってしまって、哀しくなってしまったのね」
「ですが……。妹です」
「あら、幼い子が妹や弟に嫉妬するのはよくあることよ?」
当然のことのように言うオレリアにアリシアは首を傾げた。
「それではお兄様も……?」
「レオナルド?そうねぇ。あの子はどうだったかしら……」
オレリアが遠い目をする。
アリシアが生まれた時、レオナルドは3歳だった。
クロウとは年齢が違うからか、妹に嫉妬するようなところは見せなかった。
それどころか「ぼくが守らなければ」という気持ちが強かったように思う。
「あら。レイヴンはカナリーに嫉妬してよく泣いていたわよ。思えばあの頃が1番可愛かったわねぇ……」
マルグリットも昔を思い出しているようで遠い目をする。
「レイヴン様が……」と呟いたアリシアの中で、クロウとレイヴンの泣き顔が重なって見えた。
「まあ」
「クロウちゃんが?」
王太子宮のアリシアの部屋である。
アリシアはマルグリットとオレリアの3人でお茶を飲んでいた。
クロウが生まれてからこうして3人でお茶を飲むことが増えた。
以前はオレリアとサンドラ、アシュリーが3人でお茶をしながら子どものことを話し合ったりしていたものだが、サンドラが亡くなり、アシュリーも領地にいることが多くなってしまった為、いつの間にか母親たちの集まりは無くなってしまっていた。
それが今はマルグリットとオレリアに子育て中の経験を聞きながらアリシアが相談をするという形で復活している。マルグリットもオレリアも、クロウとマーレットの祖母として、同じ立場の茶飲み友達ができて楽しそうだ。
因みにこのお茶会にレイヴンとレオナルドは参加していない。
初めの頃は顔を出していたけれど、「わかりますわ。レオナルドが生まれた時も……」「まあ、それではレイヴンも同じですわ」と記憶にない赤子の頃の話を蒸し返されて肴にされる為、早々に退散してしまったのだ。
「それで、クロウちゃんはどんな様子なの?」
「私がお会いした時は変わりないようだったけど……」
「それが……」
オレリアが異変に気づかないのも無理はない。
オレリアやマルグリットといる時は、以前と変わらない様子だとマリアンから聞いていた。
だけどアリシアといる時は違うのだ。
そうしてアリシアは最近の出来事を話しだした。
マーレットが生まれてから、アリシアとレイヴンは空いた時間を子ども部屋で過ごすことにしていた。
以前はクロウをアリシアの部屋へ連れてきてもらっていたが、幼子を2人移動させるよりもアリシアたちが動いた方が良いだろう。レイヴンと2人でそう話し合ったのだ。
「かぁちゃ!!」
アリシアたちが部屋を訪れるとクロウは嬉しそうに声を上げる。
パァッと顔を輝かせて両手を伸ばすクロウを心から愛しいと感じられる。
そうしてアリシアはクロウを抱き上げ、遊んでいた積み木やぬいぐるみの相手をするのだ。その間レイヴンはベビーベッドで寝ているマーレットの様子を見ている。
「一緒に遊んでいる時は良いのです。クロウもにこにこと楽しそうにしていますから。ですが……」
子ども部屋にはマーレットもいるのだ。
クロウも可愛ければマーレットも可愛い。
いくらレイヴンが様子を見ているとはいえ、アリシアもマーレットの顔が見たい。
だけどアリシアが立ち上がり、マーレットのいるベビーベッドへ向かおうとするとクロウがひしっと抱きついてくる。
「かぁちゃあ!!こえ!こえぇっ!!」
持っているのは、絵本だったりぬいぐるみだったり、近場にあるものである。
それを差し出し、アリシアをその場に留めようとする。
「マーレットのお顔を見てからね?」
そう言って宥めても、「やぁあ!こえぇっ!!」と言ってぐずりだす。
クロウの声に驚いてマーレットが泣き出すこともよくあった。
「最近はずっとそんな感じで……。子ども部屋から私たちが帰る時もずっと泣いているのです」
以前はアリシアの部屋に連れてきてもらっていたが、執務の時間など、これ以上一緒にいられないことを理解しているように見えた。悲しそうにして、ぐずることがあってもマリアンやルクセンヌ伯爵夫人にあやされればすぐにご機嫌が直っていたのだ。
だけど最近はアリシアたちがいなくなった後もずっと泣き続けているという。
「話を聞くと胸が痛くて……。どうしたら良いのでしょう」
アリシアがしゅんとして目を伏せる。
マルグリットとオレリアは顔を見合わせた。
思い当たることは1つしかない。
「それは……。マーレットちゃんに嫉妬しているのではないかしら」
「……嫉妬、ですか?」
アリシアは目を瞬かせる。
ずっと末っ子だったアリシアには思いがけない言葉だった。
「そうよ。特にクロウちゃんは一人っ子だったでしょう。お父様とお母様の愛情をこれまで独り占めしていたのに、急に妹と分け合わないといけなくなってしまって、哀しくなってしまったのね」
「ですが……。妹です」
「あら、幼い子が妹や弟に嫉妬するのはよくあることよ?」
当然のことのように言うオレリアにアリシアは首を傾げた。
「それではお兄様も……?」
「レオナルド?そうねぇ。あの子はどうだったかしら……」
オレリアが遠い目をする。
アリシアが生まれた時、レオナルドは3歳だった。
クロウとは年齢が違うからか、妹に嫉妬するようなところは見せなかった。
それどころか「ぼくが守らなければ」という気持ちが強かったように思う。
「あら。レイヴンはカナリーに嫉妬してよく泣いていたわよ。思えばあの頃が1番可愛かったわねぇ……」
マルグリットも昔を思い出しているようで遠い目をする。
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