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第2部 4章

81 正妃と側妃①

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「大丈夫?疲れたんじゃない?」

 アリシアは耳元で聞こえる声に微笑んだ。
 宴が終わり、2人はリトマインの部屋に戻ってきている。この後誰かが訪ねて来るとは思ってないが、こちらの方が完全に邪魔が入るのを防ぐことができる。
 ここはアリシアが許可した者しか入ることができない完全な私室プライベート・ルームだ。
 それは使用人たちにも徹底されていて、掃除などでも限られた人物しか入れないようにしていた。
 アリシアはここへ戻ってきてからレイヴンが広げた足の間に座り、後ろから抱き締められている。

 宴は思っていたより楽しめた。そして色んなことを学ぶことができた。
 やはり経験しておいて良かったと思う。




 昼餐の後、一同は場所を移した。
 いつもの応接間かと思ったが、大応接間とでもいうのだろうか。いつもの3倍はありそうな大きな部屋へ案内された。いつもの部屋も十分広いので、とんでもない広さということである。

 いつもと違って4人の側妃とその子どもたちもいるので、こちらの方が広々使えて良いのだろう。
 ただ、それだけではない、マルグリットの気持ちもわかるような気がする。

 いつもの応接間は家族だけの私室プライベート・ルームだ。
 夫の妻子とはいえ、側妃たちやその子どもたちを入れたくないのだろう。

 大応接間には沢山のテーブルとソファがあり、テーブルの上には様々なお菓子が並んでいた。
 この部屋では席順の決まりがなく、食べたいお菓子があるテーブルに座れば良いらしい。

 アリシアは並べられたお菓子の数や種類を見て感嘆の息を吐いた。
 王宮のシェフが作ったものもあれば、王都の有名菓子店の焼き菓子もある。
 王都の店は、王都から貴族が消える時期に合わせて休暇に入るので、それまでに日持ちのする菓子を作らせたのだ。
 どこの店でも王家御用達の看板が欲しいので、王宮からの注文となればそれが年の瀬でも断ることはないだろう。それでもこれだけの品数を作るのは大変だったはずだ。
 
 昼餐では年の初めに食べる特別なメニューが最高級の食材を使って饗されていた。
 そこにこの数も種類も豊富なお茶菓子。
 今年1年の食事や甘味、茶葉までも、王妃が面倒を見るという意思表示である。

 側妃たちは席順の決まりが無い為、競うように国王の傍へ行く。
 その側妃たちが着ているドレスはマルグリットが予め贈っていたもので、それぞれの個性に合わせた色やデザインが選ばれていた。
 唯一共通しているのは、ドレスのどこか一か所に青色が使われていることだ。
 国王はレイヴンと同じ金髪に青色の目をしているので、国王の瞳の色ということである。
 もちろんマルグリットのドレスにも一か所だけ青色が使われていた。

 これは今年1年の衣類の面倒を見るという意思表示だけではなく、「国王の妻」として認める、ということでもあるのだろう。
 アリシアもいずれ宴を催すことになれば、これらのやり方を踏襲しなければならない。

 因みにアリシアが宴で着ていたのは、モスグリーンを基調としたドレスである。
 少し地味すぎるような気もしたが、今日の主役は王妃と側妃たちだ。
 それにいつものようにレイヴンの瞳の色に合わせてしまうと、王妃たちを差し置いて国王の瞳の色に合わせたようになってしまう。今日だけは青色を使うわけにはいかなかった。

 落ち着いた色のドレスだったが、レイヴンがつけた赤い跡を隠そうと襟元にレースを沢山使ったおかげで若々しい華やかさが演出されていたのは怪我の功名といえるだろうか。




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