上 下
358 / 697
番外編

艶本 4 (終)※

しおりを挟む
「ゆっくりで良いから、そのまま腰を落として」

 最初の痺れるような快感が過ぎると、アリシアはレイヴンの声に導かれるままゆっくりと腰を落とした。 

「あっ、あぁ…っ」

 腰を落とすと、熱い切っ先がゆっくりと隘路を押し広げて入ってくる。
 ずずっと内側を擦られて、体がビクビク跳ねる。
 アリシアはその度に甘い声が漏れるのを抑えることができない。

「良かった。痛くはないみたいだね」

 ホッとしたようなレイヴンの声に、アリシアはただコクコクと頷いた。
 レイヴンはアリシアの体が倒れてしまわない様に支えながら、ビクビク跳ねる背中を愛撫している。
 その感触もアリシアは快感として拾ってしまう。

「ん、んん…っ」
 
 高みに達する直前で引き戻された体は刺激を求めて疼いている。ゆっくりな刺激が物足りなくてもどかしい。
 だけど自分から受け入れていくのは初めての体験で、レイヴンに様子をじっくり見られているのも恥ずかしい。
 羞恥心を捨てきれないアリシアはできるだけ痴態を晒さない様にと、上がりそうになる声を精一杯堪えていた。

「あっ!ああっ?!」

 レイヴンのものを半分程飲み込んだ時、アリシアの腰が大きく跳ねた。
 強烈な快感が駆け巡る。
 ビクピクと体を揺らしていると何度もそこを擦られることになり、それがまた感じてしまう。
 アリシアが腰をくねらせると、「んっ」というレイヴンの抑えた声が聞こえた。


「…アリシアの好きなところだね」

「……っ、レイヴン、さまぁっ」
 
 強烈な快感をやり過ごしたアリシアは動けなくなっていた。
 動いたらまた、あの強烈な快感を感じてしまう。
 熱が籠った体は刺激を求めて疼いている。 
 だけど強すぎる快感は………怖い。

「アリシア…っ」

 泣きそうなアリシアをレイヴンは抱き締めた。
 レイヴンもゆっくり過ぎる刺激に体が疼いている。
 昂ぶりはまだ半分ほどしか入っていない。それでもアリシアの蜜壺にきゅうきゅうと締めつけられて弾けてしまいそうだ。
 奥まですぐに押し込みたい。
 それをアリシアを怯えさせない様に堪えている。

「少しだけ、動いて良い?」

 抱き締めたまま問い掛けるとアリシアが頷いた。
 アリシアもレイヴンの首に腕をまわしてぎゅっと抱き着いている。
 レイヴンはアリシアの背中を宥める様に撫でながら、ゆっくりと腰を動かした。

「あああーーっ!!」

 途端にアリシアの腰が跳ねる。
 レイヴンの先端がアリシアの悦いところを小刻みに擦っている。
 強烈な快感が体内を駆け抜けていく。

「あっ!ああっ!いやぁ…っ!!」

 アリシアが声を上げると、レイヴンの動きがピタッと止まった。
 急に放り出されたようでアリシアの腰がビクビクと跳ねる。いつの間にか生理的な涙がポロポロと流れていた。
 レイヴンが涙を拭いながら不安そうな顔をしている。

「本当に嫌?嫌ならやめる。いつもみたいにしよう」

 アリシアの目を見つめながらレイヴンが訊く。
「いや」と言ってしまったのは気持ち良すぎるせいだ。
 そんなことを言うのは恥ずかしい。だけどきっと、言わなければレイヴンは止めてしまう。そして二度と「いつもと違う体位を…」とは言わないだろう。

「……この体勢は、嫌じゃ、ありません。でもそこは…っ気持ち良すぎて、こ、怖い…です」

 アリシアの顔が赤く染まっていく。
 恥ずかしいのだろう、生理的ではない涙が零れてくる。

「アリシア…っ!」

 愛しさが込み上げてきてレイヴンはアリシアをぎゅっと抱き締めた。
 アリシアもレイヴンの肩に顔を埋めて泣いている。
 それもまた、可愛い。

「ここが嫌なら、最後まで挿入れよう」

「…え?」

 レイヴンはアリシアの答えを待たずに腰を浮かせた。
 同時に背中にまわしていた腕を腰へ移して押さえつけるように引き寄せる。
 それだけでずずっと奥へ入っていく。  

「あっ、あぁ…っ」

 アリシアは声を上げて反射的に腰を引こうとするが、レイヴンに抑えられているので逃げることができない。
 いつの間にかアリシアはレイヴンの上にぺたんと座るようになっていた。
 レイヴンに凭れかかるようにして息を弾ませる。

「全部、入ったよ…っ」

 レイヴンの息も弾んでいた。
 全部咥えこんだレイヴンのものがアリシアの中でビクビクと震えているのがわかる。
 いつもより深いところまでレイヴンのものが届いている。

 レイヴンがはぁっと大きく息を吐いた。
 レイヴンに凭れかかりながら体を震わせるアリシアを強く抱き締める。

「アリシアも僕の背中に腕をまわして…?」

 言われてアリシアもレイヴンの背中へ腕をまわす。
 レイヴンは嬉しそうに頬を緩ませた。

「これでぴったりくっついた。ぴったりくっついて抱きたかったんだ」

「え…?」

 確かに最近はアリシアもレイヴンの背中へ腕をまわすようになっていたけれど、いつもより近くにくっついている気がする。
 レイヴンは恥ずかし気に笑うと小刻みに腰を揺すり出した。

