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第2部 6章
49 動揺
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それから更に1週間が経ち、アリシアは悩みを抱えていた。
なんだか太ったような気がするのだ。
いや、全体的に丸みを帯びてきたというなら良い。だけど手足はまだまだ細いままだ。それなのに腹だけが出てきている。
実は前々からそんな気はしていたのだ。
だけど湯浴みを手伝う侍女たちは何も言わない。だからきっと気のせいなのだと思うようにしていた。
だけど考えてみればそれは当然のことだ。使用人たちが主人に「お腹が出てきましたね」なんて言うはずがない。
「どうしましょう……。これじゃあレイヴン様に会えないわ……」
レイヴンはこれから側妃を迎えることになる。
美しい女性とレイヴンの寵を競い合わねばならないのに、こんな姿では幻滅されてしまう。
痩せなければ。
そう思うが、腹以外はまだ細いままなのだ。だからこそ余計に不格好なのである。
全身に肉をつけながら、腹だけ痩せるように。
そんな都合の良い方法があるのだろうか。
最近はずっと食べ過ぎていたもの。マリアンが呆れた時にやめておけば良かったのよ……。
今更後悔しても後の祭りである。
療養中だからと、コルセットをつけずにふんわりしたワンピースばかり着ていたのも悪かったのかもしれない。
こんな姿を見られたら、きっとレイヴンの気持ちは離れてしまう……。
「そんなの嫌よ……っ!どうすれば良いの……?」
ぽろぽろと涙が溢れてくる。
どうすれば良いのかわからないまま、アリシアは涙を流し続けた。
「お嬢様。私です、マリアンです。入りますよ」
昼を過ぎた頃、マリアンはアリシアの寝室を訪れた。
「今日は体調が思わしくないから1日休むわ」「ゆっくり休みたいから、誰も寝室に入らないで」
そんな言葉を信じて傍を離れていたが、そっとしておくにも限度がある。
アリシアは朝も昼もまだ食べてないのだ。食欲がないとしても何かを食べてもらわなくてはならない。
アリシアから入室を許可する言葉はなかったが、マリアンは扉を開けた。
不敬だと怒られても仕方ないが、これまでの経験で許されるとわかっている。
ベッドサイドまで来たマリアンはギョッとした。
シーツを被ったアリシアが泣いているのだ。
「お、お嬢様っ?!どうなさったのですか?!」
慌てたマリアンの言葉にアリシアは答えない。
いやいや、と頭を振り、そのまま泣き続けた。
王都の公爵邸にアシェントからの早馬が着いたのは、ちょうどレオナルドが帰宅した時だった。
差し出された文に目を通したレオナルドが慌てて立ち上がる。
文にはアリシアが寝室に籠って1日中泣いていると書かれていた。
食事も最近は沢山食べていると聞いていたのに、また食べなくなってしまったらしい。
『何か嫌なことでも思い出してしまったのでしょうか』
それを読むと居ても立ってもいられなかった。
「アシェントへ行ってくる」
そう言うと、レオナルドは邸を飛び出した。
周りの目を誤魔化すために、馬ではなく馬車を使わなくてはならない。
それが酷くもどかしかった。
アシェントまで馬で2日。
早馬なら1日半で来ただろうか。
アリシアは今も泣いているのかもしれない。
逸る気持ちを抑えようと、レオナルドは両手を握り締めた。
なんだか太ったような気がするのだ。
いや、全体的に丸みを帯びてきたというなら良い。だけど手足はまだまだ細いままだ。それなのに腹だけが出てきている。
実は前々からそんな気はしていたのだ。
だけど湯浴みを手伝う侍女たちは何も言わない。だからきっと気のせいなのだと思うようにしていた。
だけど考えてみればそれは当然のことだ。使用人たちが主人に「お腹が出てきましたね」なんて言うはずがない。
「どうしましょう……。これじゃあレイヴン様に会えないわ……」
レイヴンはこれから側妃を迎えることになる。
美しい女性とレイヴンの寵を競い合わねばならないのに、こんな姿では幻滅されてしまう。
痩せなければ。
そう思うが、腹以外はまだ細いままなのだ。だからこそ余計に不格好なのである。
全身に肉をつけながら、腹だけ痩せるように。
そんな都合の良い方法があるのだろうか。
最近はずっと食べ過ぎていたもの。マリアンが呆れた時にやめておけば良かったのよ……。
今更後悔しても後の祭りである。
療養中だからと、コルセットをつけずにふんわりしたワンピースばかり着ていたのも悪かったのかもしれない。
こんな姿を見られたら、きっとレイヴンの気持ちは離れてしまう……。
「そんなの嫌よ……っ!どうすれば良いの……?」
ぽろぽろと涙が溢れてくる。
どうすれば良いのかわからないまま、アリシアは涙を流し続けた。
「お嬢様。私です、マリアンです。入りますよ」
昼を過ぎた頃、マリアンはアリシアの寝室を訪れた。
「今日は体調が思わしくないから1日休むわ」「ゆっくり休みたいから、誰も寝室に入らないで」
そんな言葉を信じて傍を離れていたが、そっとしておくにも限度がある。
アリシアは朝も昼もまだ食べてないのだ。食欲がないとしても何かを食べてもらわなくてはならない。
アリシアから入室を許可する言葉はなかったが、マリアンは扉を開けた。
不敬だと怒られても仕方ないが、これまでの経験で許されるとわかっている。
ベッドサイドまで来たマリアンはギョッとした。
シーツを被ったアリシアが泣いているのだ。
「お、お嬢様っ?!どうなさったのですか?!」
慌てたマリアンの言葉にアリシアは答えない。
いやいや、と頭を振り、そのまま泣き続けた。
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文にはアリシアが寝室に籠って1日中泣いていると書かれていた。
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それを読むと居ても立ってもいられなかった。
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そう言うと、レオナルドは邸を飛び出した。
周りの目を誤魔化すために、馬ではなく馬車を使わなくてはならない。
それが酷くもどかしかった。
アシェントまで馬で2日。
早馬なら1日半で来ただろうか。
アリシアは今も泣いているのかもしれない。
逸る気持ちを抑えようと、レオナルドは両手を握り締めた。
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