530 / 697
第2部 5章
44 記念日
しおりを挟む
「アリシア、デートしよう!」
「デート…ですか?」
「そうだよ。もうすぐ1周年だからね」
アリシアが首を傾げる。
レイヴンはそんなアリシアの様子を気にすることなく笑顔でアリシアを抱き寄せた。
もう少しで初めてアリシアが「愛している」と言ってくれてから1年になる。
その少し後には初めて王都の街でデートをした。
どちらもレイヴンにとっては大切な記念日だが、アリシアが覚えていなくても仕方がない。元々アリシアはそういった記念日に拘りがないのだ。
残念ながら初めてデートをした記念日は週の半ばだったが、初めて愛を告げられた記念日は週末の前日にある。
この日は1日休みを取ってデートに行く。そしてまた週末を寝室に籠って過ごすのだ。
最近辛いことの多いアリシアの為に、レオナルドも協力してくれる。
「去年王都の街でデートしてからもうすぐ1年だよ。今年も街へ行こう。ね?」
「あれからもう1年も経つのですか……」
アリシアが呆然としたように呟いた。
その気持ちはレイヴンにもわかる。色々なことがあり過ぎて、この1年はあっという間に過ぎてしまった。
「あの日のデートが楽しかったから度々行きたいって思ってたのに、結局1年経ってしまった。今度のデートも思いっきり楽しもうね」
レイヴンは今でもアリシアが孤児院や病院へ慰問する時は付き添っている。
だけど慰問の時は護衛騎士も多く連れている為、自由に街を歩くことはできない。街へ行く時はまた身分を隠してお忍びで行くのだ。
「それじゃあまたお兄様が洋服を用意して下さるのかしら」
アリシアが楽しそうに笑う。
最近は笑っていても、ふとした時に辛そうな表情を見せていた。
このデートが少しでも気晴らしになれば良いと思う。
「そうだね。レオに頼んでおいた。レオもアリシアの洋服を選ぶのは楽しいみたいだよ?」
レオナルドが協力的なのは、王都へ行くのがお忍びだから、というのもあった。
服装や髪形を変えて身分を隠して行くので、歌劇の時のように挨拶に現れる貴族がいない。
アリシアを批判する貴族たちも、レイヴンに纏わりつく令嬢もいないのだ。
「素朴なワンピースのアリシアも可愛かったなぁ」
レイヴンが去年のアリシアを思い出して幸せそうに笑う。
アリシアも1年前を思い出すと自然に微笑んでいた。
レイヴンはアリシアが可愛かったと言うが、ラフな格好をしたレイヴンも格好良かったと思う。白いシャツと黒いスキニーパンツがレイヴンのスタイルの良さを引き立てていた。
あれからレイヴンは剣を鍛錬する時間を増やして鍛えているので更に筋肉がついて体が引き締まっている。きっと街に出れば女性の視線を集めるだろう。
アリシアは去年レイヴンに視線を向けていた女性たちを思い出すと少しだけモヤモヤした気持ちになってレイヴンに抱き着いた。
レイヴンは何も言わずに抱き締め返してくれる。
本当はアリシアにもわかっていた。
レイヴンもレオナルドも、嫌なことが続いているアリシアを気遣ってくれているのだ。
哀しい顔は見せない様にしていたつもりなのに、見せてしまっていたのだろうか。
アリシアがどれだけ繕っていても、2人は本当の気持ちを見抜いてしまう。
これからはもっと気をつけなければ、と心の中で呟いた。
「デート…ですか?」
「そうだよ。もうすぐ1周年だからね」
アリシアが首を傾げる。
レイヴンはそんなアリシアの様子を気にすることなく笑顔でアリシアを抱き寄せた。
もう少しで初めてアリシアが「愛している」と言ってくれてから1年になる。
その少し後には初めて王都の街でデートをした。
どちらもレイヴンにとっては大切な記念日だが、アリシアが覚えていなくても仕方がない。元々アリシアはそういった記念日に拘りがないのだ。