「あぁ…っ」

 いつもより深い場所が擦られて体が震えてくる。
 レイヴンの手が頬に触れて見上げると、唇を塞がれた。
 アリシアの声がレイヴンに飲み込まれる。

 繋がりながら口づけるのは初めてだった。
 最近まで繋がる頃にはアリシアが口元を手で覆っていたから仕方がない。  

「ふぅ…っ、んぅ…っ」

 飲み込み切れない声が漏れる頃にはレイヴンの動きが激しくなっていた。
 僅かに空いた隙間から乳房が揉みしだかれる。
 
「ん!んん…っ!はぁ…っ」

 いつの間にかアリシアも大きく腰を振っていた。
 無意識に悦いところへ当たるように腰を動かしている。

「うぁ、あ、ああーーーっ!!!」

 大きく仰け反り、アリシアが果てた。
 きゅううっと絞られ、レイヴンも昇り詰める。

「うぁっ、くぅ…っ」

 レイヴンがアリシアの背中を強く引き寄せ、最奥へ精を放つ。



 2人共、果てた後もそのまま抱き合っていた。
 お互いに小刻みに震えているのが伝わってきて愛しさが込み上げてくる。 
 
「んっ、ちゅっ」

 体の震えが落ち着いた頃、どちらからともなく口づけ合っていた。
 レイヴンのものはまだ挿入はいったままで、十分な硬度を保っている。
 レイヴンの腰が動き出すと、アリシアも知らずに応えていた。

 今夜もまた、長い夜になりそうだ。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

大嫌いな次期騎士団長に嫁いだら、激しすぎる初夜が待っていました

扇 レンナ
恋愛
旧題:宿敵だと思っていた男に溺愛されて、毎日のように求められているんですが!? *こちらは【明石 唯加】名義のアカウントで掲載していたものです。書籍化にあたり、こちらに転載しております。また、こちらのアカウントに転載することに関しては担当編集さまから許可をいただいておりますので、問題ありません。 ―― ウィテカー王国の西の辺境を守る二つの伯爵家、コナハン家とフォレスター家は長年に渡りいがみ合ってきた。 そんな現状に焦りを抱いた王家は、二つの伯爵家に和解を求め、王命での結婚を命じる。 その結果、フォレスター伯爵家の長女メアリーはコナハン伯爵家に嫁入りすることが決まった。 結婚相手はコナハン家の長男シリル。クールに見える外見と辺境騎士団の次期団長という肩書きから女性人気がとても高い男性。 が、メアリーはそんなシリルが実は大嫌い。 彼はクールなのではなく、大層傲慢なだけ。それを知っているからだ。 しかし、王命には逆らえない。そのため、メアリーは渋々シリルの元に嫁ぐことに。 どうせ愛し愛されるような素敵な関係にはなれるわけがない。 そう考えるメアリーを他所に、シリルは初夜からメアリーを強く求めてくる。 ――もしかして、これは嫌がらせ? メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。 「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」 どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……? *WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-

猫まんじゅう
恋愛
 そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。  無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。  筈だったのです······が? ◆◇◆  「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」  拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?  「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」  溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない? ◆◇◆ 安心保障のR15設定。 描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。 ゆるゆる設定のコメディ要素あり。 つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。 ※妊娠に関する内容を含みます。 【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】 こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)

悪役令嬢は王太子の妻~毎日溺愛と狂愛の狭間で~

一ノ瀬 彩音
恋愛
悪役令嬢は王太子の妻になると毎日溺愛と狂愛を捧げられ、 快楽漬けの日々を過ごすことになる! そしてその快感が忘れられなくなった彼女は自ら夫を求めるようになり……!? ※この物語はフィクションです。 R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。

冷徹御曹司と極上の一夜に溺れたら愛を孕みました

せいとも
恋愛
旧題:運命の一夜と愛の結晶〜裏切られた絶望がもたらす奇跡〜 神楽坂グループ傘下『田崎ホールディングス』の創業50周年パーティーが開催された。 舞台で挨拶するのは、専務の田崎悠太だ。 専務の秘書で彼女の月島さくらは、会場で挨拶を聞いていた。 そこで、今の瞬間まで彼氏だと思っていた悠太の口から、別の女性との婚約が発表された。 さくらは、訳が分からずショックを受け会場を後にする。 その様子を見ていたのが、神楽坂グループの御曹司で、社長の怜だった。 海外出張から一時帰国して、パーティーに出席していたのだ。 会場から出たさくらを追いかけ、忘れさせてやると一夜の関係をもつ。 一生をさくらと共にしようと考えていた怜と、怜とは一夜の関係だと割り切り前に進むさくらとの、長い長いすれ違いが始まる。 再会の日は……。

孕ませねばならん ~イケメン執事の監禁セックス~

あさとよる
恋愛
傷モノになれば、この婚約は無くなるはずだ。 最愛のお嬢様が嫁ぐのを阻止? 過保護イケメン執事の執着H♡

【R-18】年下国王の異常な執愛~義母は義息子に啼かされる~【挿絵付】

臣桜
恋愛
『ガーランドの翠玉』、『妖精の紡いだ銀糸』……数々の美辞麗句が当てはまる17歳のリディアは、国王ブライアンに見初められ側室となった。しかし間もなくブライアンは崩御し、息子であるオーガストが成人して即位する事になった。17歳にして10歳の息子を持ったリディアは、戸惑いつつも宰相の力を借りオーガストを育てる。やがて11年後、21歳になり成人したオーガストは国王となるなり、28歳のリディアを妻に求めて……!? ※毎日更新予定です ※血の繋がりは一切ありませんが、義息子×義母という特殊な関係ですので地雷っぽい方はお気をつけください ※ムーンライトノベルズ様にも同時連載しています

処理中です...