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第2部 6章
36 療養計画②
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「陛下、私たち妃は王家に入った時から里帰りは許されません。王族と貴族は明確に分けられるもの。王家の威信を保つためにも一家臣の娘だった過去は忘れ、王家の一員として身を捧げなさい。――そう教えられた私は、どんなに辛い時でも耐えてきました。ですが、許されるなら逃げ帰りたい。そう思ったのは1度や2度ではありません」
マルグリットの言う「辛い時」がいつなのかわかる国王は息を飲んだ。
側妃を迎えた時、側妃に子が生まれた時。――レイヴンを引きずり降ろして側妃の子を王太子にするのでは、と言われた時。
マルグリットは何度逃げ出したいと思っただろうか。
「それでも私は耐えました。私に耐えられたのだからアリシアも……、とは言えません。現にアリシアは耐え切れず寝込んでいるのですから」
マルグリットが耐えられたのは、国王を愛していなかったからかもしれない。少なくともあの頃のマルグリットは国王の愛を諦めていた。
以前アリシアともそんな話をした。
アリシアはあの時も耐えられないと泣いていたのに、マルグリットにできたのは時間を稼ぐことだけだった。
「い、嫌だ!離縁なんてしたくない!アリシアを愛してる!絶対に嫌だ!!」
叫んだのはレイヴンだった。
取り乱し、必死の形相をしている。その顔には黒い隈があり、頬は日に日に細くなっていく。
化粧をしないだけやつれていく様がアリシアより顕著に見て取れる。
「落ち着きなさい、レイヴン。離縁ではなく静養よ」
実家へ戻されるというと、貴族であれば離縁を意味することにもなるが、王族は離縁を認められていない。
国王や王太子によって廃妃にされることはあるが、その時でも実家に戻ることは許されず、辺境の離宮へ幽閉されるか修道院へ行くことになる。
だからこそレイヴンは混乱しているのだろう。
マルグリットが提案しているのは、これまで有り得なかったことだ。
「だけど公爵家に戻したら、アリシアは廃妃になってしまう……」
レイヴンの頭にあるのはかつて見た夢のことだ。
夢の中でアリシアは公爵邸へ帰ってしまった。
妃が勝手に王太子宮を抜け出して生家へ帰るなど許されないことだ。人に知られたら、「王太子妃として資格なし」と言われ廃妃にされてしまう。
だからレイヴンはアリシアの名誉を保つ為に、王太子宮から出ていったことを隠して病死として発表しようと………。
レイヴンはぶるっと体を震わせた。
あんな終わり方は絶対に嫌だ。
「そうね。貴族たちに知られたら、アリシアは王太子妃として相応しくない、廃妃にしろ、と言われるわね。ただでさえ彼らは、自分の娘をなんとか妃としてねじ込もうと狙っているのだから。だけど、知られなければ?」
「え……っ?!」
「だからこそ、皆に集まってもらったのよ」
マルグリットはにっこり笑って集まった人々を見渡した。
「ここに集まっている人たちは、皆アリシアの回復と幸福を願っているでしょう?」とその瞳は語っていた。
マルグリットの言う「辛い時」がいつなのかわかる国王は息を飲んだ。
側妃を迎えた時、側妃に子が生まれた時。――レイヴンを引きずり降ろして側妃の子を王太子にするのでは、と言われた時。
マルグリットは何度逃げ出したいと思っただろうか。
「それでも私は耐えました。私に耐えられたのだからアリシアも……、とは言えません。現にアリシアは耐え切れず寝込んでいるのですから」
マルグリットが耐えられたのは、国王を愛していなかったからかもしれない。少なくともあの頃のマルグリットは国王の愛を諦めていた。
以前アリシアともそんな話をした。
アリシアはあの時も耐えられないと泣いていたのに、マルグリットにできたのは時間を稼ぐことだけだった。
「い、嫌だ!離縁なんてしたくない!アリシアを愛してる!絶対に嫌だ!!」
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化粧をしないだけやつれていく様がアリシアより顕著に見て取れる。
「落ち着きなさい、レイヴン。離縁ではなく静養よ」
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国王や王太子によって廃妃にされることはあるが、その時でも実家に戻ることは許されず、辺境の離宮へ幽閉されるか修道院へ行くことになる。
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「え……っ?!」
「だからこそ、皆に集まってもらったのよ」
マルグリットはにっこり笑って集まった人々を見渡した。
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