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第2部 4章

78 側妃 ユリア①

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 レイヴンにエスコートされて正殿へ向かう。
 その間もレイヴンは、「僕たちの参加は必須じゃないから、嫌になったらすぐに帰ればいいからね」と言っていた。
 これは宴に出席すると決めた時からレイヴンが言い続けていることで、アリシアが正殿に顔を出し始めた頃のことを覚えているレイヴンは、アリシアが無理をしているのではないかと案じているのだ。
 だけどこうしてそわそわしているところを見ると、レイヴンの方が恐れているように見える。

「大丈夫ですわ、レイヴン様。私たちが出席すると伝えた時、マルグリット様も喜んでくださったでしょう?」

 アリシアは出席をマルグリットに直接伝えていた。
 家族の集まりではあるが、正式な儀式でもある。食事の準備もあるので主催者の許可なく勝手に参加するわけにはいかない。
 ただ独立したレイヴンが宴に参加する義務がないのは本当で、去年までは昼餐には参加せずにその後の歓談の時間だけ参加していたらしい。

 レイヴンは当初、今年も昼餐後に顔を出そうと言っていた。
 それを拒否したのはアリシアだ。
 初めて参加するのに途中からなんて心証が悪すぎる。

 何度も「本当に嫌になったらすぐに帰れば良いからね」と念を押すレイヴンを、「大丈夫ですわ」と宥めている内に正殿の食堂に着いていた。


 食堂の扉が開かれると一斉に視線が集まった。
 扉の外にまで話し声が聞こえる程賑やかだったのに、会話が止まってシンとしている。
 軽く見渡すと、国王と王妃以外の全員が既に集まっているようだ。

「お義姉様!」

 口を開きかけたレイヴンが何か言う前に、カナリーとアイビスが席を立って傍までやって来た。すぐ後ろにジェイとノティスが続いている。
 2人はドレスを軽く摘まむと恭しくカテーシーをした。

「お兄様、お義姉様。今年もよろしくお願い致します」

「今年もよろしくお願い致します」

 新年の挨拶だ。
 それを見ていた側妃の子どもたちがハッとしたように席を立ち、ジェイとノティスの後ろに並ぶ。国王の子どもたちにも序列があり、その筆頭がレイヴンである。

異母兄上あにうえ、義姉上。今年もよろしくお願い致します」
「今年もよろしくお願い致します」

 挨拶を受けているとムズムズするような感覚に囚われる。
 そもそも「今年もよろしく」と言われても、これまでよろしくしたことなどないのだ。これまでは舞踏会などで会った時に挨拶を受ける程度の付き合いである。
 それを思えばこの挨拶も形式的なものにすぎない。

 弟妹たちの挨拶を受けた後は、こちらが側妃たちへ挨拶に行く番である。
 宴では通常の会食と席順が違うらしく、大きな長テーブルの短辺のところに国王と王妃が並んで座るようにテーブルセットがされていた。
 そこから側妃が嫁いだ順に左右に並び、側妃の隣にレイヴンとアリシアが向かい合って座る。
 アリシアの隣はカナリーで、カナリーの向かいにジェイ、その隣にアイビスとノティスが向かい合って座るようになっていた。



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