残念ながら初めてデートをした記念日は週の半ばだったが、初めて愛を告げられた記念日は週末の前日にある。
この日は1日休みを取ってデートに行く。そしてまた週末を寝室に籠って過ごすのだ。
最近辛いことの多いアリシアの為に、レオナルドも協力してくれる。
「去年王都の街でデートしてからもうすぐ1年だよ。今年も街へ行こう。ね?」
「あれからもう1年も経つのですか……」
アリシアが呆然としたように呟いた。
その気持ちはレイヴンにもわかる。色々なことがあり過ぎて、この1年はあっという間に過ぎてしまった。
「あの日のデートが楽しかったから度々行きたいって思ってたのに、結局1年経ってしまった。今度のデートも思いっきり楽しもうね」
レイヴンは今でもアリシアが孤児院や病院へ慰問する時は付き添っている。
だけど慰問の時は護衛騎士も多く連れている為、自由に街を歩くことはできない。街へ行く時はまた身分を隠してお忍びで行くのだ。
「それじゃあまたお兄様が洋服を用意して下さるのかしら」
アリシアが楽しそうに笑う。
最近は笑っていても、ふとした時に辛そうな表情を見せていた。
このデートが少しでも気晴らしになれば良いと思う。
「そうだね。レオに頼んでおいた。レオもアリシアの洋服を選ぶのは楽しいみたいだよ?」
レオナルドが協力的なのは、王都へ行くのがお忍びだから、というのもあった。
服装や髪形を変えて身分を隠して行くので、歌劇の時のように挨拶に現れる貴族がいない。
アリシアを批判する貴族たちも、レイヴンに纏わりつく令嬢もいないのだ。
「素朴なワンピースのアリシアも可愛かったなぁ」
レイヴンが去年のアリシアを思い出して幸せそうに笑う。
アリシアも1年前を思い出すと自然に微笑んでいた。
レイヴンはアリシアが可愛かったと言うが、ラフな格好をしたレイヴンも格好良かったと思う。白いシャツと黒いスキニーパンツがレイヴンのスタイルの良さを引き立てていた。
あれからレイヴンは剣を鍛錬する時間を増やして鍛えているので更に筋肉がついて体が引き締まっている。きっと街に出れば女性の視線を集めるだろう。
アリシアは去年レイヴンに視線を向けていた女性たちを思い出すと少しだけモヤモヤした気持ちになってレイヴンに抱き着いた。
レイヴンは何も言わずに抱き締め返してくれる。
本当はアリシアにもわかっていた。
レイヴンもレオナルドも、嫌なことが続いているアリシアを気遣ってくれているのだ。
哀しい顔は見せない様にしていたつもりなのに、見せてしまっていたのだろうか。
アリシアがどれだけ繕っていても、2人は本当の気持ちを見抜いてしまう。
これからはもっと気をつけなければ、と心の中で呟いた。
0
お気に入りに追加
1,726
あなたにおすすめの小説
フィックスド辺境伯家の秘密(代表作:元夫の隠し子は、私が立派に育ててみせます‼︎)
星 佑紀
恋愛
『元夫の隠し子は、私が立派に育ててみせます‼︎』
「オリビア、ごめんなさいね。貴女の夫、奪っちゃった♡」
トルネード王国辺境伯家へと嫁いだオリビア(十八歳)は、結婚初日から夫と愛人との情事を目撃してしまう。本当は離縁したいが、実家が貧乏な為出来ない状況が三年程続き、その間、夫と愛人との間には長男(隠し子)が誕生した。愛人と夫は、オリビアのことを使用人のように扱い、長男の面倒も全てオリビアに押し付けた。そしてある日、オリビアの夫は、謎の不審死を遂げる事になる。
夫の葬式終了後、辺境伯家の権限は全て夫の愛人が掌握し、財産分与もないままオリビアと長男は、辺境伯家から追い出されることになったのだが……⁉︎
ダンマス(異端者)
AN@RCHY
ファンタジー
幼女女神に召喚で呼び出されたシュウ。
元の世界に戻れないことを知って自由気ままに過ごすことを決めた。
人の作ったレールなんかのってやらねえぞ!
