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第2部 6章
85 レイヴンの願いは①
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レイヴンとアリシアはベッドの中で色々な話をすることもあれば、ただ静かに抱きしめ合うこともあった。
どちらの時でも互いの温もりを感じられて優しい気持ちに包まれる。
「アリシア、何かやりたいことはない?行きたい場所でも欲しいものでも良いよ」
レイヴンは抱き合いながらアリシアの我儘を聞きたがった。
アリシアが思いつく我儘は、「一緒に歌劇へ行きたい」や「クロウと3人で肖像画を描いてもらいたい」など、レイヴンにとって嬉しいことばかりだ。
勿論レイヴンは快諾して歌劇のチケットを手配したし、高名な宮廷画家を呼び出した。楽しい思い出が日々増えていく。
だからレイヴンは、この日もアリシアがどんなお願いをしてくれるのか、うきうきしながら問い掛けたのだ。
だけどこの日、アリシアから返ってきたのは思いがけない反応だった。
レイヴンの目をじっと見つめて口を開く。
「レイヴン様は、何か希望はありませんか?私の望みを叶えていただくばかりではなく、私もレイヴン様の望みを叶えたいのです」
アリシアにも愛する人を喜ばせたいという気持ちがあるのだ。それにいつもアリシアの願いばかりを聞いてもらうのは不公平だろう。
レオナルドなどは「アリシアの望みを叶えるのが殿下の望みなんだから良いんじゃない?」なんて言うが、それじゃあアリシアが嫌なのだ。強いて言えば「レイヴンの望みを叶えること」が今の望みかもしれない。
「僕の望み……?アリシアと一緒にいられればそれだけで幸せだけど」
アリシアの言葉にレイヴンは目を瞬かせた。
愛する妻がいて可愛い息子がいるレイヴンは十分満ち足りている。レオナルドの専売特許だったアリシアの望みを叶える役目も最近はレイヴンのものだ。
「他に望みがあったかなぁ?」と思いを巡らせたレイヴンは、ふとそのことに思い当った。
どうしても叶えたい願い……。
だけどどうしようもないと諦めていた願いだ。
「……アリシアにお願いしたいこと、あった。僕は……、結婚式がしたい!」
「結婚式?」
今度はアリシアが目を瞬かせる番だ。
それはそうだろう。2人は既に結婚式を挙げている。王太子の結婚式なので、それは盛大な式だった。
「……結婚式はもう致しました。まさかお忘れに……?」
困惑した顔のアリシアが問い掛けると、レイヴンは慌てて首を振った。
大切な記念日なのに、忘れたと思われたら堪らない。
「そんなはずないよ!!アリシアと結婚できて、すっごく幸せだったんだから!!」
そう。あの日レイヴンは間違いなくこの国で一番幸せだった。
ずっと想っていた女性と結婚できたのだ。
例えその女性が別の男性を想っていたとしても、政略結婚として淡々と受け入れたのだとしても、レイヴンは愛する女性と結ばれた。
だけど――。あの日、幸せだったのはレイヴンだけだろう。
「……あの時アリシアが僕のことを何とも思っていなかったのは仕方のないことだと思ってる。好かれるようなことは何もしてなかったし。だけど……。僕はアリシアが幸せだと思える結婚式がしたい。本当はウェディングドレスも、もっとちゃんとアリシアの好みを取り入れて、アリシアが本当に着たいと思えるドレスを着て欲しかった。……あの時言えなくてごめん」
どちらの時でも互いの温もりを感じられて優しい気持ちに包まれる。
「アリシア、何かやりたいことはない?行きたい場所でも欲しいものでも良いよ」
レイヴンは抱き合いながらアリシアの我儘を聞きたがった。
アリシアが思いつく我儘は、「一緒に歌劇へ行きたい」や「クロウと3人で肖像画を描いてもらいたい」など、レイヴンにとって嬉しいことばかりだ。
勿論レイヴンは快諾して歌劇のチケットを手配したし、高名な宮廷画家を呼び出した。楽しい思い出が日々増えていく。
だからレイヴンは、この日もアリシアがどんなお願いをしてくれるのか、うきうきしながら問い掛けたのだ。
だけどこの日、アリシアから返ってきたのは思いがけない反応だった。
レイヴンの目をじっと見つめて口を開く。
「レイヴン様は、何か希望はありませんか?私の望みを叶えていただくばかりではなく、私もレイヴン様の望みを叶えたいのです」
アリシアにも愛する人を喜ばせたいという気持ちがあるのだ。それにいつもアリシアの願いばかりを聞いてもらうのは不公平だろう。
レオナルドなどは「アリシアの望みを叶えるのが殿下の望みなんだから良いんじゃない?」なんて言うが、それじゃあアリシアが嫌なのだ。強いて言えば「レイヴンの望みを叶えること」が今の望みかもしれない。
「僕の望み……?アリシアと一緒にいられればそれだけで幸せだけど」
アリシアの言葉にレイヴンは目を瞬かせた。
愛する妻がいて可愛い息子がいるレイヴンは十分満ち足りている。レオナルドの専売特許だったアリシアの望みを叶える役目も最近はレイヴンのものだ。
「他に望みがあったかなぁ?」と思いを巡らせたレイヴンは、ふとそのことに思い当った。
どうしても叶えたい願い……。
だけどどうしようもないと諦めていた願いだ。
「……アリシアにお願いしたいこと、あった。僕は……、結婚式がしたい!」
「結婚式?」
今度はアリシアが目を瞬かせる番だ。
それはそうだろう。2人は既に結婚式を挙げている。王太子の結婚式なので、それは盛大な式だった。
「……結婚式はもう致しました。まさかお忘れに……?」
困惑した顔のアリシアが問い掛けると、レイヴンは慌てて首を振った。
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だけど――。あの日、幸せだったのはレイヴンだけだろう。
「……あの時アリシアが僕のことを何とも思っていなかったのは仕方のないことだと思ってる。好かれるようなことは何もしてなかったし。だけど……。僕はアリシアが幸せだと思える結婚式がしたい。本当はウェディングドレスも、もっとちゃんとアリシアの好みを取り入れて、アリシアが本当に着たいと思えるドレスを着て欲しかった。……あの時言えなくてごめん」
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