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第2部 4章
7 アリシアの希望①
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アダムに強い眼光で見据えられてレイヴンは息を飲んだ。
アリシアの父としてではなく、宰相としての視線である。
視察に妃を同行してはいけないという決まりはない。
これは確かなことである。
だけどこれまで妃を同行した王太子はいない。
これもまた事実だった。
前例のないことは受け入れられにくい。
それが王族のすることであれば尚更、周りへの影響も強く出るので皆嫌な顔をする。
実際には誰が反対していようとも国王が許可を出せば実行することができるが、強硬に押し通せば禍根を残すことになる。
とはいえレイヴンに引くつもりはないのだから、納得してもらえるよう話をするしかないのだ。
レイヴンはアリシアのお茶会でアリシアやレオナルドに語った話と同じことを話した。
アリシアは王都の民には人気があるが、王領の民とは馴染みがないこと。
王領を中々訪れることができない歴代の妃が民に受け入れられるまでに苦労をしていること。
民衆からの支持を得ることでアリシアの立場を盤石のものにしたいこと。
また、アリシアが何か施策を行う際にも、その土地や民を直接見て知っていた方が良いだろうという思いを、「まだ子どもがいないから」ということには触れずに話した。
ただここにいるのは皆平均以上に聡い者たちである。
レイヴンが省いたことにも気がついているはずだ。
話を聞いていたアダムは低い唸り声を上げた。
アダムは勿論レイヴンが濁したことを正しく理解している。
他の貴族と違って国王は5人の側妃を持つことができ、レイヴンもこれから側妃を迎える可能性がある。
アリシアが輿入れしてからもう少しで丸3年が経つ。3年経っても子どもがいなければ皆嬉々として側妃を持つよう勧めるだろう。
まだレイヴンの子どもがいない今、誰が次の国母になるのかわからないのだ。
そんな状態では領民もアリシアを女主人として受け入れにくいというのは理解できる。
アダムはまた唸り声を上げた。
たった今、そういう話をしていたではないか。
婚姻により他家に入った者が領民に受け入れられる為には、何度も領地に赴き領民と交流を持たなければならない。
オレリアたちもライアンも、そうして領民と信頼関係を築くことで徐々に受け入れられたのだ。
アダムはぎろりとレオナルドを睨んだ。
今ここでこの話題を出したのは、これまでの話の効果を狙ったからに違いない。
レオナルドはあちら側についたのだ。
「妃殿下。妃殿下はどのようにお考えですか。同行したいとお思いなのでしょうか」
アリシアはアダムに視線を向けられ、自然と背筋を伸ばした。
父ではなく、宰相のアダムに問われている。
それでもアリシアの答えはひとつしかない。
「ええ。是非同行したいと思っています。届けられた書類で名前を見るだけでなく、実際にその土地を見て、そこに住む人々と交流を持つことは、大きな意味のあることだと思いますわ」
「妃殿下が同行することで周りに与える影響をきちんと理解されているのですね?」
「ええ、理解しています」
アリシアはしっかりと頷いた。
隣ではレイヴンも頷いている。握られた手にぎゅっと力がこめられた。
アリシアの父としてではなく、宰相としての視線である。
視察に妃を同行してはいけないという決まりはない。
これは確かなことである。
だけどこれまで妃を同行した王太子はいない。
これもまた事実だった。
前例のないことは受け入れられにくい。
それが王族のすることであれば尚更、周りへの影響も強く出るので皆嫌な顔をする。
実際には誰が反対していようとも国王が許可を出せば実行することができるが、強硬に押し通せば禍根を残すことになる。
とはいえレイヴンに引くつもりはないのだから、納得してもらえるよう話をするしかないのだ。
レイヴンはアリシアのお茶会でアリシアやレオナルドに語った話と同じことを話した。
アリシアは王都の民には人気があるが、王領の民とは馴染みがないこと。
王領を中々訪れることができない歴代の妃が民に受け入れられるまでに苦労をしていること。
民衆からの支持を得ることでアリシアの立場を盤石のものにしたいこと。
また、アリシアが何か施策を行う際にも、その土地や民を直接見て知っていた方が良いだろうという思いを、「まだ子どもがいないから」ということには触れずに話した。
ただここにいるのは皆平均以上に聡い者たちである。
レイヴンが省いたことにも気がついているはずだ。
話を聞いていたアダムは低い唸り声を上げた。
アダムは勿論レイヴンが濁したことを正しく理解している。
他の貴族と違って国王は5人の側妃を持つことができ、レイヴンもこれから側妃を迎える可能性がある。
アリシアが輿入れしてからもう少しで丸3年が経つ。3年経っても子どもがいなければ皆嬉々として側妃を持つよう勧めるだろう。
まだレイヴンの子どもがいない今、誰が次の国母になるのかわからないのだ。
そんな状態では領民もアリシアを女主人として受け入れにくいというのは理解できる。
アダムはまた唸り声を上げた。
たった今、そういう話をしていたではないか。
婚姻により他家に入った者が領民に受け入れられる為には、何度も領地に赴き領民と交流を持たなければならない。
オレリアたちもライアンも、そうして領民と信頼関係を築くことで徐々に受け入れられたのだ。
アダムはぎろりとレオナルドを睨んだ。
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それでもアリシアの答えはひとつしかない。
「ええ。是非同行したいと思っています。届けられた書類で名前を見るだけでなく、実際にその土地を見て、そこに住む人々と交流を持つことは、大きな意味のあることだと思いますわ」
「妃殿下が同行することで周りに与える影響をきちんと理解されているのですね?」
「ええ、理解しています」
アリシアはしっかりと頷いた。
隣ではレイヴンも頷いている。握られた手にぎゅっと力がこめられた。
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