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第2部 4章
66 香水作り①
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次の日は街へ視察に行くことになっていた。
2人とも一度街へ出ているが、その時は別の目的があったので街中の様子を見たとは言えない。主要な街の様子を見るのも領主として大切な役目である。
2人は今、街へ向かう馬車の中だ。
「先日はあまり街中を見られませんでしたが、活気のある良い街だと思いました。今日も楽しみですわ」
「そうだね。僕も久しぶりだから楽しみだよ」
アリシアが楽しそうに話し掛けると、レイヴンも嬉しそうに顔を綻ばせた。
以前王都の街へ遊びに行ったお忍びのデートと違って好きに散策することはできない。だけどレイヴンは一緒に出掛けられることを喜んでくれている。
レイヴンの手が伸びてきてアリシアの肩を抱き寄せる。
アリシアは素直にレイヴンの胸に頬を寄せた。
昨日レイヴンは、アリシアの様子がおかしいと気がついていた。
「なにかあった?」と訊かれたアリシアは、「少し疲れたようですわ」と微笑んで答えた。
それでレイヴンが納得したとは思っていない。
だけどどんなことでもアリシアが一度答えてしまえば、レイヴンがそれ以上何も言えなくなるとわかっていた。
昨日子どもたちと過ごした時間は本当に楽しかった。
だけどもし真実を話せば、彼女に悪気がなかったとしてもレイヴンはきっと怒るだろう。
そうしたら楽しかった思い出は酷いものに変わってしまう。それだけは避けたい。
だからアリシアはこれからも話すつもりはなかった。
それにアリシアはいわゆる土着信仰を信じていない。そこに伝わる伝説や伝承を否定するつもりはないが、そのほとんどは迷信だと思っている。
それなのになぜあの葉が捨てられないのか、アリシアにもわからない。
だからもう、考えるのは止めたのだ。
今、アリシアが考えているのは、街のことだけである。
「どんなお店があるのか楽しみですわ」
アリシアが笑うとレイヴンも笑う。
街で散財しても、「贅沢な王太子妃」と揶揄されない方法はある。
それはレイヴンが買ってアリシアへ贈ることだ。
それに限度はあれど、街で散財するのは領主としての役割でもあった。領内の経済を活性化させる為には、金を持つ者が使わなければならない。
それに街の名産品をレイヴンやアリシアが社交界で披露すれば貴族たちがこぞって手に入れようとする。
王妃や王太子妃は社交界の流行を作る存在なのだ。
アリシアは既に昨日見た羊の毛で織られたショールをいくつか注文していた。アシュリーから贈られた反物で仕立てたドレスと合わせれば社交界で話題になるだろう。
そしてアリシアは領民の役に立つことができる。
ショールを受け取るのは王都に戻ってからになるけれど、アリシアはその日を今から楽しみにしていた。
それとは別にアリシアには街で行きたい店があった。
晩餐の日にアリシアのところへ話に来た青年が働く店である。
2人とも一度街へ出ているが、その時は別の目的があったので街中の様子を見たとは言えない。主要な街の様子を見るのも領主として大切な役目である。
2人は今、街へ向かう馬車の中だ。
「先日はあまり街中を見られませんでしたが、活気のある良い街だと思いました。今日も楽しみですわ」
「そうだね。僕も久しぶりだから楽しみだよ」
アリシアが楽しそうに話し掛けると、レイヴンも嬉しそうに顔を綻ばせた。
以前王都の街へ遊びに行ったお忍びのデートと違って好きに散策することはできない。だけどレイヴンは一緒に出掛けられることを喜んでくれている。
レイヴンの手が伸びてきてアリシアの肩を抱き寄せる。
アリシアは素直にレイヴンの胸に頬を寄せた。
昨日レイヴンは、アリシアの様子がおかしいと気がついていた。
「なにかあった?」と訊かれたアリシアは、「少し疲れたようですわ」と微笑んで答えた。
それでレイヴンが納得したとは思っていない。
だけどどんなことでもアリシアが一度答えてしまえば、レイヴンがそれ以上何も言えなくなるとわかっていた。
昨日子どもたちと過ごした時間は本当に楽しかった。
だけどもし真実を話せば、彼女に悪気がなかったとしてもレイヴンはきっと怒るだろう。
そうしたら楽しかった思い出は酷いものに変わってしまう。それだけは避けたい。
だからアリシアはこれからも話すつもりはなかった。
それにアリシアはいわゆる土着信仰を信じていない。そこに伝わる伝説や伝承を否定するつもりはないが、そのほとんどは迷信だと思っている。
それなのになぜあの葉が捨てられないのか、アリシアにもわからない。
だからもう、考えるのは止めたのだ。
今、アリシアが考えているのは、街のことだけである。
「どんなお店があるのか楽しみですわ」
アリシアが笑うとレイヴンも笑う。
街で散財しても、「贅沢な王太子妃」と揶揄されない方法はある。
それはレイヴンが買ってアリシアへ贈ることだ。
それに限度はあれど、街で散財するのは領主としての役割でもあった。領内の経済を活性化させる為には、金を持つ者が使わなければならない。
それに街の名産品をレイヴンやアリシアが社交界で披露すれば貴族たちがこぞって手に入れようとする。
王妃や王太子妃は社交界の流行を作る存在なのだ。
アリシアは既に昨日見た羊の毛で織られたショールをいくつか注文していた。アシュリーから贈られた反物で仕立てたドレスと合わせれば社交界で話題になるだろう。
そしてアリシアは領民の役に立つことができる。
ショールを受け取るのは王都に戻ってからになるけれど、アリシアはその日を今から楽しみにしていた。
それとは別にアリシアには街で行きたい店があった。
晩餐の日にアリシアのところへ話に来た青年が働く店である。
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