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番外編
アリシアの誕生日 5
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アリシアが退室してからしばらく経った後、レイヴンの執務室を訪れたレオナルドは落ち込んだ様子のレイヴンを見て首を傾げた。
フランクから届けられた書類の間に挟まれていたメモを見た限り、アリシアの作戦は上手くいったようだった。それなのに何故レイヴンはこんなに暗い顔をしているのだろうか。
「どうかしましたか?」
レオナルドが尋ねると、レイヴンが話し出した。
アリシアが執務室を訪ねてきてくれたこと。
商人を呼んでいることがばれてしまったこと。
一緒に贈り物を選んだこと。
……贈り物選びはこれが最後になったこと。
レイヴンから聞いた話は、フランクからのメモに書かれていたことと同じ内容だった。
違うところは「その合間合間にイチャイチャイチャイチャしてました」というやっかみのコメントがあったことくらいだろうか。
やっぱりレイヴンが落ち込む理由がわからない。
「良かったじゃないですか。アリシアが殿下を訪ねて来て、欲しいものを一緒に選んだのでしょう。アリシアは喜んでいたのではありませんか?」
「…うん。喜んでくれた」
そう言ったレイヴンは、「はあー-」と大きく溜息を吐いた。
「アリシアが選んだのは、木製の宝石箱だよ。使われている木材の良さを引き立てるような繊細な模様が彫られていて、それ以外の飾りは一切使われていない」
「ああ、アリシアはそういう品が好きですね。シンプルで飾り気のない、だけど素材の良さが引き立っている、そんな品を好みます」
「……あの宝石箱は僕も見ていたけど、1人では絶対に選ばなかった」
レイヴンがなぜ落ち込んでいるのか、ここでわかった。
一緒に過ごす内にアリシアの好みを知ることができた。今年こそ喜んでもらえる品を贈れると思ったのに、アリシアが選んだのはレイヴンの選択肢にない品だったからだ。
「贈り物はひとつあれば十分だって言ってたし、他に買ったものは贈らない方が良いのかも……」
レイヴンはしょんぼりして呟いた。
アリシアが傍にいた時はそれだけで楽しくて、アリシアが喜んでくれたのが嬉しくて、他のことは考えられなかった。
だけどアリシアがいなくなるとじわじわと不安が浮かんでくる。
レイヴンはアリシアの好きなものがわかるようになったと思っていたけれど、本当は違っているのかもしれない。
それならこれまで選んでいた品も、アリシアの好みではないのではないか。
アリシアに呆れられたりがっかりされたりしたらと思うと、贈らない方が良いような気がしていた。
だけどそれではこれまでと変わらない。
「そんなことありませんよ」
レイヴンが顔を上げると、レオナルドが困ったような顔でレイヴンを見ていた。
出来の悪い弟を見るような顔である。
「少なくともわたしがいる時に選ばれていたリボンや靴やドレスはアリシアの好みのものでした。ぬいぐるみはちょっと……、人前では出さなくても本心では喜ぶと思いますよ。ですがそれだけではなく、もしアリシアが殿下の為に選んだ品があまり好きではないものだったら、殿下は贈られない方が良かったと思いますか?こんなものしか選べないのかと、がっかりなさいますか?」
「そんなことはない!アリシアが選んでくれたものなら何でも嬉しいよ!アリシアが僕の為に選んでくれたことが嬉しいんだ!」
「それじゃあアリシアも同じでしょう」
「……え?」
「お忘れですか?アリシアも殿下を想っています。想い合う相手が自分の為に選んでくれたものなら何でも嬉しいでしょう。その気持ちが嬉しいのです」
瞬間、レイヴンの顔が輝いた。
アリシアから贈り物を受け取った時の気持ちを思い出したのかもしれない。
「それじゃあやっぱり全部贈ろう!前の日に僕が庭園に連れ出すから、その間にリトマインの部屋へ運び込んで……」
「いえ!贈るのはせめて3つか4つにして下さい!一度にこんな大量の贈り物は必要ありません!!」
