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第2部 6章
10 優しい味のデザート
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夏も暑い盛りになると益々食事が喉を通らなくなった。
体力が落ちているせいで疲れやすく、常に体が重怠く感じられる。こってりしたものは一切受け付けなくなり、匂いだけで気持ち悪くなってしまう。
ただアリシアもなんとか食べようとはしているのだ。
料理長は以前アリシアが頼んだ食材を使って毎日料理を作ってくれている。それなのに体に取り入れられなければ意味がない。
少しでも懐妊に繋がるような何かがしたい。
その一心で料理を飲み込んでは耐え切れずに部屋で戻す、そんな生活を続けていた。
食べられなくなったアリシアにとって、お茶会は苦痛なものになった。お茶と一緒に出されるお菓子も喉を通らないのだ。
それでもアリシアは毎月のお茶会を続けている。妃として最も重要な務めを果たせていない今、公務まで投げ出したとは思われたくなかった。
王太子妃として相応しいと認められたい。
その思いは以前より強くなっている。
以前は誇りや尊厳が守られた立場の為だった。
だけど今はレイヴンの隣に並ぶ為に。
子が生めない上に公務でも役に立たなければ正妃としての資質を問う声が出てくる。
レイヴンが側妃を迎え、側妃が世継ぎを生めば、役に立たないアリシアは療養という名の幽閉に追い込まれるかもしれない。お茶会では同情や侮蔑の視線と共に、追い落とす隙を狙う視線も感じているのだ。
病気療養を口実に追い出されない為にもこれまで通りの生活を続けるしかなかった。
食べられないのはレイヴンと過ごすお茶の時間も同じだった。
だけどレイヴンはなんとか食べられるものはないかと心を砕いてくれている。
アリシアが好きな苺を、今年も季節が終わってからも長く取り寄せてくれていた。
それを調理長が少しでも食べやすいようにとムースやババロアにしてくれる。
レイヴンはいつものようにアリシアを膝に乗せるとスプーンですくって口へ運んだ。
そうして食べたムースやババロアは優しい味がして、アリシアは半分程食べることができた。
レイヴンが喜んだのは言うまでもない。
そうして苺が手に入らなくなるまで食事後のデザートやお茶菓子に苺のムースとババロアが続くことになった。
エレノアなどは、「いくらなんでも同じものばかり……。他に何かないのでしょうか」と呆れていたが、アリシアはそんなことにもレイヴンの気持ちが感じられて嬉しかった。
苺が終わった今は西瓜である。
レイヴンの膝に乗せられて口元に運ばれた西瓜を食べると甘い味がした。
体力が落ちているせいで疲れやすく、常に体が重怠く感じられる。こってりしたものは一切受け付けなくなり、匂いだけで気持ち悪くなってしまう。
ただアリシアもなんとか食べようとはしているのだ。
料理長は以前アリシアが頼んだ食材を使って毎日料理を作ってくれている。それなのに体に取り入れられなければ意味がない。
少しでも懐妊に繋がるような何かがしたい。
その一心で料理を飲み込んでは耐え切れずに部屋で戻す、そんな生活を続けていた。
食べられなくなったアリシアにとって、お茶会は苦痛なものになった。お茶と一緒に出されるお菓子も喉を通らないのだ。
それでもアリシアは毎月のお茶会を続けている。妃として最も重要な務めを果たせていない今、公務まで投げ出したとは思われたくなかった。
王太子妃として相応しいと認められたい。
その思いは以前より強くなっている。
以前は誇りや尊厳が守られた立場の為だった。
だけど今はレイヴンの隣に並ぶ為に。
子が生めない上に公務でも役に立たなければ正妃としての資質を問う声が出てくる。
レイヴンが側妃を迎え、側妃が世継ぎを生めば、役に立たないアリシアは療養という名の幽閉に追い込まれるかもしれない。お茶会では同情や侮蔑の視線と共に、追い落とす隙を狙う視線も感じているのだ。
病気療養を口実に追い出されない為にもこれまで通りの生活を続けるしかなかった。
食べられないのはレイヴンと過ごすお茶の時間も同じだった。
だけどレイヴンはなんとか食べられるものはないかと心を砕いてくれている。
アリシアが好きな苺を、今年も季節が終わってからも長く取り寄せてくれていた。
それを調理長が少しでも食べやすいようにとムースやババロアにしてくれる。
レイヴンはいつものようにアリシアを膝に乗せるとスプーンですくって口へ運んだ。
そうして食べたムースやババロアは優しい味がして、アリシアは半分程食べることができた。
レイヴンが喜んだのは言うまでもない。
そうして苺が手に入らなくなるまで食事後のデザートやお茶菓子に苺のムースとババロアが続くことになった。
エレノアなどは、「いくらなんでも同じものばかり……。他に何かないのでしょうか」と呆れていたが、アリシアはそんなことにもレイヴンの気持ちが感じられて嬉しかった。
苺が終わった今は西瓜である。
レイヴンの膝に乗せられて口元に運ばれた西瓜を食べると甘い味がした。
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