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第2部 6章
22 煩悶②
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あれからアリシアは同じことばかりを考え続けている。
ジェーンならアリシアが泣いて頼めば引き受けてくれるだろう。
ジェーンにそんな辛い役目はさせたくない。
ふたつの相反する思いが入れ替わり浮かんでは消えていく。
もう頭が変になりそうだ。
週末にはこれまでと同じようにレイヴンに抱かれた。
レイヴンは痩せてしまって美しさを失ったアリシアでも優しく抱いてくれる。
アリシアを愛し気に見つめる瞳も熱っぽく口づける唇も、「愛している」と告げる言葉も。いつか違う女性に向けられるのだろうか。
抱かれているのはアリシアなのに、レイヴンが違う女性に触れる場面が頭に浮かんだ。
レイヴンの力強い腕に抱き締められ、愛おしそうに全身へ口づけられる。
レイヴンの望み通り背中へ腕をまわして抱き締めながら、目を瞑ると自分の姿がユニファになりジェーンに代わっていく。
レイヴンが他の女性を抱くと思うと涙が溢れた。
レイヴンは生理的ではないアリシアの涙に驚いて動きを止める。
それでもアリシアが落ち着くまで背中を撫でてくれた。
こんなに大事に大事にしてくれているのに、レイヴンが他の女性を抱くところを想像しているなんて思ってもいないだろう。
レイヴンの執務室の周りではいつも誰かしら令嬢が待ち構えているし、舞踏会や夜会に出れば令嬢に囲まれている。彼女たちは礼儀も作法もなったものではなく、何よりアリシアに対する敬意が見えない。浅ましくレイヴンに抱き着いて仲を拗らせようとしたシュトラン伯爵令嬢のように、子を生めないアリシアへ蔑んだ目を向け、嫌らしく嘲笑うような者たちばかりである。
そんな令嬢を迎えるくらいなら、ユニファを迎えた方が余程マシだ。
そして側妃を迎え入れるより、ジェーンに子を生んでもらう方が良い。
ジェーンならアリシアが泣いて頼めばきっと引き受けてくれる。
だけどジェーンにそんな辛い役目をさせたくはない。
――堂々巡りだ。
こうしている間にも時間は刻々と過ぎていく。
アダムはレイヴンが視察へ行っている間に伯爵家へ話をしてユニファに心づもりをさせると言っていたが、本当に大変なのはレイヴンに受け入れさせることだ。ユニファが学園を卒業するまで半年あるので、その間にレイヴンを説得して受け入れさせるつもりなのだろう。
レイヴンが一度頷いてしまえば、もう後戻りはできない。
つまりアリシアが懐妊するとしてもジェーンが懐妊するとしても、最大で半年しか残されていないということだ。
懐妊もすぐにわかるわけではないので、早ければ早い程良い。
ジェーンに頭を下げて頼み、レイヴンにジェーンを抱くようお願いをする。
レイヴンはすぐに頷いてくれるだろうか。
虚しさに襲われてアリシアは自嘲する。
気持ちは焦っているのに、レイヴンがすぐに頷いても頷かなくても嫌なのだ。
レイヴンには拒んで欲しいし拒まれたくない。
一体どうして欲しいの?
自分に問い掛けてみても答えは出ない。
ジェーンならアリシアが泣いて頼めば引き受けてくれるだろう。
ジェーンにそんな辛い役目はさせたくない。
ふたつの相反する思いが入れ替わり浮かんでは消えていく。
もう頭が変になりそうだ。
週末にはこれまでと同じようにレイヴンに抱かれた。
レイヴンは痩せてしまって美しさを失ったアリシアでも優しく抱いてくれる。
アリシアを愛し気に見つめる瞳も熱っぽく口づける唇も、「愛している」と告げる言葉も。いつか違う女性に向けられるのだろうか。
抱かれているのはアリシアなのに、レイヴンが違う女性に触れる場面が頭に浮かんだ。
レイヴンの力強い腕に抱き締められ、愛おしそうに全身へ口づけられる。
レイヴンの望み通り背中へ腕をまわして抱き締めながら、目を瞑ると自分の姿がユニファになりジェーンに代わっていく。
レイヴンが他の女性を抱くと思うと涙が溢れた。
レイヴンは生理的ではないアリシアの涙に驚いて動きを止める。
それでもアリシアが落ち着くまで背中を撫でてくれた。
こんなに大事に大事にしてくれているのに、レイヴンが他の女性を抱くところを想像しているなんて思ってもいないだろう。
レイヴンの執務室の周りではいつも誰かしら令嬢が待ち構えているし、舞踏会や夜会に出れば令嬢に囲まれている。彼女たちは礼儀も作法もなったものではなく、何よりアリシアに対する敬意が見えない。浅ましくレイヴンに抱き着いて仲を拗らせようとしたシュトラン伯爵令嬢のように、子を生めないアリシアへ蔑んだ目を向け、嫌らしく嘲笑うような者たちばかりである。
そんな令嬢を迎えるくらいなら、ユニファを迎えた方が余程マシだ。
そして側妃を迎え入れるより、ジェーンに子を生んでもらう方が良い。
ジェーンならアリシアが泣いて頼めばきっと引き受けてくれる。
だけどジェーンにそんな辛い役目をさせたくはない。
――堂々巡りだ。
こうしている間にも時間は刻々と過ぎていく。
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レイヴンが一度頷いてしまえば、もう後戻りはできない。
つまりアリシアが懐妊するとしてもジェーンが懐妊するとしても、最大で半年しか残されていないということだ。
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ジェーンに頭を下げて頼み、レイヴンにジェーンを抱くようお願いをする。
レイヴンはすぐに頷いてくれるだろうか。
虚しさに襲われてアリシアは自嘲する。
気持ちは焦っているのに、レイヴンがすぐに頷いても頷かなくても嫌なのだ。
レイヴンには拒んで欲しいし拒まれたくない。
一体どうして欲しいの?
自分に問い掛けてみても答えは出ない。
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