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番外編

アリシアの誕生日 3

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 知らないはずの贈り物選びをどうやって止めるのか。
 アリシアは悩んだ末に贈り物選びの場所へ乗り込むことにした。現場を押さえられた以上、レイヴンも「なぜ知っているのか」とは言えないだろう。
 レイヴンはアリシアが執務室を訪れると喜ぶので丁度いい。
 レオナルドから教えられた商人の来る時間に合わせて執務室へ向かった。

 執務室の扉を叩くと侍従のフランクが応えてくれる。
 フランクもレオナルドからアリシアが来ることを教えられている為、ここからは茶番劇だ。

「殿下、妃殿下がいらっしゃいました」

 フランクがアリシアの訪れを告げると、扉の向こうで大きな音がした。
 次いでレイヴンのうわずった声が聞こえてくる。

「あ、ア、アリシア?!」

 余程慌てているのだろう。
 アリシアが訪ねてきたことを喜ぶ気持ちと、商人や買い上げた商品をどうやって隠せば良いのか混乱している様子が伺える。
 フランクには隠すつもりがないので平坦な声でレイヴンを促した。

「妃殿下をお通ししてもよろしいですか?」

「っ!!」

 確かにいつまでも待たせているわけにはいかない。
 それに訪問を歓迎していないと思われても困る。いつものレイヴンならアリシアの名前を聞いた途端、歓喜して自ら扉を開けただろう。
 幸いにもこれまで買った品は続き部屋へ移してあるので、見られるのは今日買ったものだけだ。
 レイヴンは覚悟を決めて頷いた。



「レイヴン様、突然の訪問をお許しください」

 先触れを出していないのは事実なのでアリシアは頭を下げる。
 レイヴンなら許してくれると確信がある故の策だった。
 案の定レイヴンはすぐに許してくれる。

「そんなこと気にしなくて良いよ!アリシアが会いに来てくれて嬉しい!」

 レイヴンがアリシアを抱き締める。
 フランクがいようが商人がいようがお構いなしだ。
 アリシアもレイヴンの背中へ腕をまわしてぎゅっと抱き締めた後、部屋の中へ視線を向けた。

 部屋の中では数人の商人が立ち上がり、頭を下げている。
 今日来ている商人は、パラソルや扇などの小物を扱う商会の者だ。机の上には所狭しと商品が並べられている。
 ソファの端へ積まれている、綺麗にラッピングされたものは既に買ったものだろう。
 アリシアはそれらのことに気付かない振りをして、レイヴンへ笑顔を向けた。

「お買い物をされていたのですか?」

「あっ!う、うん…」
 
 レイヴンは曖昧に頷いてアリシアの顔を窺う。
 アリシアはにこにこしているだけで、それ以上何も言わない。

「もうすぐアリシアの誕生日だから……」

 無言の圧力に負けたレイヴンはぼそぼそと口を開いた。
 そもそも並べられているのはすべて女物の品だ。
 アリシアへの贈り物でなければ、誰に贈るものかという話になる。

「まあ、私への贈り物を選んで下さっているのですか?」

 アリシアは初めて知ったというように驚いてみせた。
 普段のアリシアなら、そんなところへ立ち行ってしまって申し訳ないという顔をしただろう。
 だけど冷静さを失っているレイヴンはそれに気づかなかった。



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