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第2部 5章
49 指輪②
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デートの最後は去年も来た装飾品の店だ。
店の中は去年と変わらず高くて派手な成金趣味の品を並べたエリアと、質は劣るが上品なデザインのものを並べたエリアに分かれている。
2人が行くのは上品な品が並べられた方だ。
流石と言うべきか、店員は1度しか来たことのない2人を覚えていた。
2人の手首で揺れるブレスレットを見て嬉しそうに頬を緩める。
「1周年なんだ。何か記念になるものをお揃いで持ちたいんだけど、お薦めはあるかな?」
レイヴンが尋ねると、店員は少し考えた後、小さなサファイアとエメラルドがついた指輪を2つケースから取り出した。同じデザインの指輪だが、リングのサイズが違っていてそれに合わせて石の大きさも違っている。
この国では夫婦や恋人がお揃いの指輪をするような習慣はない。
だけど遠い異国にはそんな習慣があるそうだ。左手の薬指にはめた指輪が妻や恋人がいる証となる。
「まあ、素敵ですね」
そう言って微笑むアリシアを見て、レイヴンは指輪に決めた。
王太子夫妻が身につける指輪にしては安価すぎるが、それはまた別で買えばいい。
ここで買うのは、初デートから1周年を迎えた恋人としての指輪だ。去年買ったブレスレットと使われている石が同じなので、ブレスレットと指輪がセットのようにも見える。
指輪のサイズは複数用意されていたので、サイズの合う指輪を買うことができた。サイズ直しをして取りに来ることはできないのでホッとする。
頬を染めながら互いの指に指輪をはめるカップルを店員は微笑ましく見守った。
仲の良い恋人たちを見送った後、店員は密かに首を傾げていた。
中流階級向けの店なので、男爵や子爵といった下級貴族がメインの客だ。
その他にも家業が傾いた伯爵家や、高位貴族でもまだ学生であまり使える資金のない子息や令嬢が訪れることもある。
それがどんな客であっても、お客様である以上すべて覚えている自信があった。
その記憶を辿ってみても、あの2人が来たのはこれが2回目のはずである。
それなのに何故かあの2人を良く知っているような、不思議な親近感を感じている。
店員は頭を捻る。
2人は平民のようなふりをしているが、その洗練された所作から高位貴族であることはわかっていた。
お忍びで街へ出た高位貴族が店にくるのはままあることなのでとやかく言うつもりはない。
だけど本来ここは高位貴族が来るような店ではなく、店以外の場所で高位貴族と知り合うようなコネもない。
彼らは一体何者なのかしら?
答えが出ることはないまま、次の客の相手をする内にそんな疑問は消えていった。
そう。休みの日に通っている教会の回廊に男性の肖像画が飾られていることにも、医師を育成し、慈善活動に力を入れる女性の絵姿が民衆の間で人気を誇っていることにも気がつかないまま、またの来店を待つことになる。
この時レイヴンとアリシアは既に馬車に乗って王宮へ向かっていた。
お揃いのブレスレットをつけ、お揃いの指輪を見て目を細めながら。
店の中は去年と変わらず高くて派手な成金趣味の品を並べたエリアと、質は劣るが上品なデザインのものを並べたエリアに分かれている。
2人が行くのは上品な品が並べられた方だ。
流石と言うべきか、店員は1度しか来たことのない2人を覚えていた。
2人の手首で揺れるブレスレットを見て嬉しそうに頬を緩める。
「1周年なんだ。何か記念になるものをお揃いで持ちたいんだけど、お薦めはあるかな?」
レイヴンが尋ねると、店員は少し考えた後、小さなサファイアとエメラルドがついた指輪を2つケースから取り出した。同じデザインの指輪だが、リングのサイズが違っていてそれに合わせて石の大きさも違っている。
この国では夫婦や恋人がお揃いの指輪をするような習慣はない。
だけど遠い異国にはそんな習慣があるそうだ。左手の薬指にはめた指輪が妻や恋人がいる証となる。
「まあ、素敵ですね」
そう言って微笑むアリシアを見て、レイヴンは指輪に決めた。
王太子夫妻が身につける指輪にしては安価すぎるが、それはまた別で買えばいい。
ここで買うのは、初デートから1周年を迎えた恋人としての指輪だ。去年買ったブレスレットと使われている石が同じなので、ブレスレットと指輪がセットのようにも見える。
指輪のサイズは複数用意されていたので、サイズの合う指輪を買うことができた。サイズ直しをして取りに来ることはできないのでホッとする。
頬を染めながら互いの指に指輪をはめるカップルを店員は微笑ましく見守った。
仲の良い恋人たちを見送った後、店員は密かに首を傾げていた。
中流階級向けの店なので、男爵や子爵といった下級貴族がメインの客だ。
その他にも家業が傾いた伯爵家や、高位貴族でもまだ学生であまり使える資金のない子息や令嬢が訪れることもある。
それがどんな客であっても、お客様である以上すべて覚えている自信があった。
その記憶を辿ってみても、あの2人が来たのはこれが2回目のはずである。
それなのに何故かあの2人を良く知っているような、不思議な親近感を感じている。
店員は頭を捻る。
2人は平民のようなふりをしているが、その洗練された所作から高位貴族であることはわかっていた。
お忍びで街へ出た高位貴族が店にくるのはままあることなのでとやかく言うつもりはない。
だけど本来ここは高位貴族が来るような店ではなく、店以外の場所で高位貴族と知り合うようなコネもない。
彼らは一体何者なのかしら?
答えが出ることはないまま、次の客の相手をする内にそんな疑問は消えていった。
そう。休みの日に通っている教会の回廊に男性の肖像画が飾られていることにも、医師を育成し、慈善活動に力を入れる女性の絵姿が民衆の間で人気を誇っていることにも気がつかないまま、またの来店を待つことになる。
この時レイヴンとアリシアは既に馬車に乗って王宮へ向かっていた。
お揃いのブレスレットをつけ、お揃いの指輪を見て目を細めながら。
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