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第2部 6章
81 侍女たちの団結
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幸福を形にしたようなアリシアだったが、悩んでいることがあった。
出産から半年が過ぎているのに閨がないのだ。
確かに出産直後は体も辛く、侍医からも止められていた。だけど体はすっかり回復し、侍医からも許可が出たのにレイヴンは抱いてくれない。
クロウを授かるまで4年掛かった。次の子を授かるまでまた同じだけ掛かるかもしれないと思えば気持ちが焦る。
アリシアのそんな不安を、マリアンが最初に気がついた。
エレノアに耳打ちし、エレノアがさり気なく他の侍女たちを下がらせる。3人きりになった部屋でマリアンが口を開いた。
「妃殿下、何があったのです?さあ、お話下さい」
マリアンはエレノアと違って遠慮がない。エレノアはマリアンのそんなところがアリシアには必要だと思っているようだ。
そして当然、マリアンは「何でもない」なんて言葉では誤魔化されてくれず、アリシアはこの半年閨がないこと、それとなく誘ってみても駄目だったことを話させられた。
「まったくあの男は……っ!妃殿下を愛しているくせに……っ!」
マリアンが怒りの声を上げる。
マリアンの中でレイヴンの評価はまだまだ低い。だけどアリシアを愛していることだけは認めているようだ。
「マリアン」
不敬よ、とアリシアが目線で咎めると、マリアンは「申し訳ありません」と素直に頭を下げる。
だけど怒りが収まったわけではなさそうだ。隣でエレノアも眉を寄せている。
アリシアも以前のようにレイヴンが他の女性で欲を満たしているとは思っていない。
アリシアの体を気遣ってくれているのはわかっている。だけど気を回しすぎるレイヴンだから、気にしすぎていると思うのだ。
そしてそんな時にアリシアはどうして良いかわからない。
「わかりました。今夜殿下がその気になるよう準備をしましょう」
「お任せください、妃殿下。殿下は妃殿下を愛しているのですもの。必ずその気になりますわ」
しょんぼりと俯いたアリシアにマリアンとエレノアが力強く声を上げる。
それから2人の行動は早かった。
夜、執務を終えて帰ってきたレイヴンとアリシアは一緒に夕食を食べる。
最近はクロウと一緒に過ごせるようにアリシアの自室で食事を摂ることも多かったが、今日は気持ちが盛り上がるよう2人きりで食べることになった。勿論エレノアの采配である。
食事の後はアリシアの部屋でクロウも一緒に3人で過ごす。
正殿へ行くことはほとんどなくなり、マルグリットを見習って親子の時間を大切にするようにしたのだ。ただ寝る時間になるとクロウはアリシアたちと離れるのを嫌がりぐずりだすので、そうなるとレイヴンもアリシアもクロウが気になり、眠りにつくまで子ども部屋で付いていることが多かった。
だけどこの日はマリアンがルクセンヌ伯爵夫人と話し合い、昼寝の時間を調整したりしてくれたのだろう。
レイヴンの腕の中でウトウトし始めたクロウは、寝る時間にはぐっすり眠りについていた。
レイヴンとアリシアは微笑み合い、クロウをベビーベッドへ下ろすとそれぞれの自室へ戻る。
これからがアリシアの勝負の時間だ。
浴室では侍女たちが気合を入れて待っていた。
エレノア主導の元、アリシアを頭の上からつま先まで磨き上げる。磨かれた後は髪を艷やかにする香油で梳かれ、肌を柔らかくするオイルをたっぷり塗られて体中を揉みほぐされた。
「美しいですわ、妃殿下」
エレノアがほぅ…っとため息を漏らす。
用意されていたのは、清楚なデザインでありながら肌が透けて見える夜着だ。
エレノアとマリアンはあの後商人を呼び寄せ、あれでもない、これでもないと、この夜着を選び出していた。
「こんなに美しい妃殿下をご覧になれば、殿下もじっとしておられませんわ」
ドナとジーナも笑みを見せる。
すっかり目的を知られているようで、アリシアは恥ずかしくなって視線を伏せた。