地球での痕跡をすべて消されて、幼女女神に召喚された風間修。そこで突然、ダンジョンマスターになって他のダンジョンマスターたちと競えと言われた。
戻りたくても戻る事の出来ない現実を受け入れ、異世界へ旅立つ。
始めこそ異世界だとワクワクしていたが、すぐに碇石からズレおかしなことを始めた。
小説になろうで『AN@CHY』名義で投稿している、同タイトルをアルファポリスにも投稿させていただきます。
向こうの小説を多少修正して投稿しています。
修正をかけながらなので更新ペースは不明です。
ワガママ異世界旅(仮)
ダイスケイマイチ
ファンタジー
異世界にいく事になった。プウタロウの佐藤大輔(さとうおおすけ)の話です。異世界をワガママに旅する。話です。誤字多々ありますが温かく読んで貰えると助かります。
【本編完結】若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
はづも
恋愛
本編完結済み。番外編がたまに投稿されたりされなかったりします。
伯爵家に生まれたカレン・アーネストは、20歳のとき、幼馴染でもある若き公爵、ジョンズワート・デュライトの妻となった。
しかし、ジョンズワートはカレンを愛しているわけではない。
当時12歳だったカレンの額に傷を負わせた彼は、その責任を取るためにカレンと結婚したのである。
……本当に好きな人を、諦めてまで。
幼い頃からずっと好きだった彼のために、早く身を引かなければ。
そう思っていたのに、初夜の一度でカレンは懐妊。
このままでは、ジョンズワートが一生自分に縛られてしまう。
夫を想うが故に、カレンは妊娠したことを隠して姿を消した。
愛する人を縛りたくないヒロインと、死亡説が流れても好きな人を諦めることができないヒーローの、両片想い・幼馴染・すれ違い・ハッピーエンドなお話です。
どうぞ二人の愛を貫いてください。悪役令嬢の私は一抜けしますね。
kana
恋愛
私の目の前でブルブルと震えている、愛らく庇護欲をそそる令嬢の名前を呼んだ瞬間、頭の中でパチパチと火花が散ったかと思えば、突然前世の記憶が流れ込んできた。
前世で読んだ小説の登場人物に転生しちゃっていることに気付いたメイジェーン。
やばい!やばい!やばい!
確かに私の婚約者である王太子と親しすぎる男爵令嬢に物申したところで問題にはならないだろう。
だが!小説の中で悪役令嬢である私はここのままで行くと断罪されてしまう。
前世の記憶を思い出したことで冷静になると、私の努力も認めない、見向きもしない、笑顔も見せない、そして不貞を犯す⋯⋯そんな婚約者なら要らないよね!
うんうん!
要らない!要らない!
さっさと婚約解消して2人を応援するよ!
だから私に遠慮なく愛を貫いてくださいね。
※気を付けているのですが誤字脱字が多いです。長い目で見守ってください。
魔がさした? 私も魔をさしますのでよろしく。
ユユ
恋愛
幼い頃から築いてきた彼との関係は
愛だと思っていた。
何度も“好き”と言われ
次第に心を寄せるようになった。
だけど 彼の浮気を知ってしまった。
私の頭の中にあった愛の城は
完全に崩壊した。
彼の口にする“愛”は偽物だった。
* 作り話です
* 短編で終わらせたいです
* 暇つぶしにどうぞ
悪役令嬢の涙
拓海のり
恋愛
公爵令嬢グレイスは婚約者である王太子エドマンドに卒業パーティで婚約破棄される。王子の側には、癒しの魔法を使え聖女ではないかと噂される子爵家に引き取られたメアリ―がいた。13000字の短編です。他サイトにも投稿します。
【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?
つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。
彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。
次の婚約者は恋人であるアリス。
アリスはキャサリンの義妹。
愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。
同じ高位貴族。
少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。
八番目の教育係も辞めていく。
王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。
だが、エドワードは知らなかった事がある。
彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。
他サイトにも公開中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる