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第2部 4章
21 出発準備
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視察へ向かう日が近づくと、周囲が慌ただしくなってきた。
アリシアはエレノアを中心として視察へ同行させる使用人を選び、それと同時に不在中の王太子宮の管理を任せる者を選んだ。
王太子宮の管理は女主人であるアリシアの管轄となる。例えアリシアが不在であっても問題が起こらないよう信頼できる者を責任者として選ばなくてはならない。
そこでアリシアは、ケイトという年長の侍女を不在時の責任者として選んだ。
ケイトはエレノアのようにレイヴンとアリシアの婚姻に合わせて雇われた侍女ではなく。レイヴンが幼少の頃から仕えている侍女である。
レイヴン付きというわけではないが、レイヴンの好みを良く知っているので普段はレイヴンの部屋の掃除など、身の回りのことをしている。
アリシアとはこれまであまり接点がなかったけれど、王太子宮のことを良く知っているのは間違いない。そしてレイヴンの為にしっかり宮を守ってくれるのも間違いなかった。
アリシアがケイトを呼び出し、「留守中の管理を任せたい」と伝えると、ケイトは驚きながらもその顔には喜びと長年勤めてきた誇りが浮かんでいた。それからは留守中の業務の引継ぎを進めている。
また、アリシアは王領までの旅装と領地を見回る時のドレスや装飾品をいくつか購入した。この時はマルグリットにも同席を頼んだ。その数日前に王太子宮を訪れていたオレリアに、同じ経験をしているマルグリットから助言を受けるべきだと言われたからだ。
マルグリットも初めて義娘に頼られたと嬉しそうな顔を見せ、熱心に選んでくれた。
王領は王都に比べて田舎である。皆が裕福なわけでもない。
そんな中で社交界で身につけているような煌びやかなドレスや装飾品を身につけていれば反感を買うだけで親しみを持ってもらうことはできない。
だからといって領民に阿り過ぎてもいけない。
アリシアは王太子妃だ。
領民にとって王太子妃とは、友人ではなく女主人である。
領民に反感を買うことなく見下されることもなく、親しみを感じてもらえる服装というのは難しい。
アリシアはマルグリットの助言を受けながらひとつずつ慎重に選んだ。
マルグリットは、「私も初めての時はお義母様と一緒に選んだのよ」と朗らかに笑っていた。
出発する前日にはレオナルドが訪ねてきた。
レオナルドは王宮を留守にするレイヴンに代わって執務を行う立場にある。視察に同行することはできない。
この時にはエレノアたちの手で荷造りは終わっていたし、アリシアの執務も可能な限り終わらせていた。
アリシアはこの日を出発するまでに疲れが残らないよう体を休める日に当てていた。
「すっかり準備は整ったようだね」
向かい合って座るレオナルドは柔和は表情をしていた。
こうしてレオナルドとお茶を飲むこともしばらくはできなくなるのだ。
「ええ。王宮のことも、お父様とお母様のことも、よろしくお願い致します」
オレリアはあれから何度か王太子宮を訪れていた。そのオレリアを迎えに来るという名目でアダムも来ている。
自由な出入りを許可されたからといって無暗に権利をひけらかす人たちではない。
それなのに何度も訪れるのは、王都を離れるアリシアを心配しているからだ。レオナルドもここの所、毎日現れては部屋の様子を確認していく。
「そんなに心配しなくても大丈夫ですわ。私が王都を離れるのは半月だけで、警護の騎士は沢山いますし、レイヴン様も守って下さるもの」
「そうだね、殿下はアリシアを守ろうと必死で鍛錬をされているよ」
レオナルドが苦笑する。
レイヴンは心配し過ぎだと思っているが、こうして毎日様子を見に来る自分も同じようなものだとわかっているのだ。
それでもレオナルドは言わずにいられない。
「充分に気をつけて、アリシア。決して無茶なことはしないように。何かあっても兄様は助けにいけないんだから」