その姿がまた妖艶で美しい。
侍女たちは自分たちが仕上げた最高傑作を満足気に見つめていた。
出産から半年が過ぎているのに閨がないのだ。
確かに出産直後は体も辛く、侍医からも止められていた。だけど体はすっかり回復し、侍医からも許可が出たのにレイヴンは抱いてくれない。
クロウを授かるまで4年掛かった。次の子を授かるまでまた同じだけ掛かるかもしれないと思えば気持ちが焦る。
アリシアのそんな不安を、マリアンが最初に気がついた。
エレノアに耳打ちし、エレノアがさり気なく他の侍女たちを下がらせる。3人きりになった部屋でマリアンが口を開いた。
「妃殿下、何があったのです?さあ、お話下さい」
マリアンはエレノアと違って遠慮がない。エレノアはマリアンのそんなところがアリシアには必要だと思っているようだ。
そして当然、マリアンは「何でもない」なんて言葉では誤魔化されてくれず、アリシアはこの半年閨がないこと、それとなく誘ってみても駄目だったことを話させられた。
「まったくあの男は……っ!妃殿下を愛しているくせに……っ!」
マリアンが怒りの声を上げる。
マリアンの中でレイヴンの評価はまだまだ低い。だけどアリシアを愛していることだけは認めているようだ。
「マリアン」
不敬よ、とアリシアが目線で咎めると、マリアンは「申し訳ありません」と素直に頭を下げる。
だけど怒りが収まったわけではなさそうだ。隣でエレノアも眉を寄せている。
アリシアも以前のようにレイヴンが他の女性で欲を満たしているとは思っていない。
アリシアの体を気遣ってくれているのはわかっている。だけど気を回しすぎるレイヴンだから、気にしすぎていると思うのだ。
そしてそんな時にアリシアはどうして良いかわからない。
「わかりました。今夜殿下がその気になるよう準備をしましょう」
「お任せください、妃殿下。殿下は妃殿下を愛しているのですもの。必ずその気になりますわ」
しょんぼりと俯いたアリシアにマリアンとエレノアが力強く声を上げる。
それから2人の行動は早かった。
夜、執務を終えて帰ってきたレイヴンとアリシアは一緒に夕食を食べる。
最近はクロウと一緒に過ごせるようにアリシアの自室で食事を摂ることも多かったが、今日は気持ちが盛り上がるよう2人きりで食べることになった。勿論エレノアの采配である。
食事の後はアリシアの部屋でクロウも一緒に3人で過ごす。
正殿へ行くことはほとんどなくなり、マルグリットを見習って親子の時間を大切にするようにしたのだ。ただ寝る時間になるとクロウはアリシアたちと離れるのを嫌がりぐずりだすので、そうなるとレイヴンもアリシアもクロウが気になり、眠りにつくまで子ども部屋で付いていることが多かった。
だけどこの日はマリアンがルクセンヌ伯爵夫人と話し合い、昼寝の時間を調整したりしてくれたのだろう。
レイヴンの腕の中でウトウトし始めたクロウは、寝る時間にはぐっすり眠りについていた。
レイヴンとアリシアは微笑み合い、クロウをベビーベッドへ下ろすとそれぞれの自室へ戻る。
これからがアリシアの勝負の時間だ。
浴室では侍女たちが気合を入れて待っていた。
エレノア主導の元、アリシアを頭の上からつま先まで磨き上げる。磨かれた後は髪を艷やかにする香油で梳かれ、肌を柔らかくするオイルをたっぷり塗られて体中を揉みほぐされた。
「美しいですわ、妃殿下」
エレノアがほぅ…っとため息を漏らす。
用意されていたのは、清楚なデザインでありながら肌が透けて見える夜着だ。
エレノアとマリアンはあの後商人を呼び寄せ、あれでもない、これでもないと、この夜着を選び出していた。
「こんなに美しい妃殿下をご覧になれば、殿下もじっとしておられませんわ」
ドナとジーナも笑みを見せる。
すっかり目的を知られているようで、アリシアは恥ずかしくなって視線を伏せた。
その姿がまた妖艶で美しい。
侍女たちは自分たちが仕上げた最高傑作を満足気に見つめていた。
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