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第2部 4章
86 休暇を終えて
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年末年始休暇が終わった。貴族たちが王都へ戻ってくる。
最も王宮で職務に就いている者や学園に通っている者以外は必ずしも王都にいる必要がない。そのまま領地に留まる者も多く、王都の貴族街はまだまだ閑散としている。
レオナルドは王宮で職務に就いている、「戻らなければならない者」だ。婚約者のディアナも学園に通っている為、2日前には王都へ戻っていた。
いつもは休暇が終わる前日に戻っていたのに、予定を早めたのはディアナの為だ。
登校する前に1日くらい自宅で体を休めた方が良い。伯爵家にも前もってそう伝えているので、伯爵夫妻も同じ日に王都へ戻っている。
そうなるとレオナルドにも1日自由時間ができた。
本当はアリシアの元へ駆けつけたい。1人で休暇を過ごすアリシアが、これまで心配の種だったのだ。
だけど今年は違う。
今年こそはレイヴンと一緒に幸せな休暇を過ごしているはずだ。
そう自分に言い聞かせて、レオナルドは休暇があけるのをまった。
そして仕事始めのこの日も、例年であれば出仕前にアリシアの様子を見に行くところを堪えたのだから誉めて欲しい。
実際、レイヴンの執務室を訪れたレオナルドは、己の考えが間違っていなかったことを知った。
これまでであれば暗く陰鬱な顔でレオナルドを出迎えていたレイヴンが、幸せそうに顔を輝かせていたのだ。生気に満ちたその顔は艶々としている。
「休暇を楽しまれたようですね……?」
つい言ってしまったのが間違いだったと、レオナルドはすぐに後悔することになった。
レイヴンはアリシアが如何に可愛いのかを陶酔した表情で語りだす。
アリシアは急に可愛くなったわけではない。
生まれた時から可愛いのだとつい言いそうになるのを、レオナルドはぐっと堪えていた。
「お兄様!」
「アリシア!会いたかったよ」
結局レオナルドがアリシアを訪ねたのは午後の休憩時間だった。昼の時間も幸せそうにアリシアの元へ帰っていくレイヴンに遠慮したのだ。
ここぞとばかりにぎゅむっとアリシアを抱き締める。
アリシアも嬉しそうに抱き締め返してくれるので、レイヴンの顔が恐ろしいことになっていた。
だけどそんなことを気にするレオナルドではない。
「元気そうで良かった。ごめんね、長い間会いに来れなくて」
それは領地から戻ったレオナルドが毎年口にすることだ。
アリシアが1人で休暇を過ごしていると知っているのに、領地へ戻るのを取りやめることはできない。
アリシアがどれ程「1人過ごす方が気楽でのんびりできた」と言っても、レオナルドはいつも気に病んでいたのだ。
「大丈夫よ、お兄様。私もこの休暇はとても…楽しかったの」
そう言って頬を染めるアリシアのドレスは、今日も胸元にたくさんのレースが付けられている。
その意味がわからないレオナルドではない。ふと部屋の奥へめを向けると、戸棚の上に積まれた本が2つの山になっていた。
「本は全部読めたかな?」
「それが……、半分ほどしか読めなかったの」
アリシアはますます赤くなり、俯いてしまう。
休暇が終わるまでに全部読むのは無理だと悟ったアリシアだったが、少しでも読み進めようとはしていたのだ。それなのにレイヴンが、隣から髪を撫でたり口づけたりして気を逸らしてしまう。
抗議をしても笑いながら、「アリシアは本を読んでいて良いよ」と言って止めてくれず、そうしている内にアリシアもその気になって本を閉じてしまうのだ。
「……そうか。本が必要なくなったなら、兄様も嬉しいよ」
レオナルドはにこにこしていて少しも怒っていない。
それなのにアリシアはいたたまれない気持ちになった。
最も王宮で職務に就いている者や学園に通っている者以外は必ずしも王都にいる必要がない。そのまま領地に留まる者も多く、王都の貴族街はまだまだ閑散としている。
レオナルドは王宮で職務に就いている、「戻らなければならない者」だ。婚約者のディアナも学園に通っている為、2日前には王都へ戻っていた。
いつもは休暇が終わる前日に戻っていたのに、予定を早めたのはディアナの為だ。
登校する前に1日くらい自宅で体を休めた方が良い。伯爵家にも前もってそう伝えているので、伯爵夫妻も同じ日に王都へ戻っている。
そうなるとレオナルドにも1日自由時間ができた。
本当はアリシアの元へ駆けつけたい。1人で休暇を過ごすアリシアが、これまで心配の種だったのだ。
だけど今年は違う。
今年こそはレイヴンと一緒に幸せな休暇を過ごしているはずだ。
そう自分に言い聞かせて、レオナルドは休暇があけるのをまった。
そして仕事始めのこの日も、例年であれば出仕前にアリシアの様子を見に行くところを堪えたのだから誉めて欲しい。
実際、レイヴンの執務室を訪れたレオナルドは、己の考えが間違っていなかったことを知った。
これまでであれば暗く陰鬱な顔でレオナルドを出迎えていたレイヴンが、幸せそうに顔を輝かせていたのだ。生気に満ちたその顔は艶々としている。
「休暇を楽しまれたようですね……?」
つい言ってしまったのが間違いだったと、レオナルドはすぐに後悔することになった。
レイヴンはアリシアが如何に可愛いのかを陶酔した表情で語りだす。
アリシアは急に可愛くなったわけではない。
生まれた時から可愛いのだとつい言いそうになるのを、レオナルドはぐっと堪えていた。
「お兄様!」
「アリシア!会いたかったよ」
結局レオナルドがアリシアを訪ねたのは午後の休憩時間だった。昼の時間も幸せそうにアリシアの元へ帰っていくレイヴンに遠慮したのだ。
ここぞとばかりにぎゅむっとアリシアを抱き締める。
アリシアも嬉しそうに抱き締め返してくれるので、レイヴンの顔が恐ろしいことになっていた。
だけどそんなことを気にするレオナルドではない。
「元気そうで良かった。ごめんね、長い間会いに来れなくて」
それは領地から戻ったレオナルドが毎年口にすることだ。
アリシアが1人で休暇を過ごしていると知っているのに、領地へ戻るのを取りやめることはできない。
アリシアがどれ程「1人過ごす方が気楽でのんびりできた」と言っても、レオナルドはいつも気に病んでいたのだ。
「大丈夫よ、お兄様。私もこの休暇はとても…楽しかったの」
そう言って頬を染めるアリシアのドレスは、今日も胸元にたくさんのレースが付けられている。
その意味がわからないレオナルドではない。ふと部屋の奥へめを向けると、戸棚の上に積まれた本が2つの山になっていた。
「本は全部読めたかな?」
「それが……、半分ほどしか読めなかったの」
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抗議をしても笑いながら、「アリシアは本を読んでいて良いよ」と言って止めてくれず、そうしている内にアリシアもその気になって本を閉じてしまうのだ。
「……そうか。本が必要なくなったなら、兄様も嬉しいよ」
レオナルドはにこにこしていて少しも怒っていない。
それなのにアリシアはいたたまれない気持ちになった。
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