もう何度目かになるその言葉に、アリシアは嬉しそうに頷いた。
アリシアはエレノアを中心として視察へ同行させる使用人を選び、それと同時に不在中の王太子宮の管理を任せる者を選んだ。
王太子宮の管理は女主人であるアリシアの管轄となる。例えアリシアが不在であっても問題が起こらないよう信頼できる者を責任者として選ばなくてはならない。
そこでアリシアは、ケイトという年長の侍女を不在時の責任者として選んだ。
ケイトはエレノアのようにレイヴンとアリシアの婚姻に合わせて雇われた侍女ではなく。レイヴンが幼少の頃から仕えている侍女である。
レイヴン付きというわけではないが、レイヴンの好みを良く知っているので普段はレイヴンの部屋の掃除など、身の回りのことをしている。
アリシアとはこれまであまり接点がなかったけれど、王太子宮のことを良く知っているのは間違いない。そしてレイヴンの為にしっかり宮を守ってくれるのも間違いなかった。
アリシアがケイトを呼び出し、「留守中の管理を任せたい」と伝えると、ケイトは驚きながらもその顔には喜びと長年勤めてきた誇りが浮かんでいた。それからは留守中の業務の引継ぎを進めている。
また、アリシアは王領までの旅装と領地を見回る時のドレスや装飾品をいくつか購入した。この時はマルグリットにも同席を頼んだ。その数日前に王太子宮を訪れていたオレリアに、同じ経験をしているマルグリットから助言を受けるべきだと言われたからだ。
マルグリットも初めて義娘に頼られたと嬉しそうな顔を見せ、熱心に選んでくれた。
王領は王都に比べて田舎である。皆が裕福なわけでもない。
そんな中で社交界で身につけているような煌びやかなドレスや装飾品を身につけていれば反感を買うだけで親しみを持ってもらうことはできない。
だからといって領民に阿り過ぎてもいけない。
アリシアは王太子妃だ。
領民にとって王太子妃とは、友人ではなく女主人である。
領民に反感を買うことなく見下されることもなく、親しみを感じてもらえる服装というのは難しい。
アリシアはマルグリットの助言を受けながらひとつずつ慎重に選んだ。
マルグリットは、「私も初めての時はお義母様と一緒に選んだのよ」と朗らかに笑っていた。
出発する前日にはレオナルドが訪ねてきた。
レオナルドは王宮を留守にするレイヴンに代わって執務を行う立場にある。視察に同行することはできない。
この時にはエレノアたちの手で荷造りは終わっていたし、アリシアの執務も可能な限り終わらせていた。
アリシアはこの日を出発するまでに疲れが残らないよう体を休める日に当てていた。
「すっかり準備は整ったようだね」
向かい合って座るレオナルドは柔和は表情をしていた。
こうしてレオナルドとお茶を飲むこともしばらくはできなくなるのだ。
「ええ。王宮のことも、お父様とお母様のことも、よろしくお願い致します」
オレリアはあれから何度か王太子宮を訪れていた。そのオレリアを迎えに来るという名目でアダムも来ている。
自由な出入りを許可されたからといって無暗に権利をひけらかす人たちではない。
それなのに何度も訪れるのは、王都を離れるアリシアを心配しているからだ。レオナルドもここの所、毎日現れては部屋の様子を確認していく。
「そんなに心配しなくても大丈夫ですわ。私が王都を離れるのは半月だけで、警護の騎士は沢山いますし、レイヴン様も守って下さるもの」
「そうだね、殿下はアリシアを守ろうと必死で鍛錬をされているよ」
レオナルドが苦笑する。
レイヴンは心配し過ぎだと思っているが、こうして毎日様子を見に来る自分も同じようなものだとわかっているのだ。
それでもレオナルドは言わずにいられない。
「充分に気をつけて、アリシア。決して無茶なことはしないように。何かあっても兄様は助けにいけないんだから」
もう何度目かになるその言葉に、アリシアは嬉しそうに頷いた。
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