浮かれるレイヴンにレオナルドが焦った声を出す。
ここからしばらく、全部贈りたいレイヴンと小出しにさせたいレオナルドの攻防戦が続いた。
フランクから届けられた書類の間に挟まれていたメモを見た限り、アリシアの作戦は上手くいったようだった。それなのに何故レイヴンはこんなに暗い顔をしているのだろうか。
「どうかしましたか?」
レオナルドが尋ねると、レイヴンが話し出した。
アリシアが執務室を訪ねてきてくれたこと。
商人を呼んでいることがばれてしまったこと。
一緒に贈り物を選んだこと。
……贈り物選びはこれが最後になったこと。
レイヴンから聞いた話は、フランクからのメモに書かれていたことと同じ内容だった。
違うところは「その合間合間にイチャイチャイチャイチャしてました」というやっかみのコメントがあったことくらいだろうか。
やっぱりレイヴンが落ち込む理由がわからない。
「良かったじゃないですか。アリシアが殿下を訪ねて来て、欲しいものを一緒に選んだのでしょう。アリシアは喜んでいたのではありませんか?」
「…うん。喜んでくれた」
そう言ったレイヴンは、「はあー-」と大きく溜息を吐いた。
「アリシアが選んだのは、木製の宝石箱だよ。使われている木材の良さを引き立てるような繊細な模様が彫られていて、それ以外の飾りは一切使われていない」
「ああ、アリシアはそういう品が好きですね。シンプルで飾り気のない、だけど素材の良さが引き立っている、そんな品を好みます」
「……あの宝石箱は僕も見ていたけど、1人では絶対に選ばなかった」
レイヴンがなぜ落ち込んでいるのか、ここでわかった。
一緒に過ごす内にアリシアの好みを知ることができた。今年こそ喜んでもらえる品を贈れると思ったのに、アリシアが選んだのはレイヴンの選択肢にない品だったからだ。
「贈り物はひとつあれば十分だって言ってたし、他に買ったものは贈らない方が良いのかも……」
レイヴンはしょんぼりして呟いた。
アリシアが傍にいた時はそれだけで楽しくて、アリシアが喜んでくれたのが嬉しくて、他のことは考えられなかった。
だけどアリシアがいなくなるとじわじわと不安が浮かんでくる。
レイヴンはアリシアの好きなものがわかるようになったと思っていたけれど、本当は違っているのかもしれない。
それならこれまで選んでいた品も、アリシアの好みではないのではないか。
アリシアに呆れられたりがっかりされたりしたらと思うと、贈らない方が良いような気がしていた。
だけどそれではこれまでと変わらない。
「そんなことありませんよ」
レイヴンが顔を上げると、レオナルドが困ったような顔でレイヴンを見ていた。
出来の悪い弟を見るような顔である。
「少なくともわたしがいる時に選ばれていたリボンや靴やドレスはアリシアの好みのものでした。ぬいぐるみはちょっと……、人前では出さなくても本心では喜ぶと思いますよ。ですがそれだけではなく、もしアリシアが殿下の為に選んだ品があまり好きではないものだったら、殿下は贈られない方が良かったと思いますか?こんなものしか選べないのかと、がっかりなさいますか?」
「そんなことはない!アリシアが選んでくれたものなら何でも嬉しいよ!アリシアが僕の為に選んでくれたことが嬉しいんだ!」
「それじゃあアリシアも同じでしょう」
「……え?」
「お忘れですか?アリシアも殿下を想っています。想い合う相手が自分の為に選んでくれたものなら何でも嬉しいでしょう。その気持ちが嬉しいのです」
瞬間、レイヴンの顔が輝いた。
アリシアから贈り物を受け取った時の気持ちを思い出したのかもしれない。
「それじゃあやっぱり全部贈ろう!前の日に僕が庭園に連れ出すから、その間にリトマインの部屋へ運び込んで……」
「いえ!贈るのはせめて3つか4つにして下さい!一度にこんな大量の贈り物は必要ありません!!」
浮かれるレイヴンにレオナルドが焦った声を出す。
ここからしばらく、全部贈りたいレイヴンと小出しにさせたいレオナルドの攻防戦が続いた。
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