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第2部 4章
8 アリシアの希望②
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アリシアが同行するというのは、ただ王領へ向かう人数が1人増える、ということではない。
これは街へお忍びで出掛けるのとはわけが違うのだ。王領への視察はれっきとした公務である。
アリシアは王太子妃だ。
王太子妃のアリシアが同行するのだから、アリシアを世話する侍女や女中、使用人が数十人は追加される。付き従う使用人の数で威勢が示される為、この人数を減らすことはできない。
荷物はできる限り先に送ってしまうとしても、馬車を何台も連ねてつらつらと進むのだ。
馬車を守る護衛も、倍は必要になる。
身分を隠していないので王家の紋がついた馬車を使う。
途中で通過する町や村の付近ではレイヴンやアリシアを一目見ようとする人々が詰めかけてくるものだ。沿道に詰めかけた人々に馬車の中から優雅に笑って手を振るのも大切な仕事である。
ただ通過する道筋の人々に居場所を知られているということは、レイヴンやアリシアに害をなそうとする人たちにも居場所を知られているということである。
王領への間には森の中や人気の少ない山道を通ることもある。そんなところでは賊に襲われても助けを呼ぶことができない。
それは王家に恨みを持つ者かもしれないし、アリシアを亡き者にして縁者を次の王太子妃にと考えている者かもしれない。
どちらが狙われているにしても、沢山の兵に守られ多くの使用人に囲まれている王宮よりも、こうした旅の途中で襲われる可能性が高いのだ。
そんな奴らの企みを阻止する為にも精鋭を引き連れて行かなくてはならない。
また、目的地までの間には他家の領地を通過することになる。
今回の行き先には片道で3日掛かる為、2つの異なる家の領地で宿を取ることになっている。その宿の選別は既に終わっていて、もう従業員の身元調査を始めていた。
レイヴンが泊まるのだから高級宿であることは間違いないが、こういった宿にはなんとかしてレイヴンの目に留まろうという者が客として紛れ込んでいるものだ。そこにアリシアも加わるとなれば、2人が使う客室のあるフロアだけではなく、宿ごと借り切ってしまった方が良い。
ただ王族の都合で予約を取り消される者たちには別の宿を用意しなければならないだろう。
迎え入れる王領でも準備は始まっている。
王家は領地に其々王城を持っているが、普段は主がいない為使用人も城を維持するのに必要な人数しか雇っていない。
レイヴンやアリシアの身のまわりの世話をする者は王都から連れて行くが、下働きの者は近隣の村から臨時で雇い入れることになる。
今は集まった希望者たちの身元調査を進めているところだが、これも予定の倍は雇うことになるだろう。
これらのことをすべて理解したうえで、アリシアは「行きたい」と言ったのだ。
アダムは横目で息子を見た。
レオナルドがしっかり頷く。実際に宿の手配や身元調査などの指揮を執るのはレオナルドである。
「陛下の許可が下りれば直ちに妃殿下が同行できるよう手配し直します」
「…そうか」
アダムが低い声でそう言うと目を閉じた。
アダムとてアリシアに子がいないことが気にならないわけではないのだ。
これは街へお忍びで出掛けるのとはわけが違うのだ。王領への視察はれっきとした公務である。
アリシアは王太子妃だ。
王太子妃のアリシアが同行するのだから、アリシアを世話する侍女や女中、使用人が数十人は追加される。付き従う使用人の数で威勢が示される為、この人数を減らすことはできない。
荷物はできる限り先に送ってしまうとしても、馬車を何台も連ねてつらつらと進むのだ。
馬車を守る護衛も、倍は必要になる。
身分を隠していないので王家の紋がついた馬車を使う。
途中で通過する町や村の付近ではレイヴンやアリシアを一目見ようとする人々が詰めかけてくるものだ。沿道に詰めかけた人々に馬車の中から優雅に笑って手を振るのも大切な仕事である。
ただ通過する道筋の人々に居場所を知られているということは、レイヴンやアリシアに害をなそうとする人たちにも居場所を知られているということである。
王領への間には森の中や人気の少ない山道を通ることもある。そんなところでは賊に襲われても助けを呼ぶことができない。
それは王家に恨みを持つ者かもしれないし、アリシアを亡き者にして縁者を次の王太子妃にと考えている者かもしれない。
どちらが狙われているにしても、沢山の兵に守られ多くの使用人に囲まれている王宮よりも、こうした旅の途中で襲われる可能性が高いのだ。
そんな奴らの企みを阻止する為にも精鋭を引き連れて行かなくてはならない。
また、目的地までの間には他家の領地を通過することになる。
今回の行き先には片道で3日掛かる為、2つの異なる家の領地で宿を取ることになっている。その宿の選別は既に終わっていて、もう従業員の身元調査を始めていた。
レイヴンが泊まるのだから高級宿であることは間違いないが、こういった宿にはなんとかしてレイヴンの目に留まろうという者が客として紛れ込んでいるものだ。そこにアリシアも加わるとなれば、2人が使う客室のあるフロアだけではなく、宿ごと借り切ってしまった方が良い。
ただ王族の都合で予約を取り消される者たちには別の宿を用意しなければならないだろう。
迎え入れる王領でも準備は始まっている。
王家は領地に其々王城を持っているが、普段は主がいない為使用人も城を維持するのに必要な人数しか雇っていない。
レイヴンやアリシアの身のまわりの世話をする者は王都から連れて行くが、下働きの者は近隣の村から臨時で雇い入れることになる。
今は集まった希望者たちの身元調査を進めているところだが、これも予定の倍は雇うことになるだろう。
これらのことをすべて理解したうえで、アリシアは「行きたい」と言ったのだ。
アダムは横目で息子を見た。
レオナルドがしっかり頷く。実際に宿の手配や身元調査などの指揮を執るのはレオナルドである。
「陛下の許可が下りれば直ちに妃殿下が同行できるよう手配し直します」
「…そうか」
アダムが低い声でそう言うと目を閉じた。
アダムとてアリシアに子がいないことが気にならないわけではないのだ。
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