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番外編・処罰の後
8 処罰の後(5-③)
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「娼婦…?」
「お金を貰って体を売る仕事の女性だよ」
「そんなっ!酷いわ!!」
エミリーはカッとなって叫んだ。
やっぱりロバートは意地悪だ。いつも嫌なことを言う。
エミリーは色々間違えていたけれど、これは間違いじゃない。
キッと睨みつけるエミリーに、ロバートは肩をすくめた。
「今更君を貶めて僕に何の得がある?僕が言ったことは唯の事実だ。それとも他に同じようなドレスを着ている人を見たことがあるのか?」
「それは…っ」
エミリーは言葉を飲み込んだ。
お茶会や夜会で会った人たちを思い出す。
明るい色や大きな柄のついたドレスを着ている夫人や令嬢はいた。
だけど明るい色に大きな柄のドレスを着た人はいなかった。
舞踏会であれば大抵の人は胸元が大きく開いたドレスを着ている。
だけど体の線がわかる程ぴったりしたドレスやスカートにスリットが入ったドレスを着ている人がいただろうか。
「…いたわ!シヴェラ伯爵夫人がお母様と似たドレスを着ているのを見たわ!」
エミリーの顔がぱっと明るくなる。
これでロバートも間違いを認めて謝ってくれると思ったのだ。
だけどロバートはふっと笑っただけだった。
「今のシヴェラ伯爵夫人は後妻だ。前妻が亡くなった後、伯爵がすぐに馴染みの娼婦を身請けして後妻にしたのは有名な話だ。つまり君たちも同じ様に見られている」
「…っ!!」
デミオンは前妻が亡くなってすぐにアンジュを後妻として迎え入れた。
アンジュは娼館にいたわけではない。だけどずっと愛人として囲われていた。
お金をもらって体を開いていた…と言えなくはない。
ショックを受けるエミリーにロバートが溜息を吐いた。
「こうなるとお祖母様は間違われたという妃殿下の言葉に頷かざるを得ないな。君たち母娘は一度公爵家を見て高位貴族が何を好み、どんな考え方をするのか知るべきだったんだ」
そこへ年配のメイドが現れ、ロバートへ頭を下げた。
エミリーはこのメイドもほとんど知らない。
これまでお世辞を言って取り入ろうとする使用人しか周りに置いていなかったから、それ以外の使用人がいるとは思ってもいなかった。
ロバートが許可をして、メイドが顔を上げる。
メイドはまるでエミリーが見えていないかのように振る舞っていた。
「お話し中に申し訳ありません。業者の者があちらの品も運び出して良いのか指示をいただきたいと申しております」
「あちらの品?」
「ジェーンお嬢様のウエディングドレスや嫁入り調度品です」
「ああ!」
ロバートは合点がいったように頷いた。
ジョッシュとエミリーをちらっと見てから視線をメイドへ戻す。
「あれはそのままエミリーが使う。1つも持ち出さない様に伝えてくれ」
「かしこまりました」
メイドは指示を受けると素早く立ち去った。
業者がロバートの指示を待っているのだ。
その背中を見送っロバートは、エミリーとジョッシュへ視線を向けた。
先ほどまではなかった侮蔑の色が滲んでいる。
「結婚式の支度についてだが、公爵閣下が援助金を出しておられたのはジェーンの為だ。花嫁が代わったのだから当然援助は打ち切られる。だがこれまで使った分の返金は求めないそうだ。ドレスも調度品もそのまま持って行ってくれ」
ロバートの怒りが籠った視線にジョッシュは身震いをした。
あのドレスや調度品にはアンジュの悪意が込められている。
「本当に愛しているのはエミリーなのだと示してやりなさい」と言われて喜んでいたかつての自分が信じられない。
アンジュに上手く乗せられたジョッシュは、人前で恥を掻かされるところだったのだ。
エミリーはジェーンの為に揃えられるドレスや調度品が羨ましくて仕方なかった。
あの素敵なドレスを着てジョッシュの隣を歩くのが何故私じゃないのかと、何度も歯噛みしていた。
ドレスも調度品もエミリーの好みに合わせて揃えられている。
侯爵家に似つかわしくない調度品と娼婦の様なドレスだ。
結婚式が終わったらすぐに奪ってやろうと思っていたのに、もう魅力を感じられない。
「別のドレスにすることは…?」
「作り直す金があるのか?」
ロバートのきつい言葉に首をすくめる。
ジョッシュの顔を窺ってみたが、そっと首を横に振られた。
もう他に選択肢はないのだ。
「お金を貰って体を売る仕事の女性だよ」
「そんなっ!酷いわ!!」
エミリーはカッとなって叫んだ。
やっぱりロバートは意地悪だ。いつも嫌なことを言う。
エミリーは色々間違えていたけれど、これは間違いじゃない。
キッと睨みつけるエミリーに、ロバートは肩をすくめた。
「今更君を貶めて僕に何の得がある?僕が言ったことは唯の事実だ。それとも他に同じようなドレスを着ている人を見たことがあるのか?」
「それは…っ」
エミリーは言葉を飲み込んだ。
お茶会や夜会で会った人たちを思い出す。
明るい色や大きな柄のついたドレスを着ている夫人や令嬢はいた。
だけど明るい色に大きな柄のドレスを着た人はいなかった。
舞踏会であれば大抵の人は胸元が大きく開いたドレスを着ている。
だけど体の線がわかる程ぴったりしたドレスやスカートにスリットが入ったドレスを着ている人がいただろうか。
「…いたわ!シヴェラ伯爵夫人がお母様と似たドレスを着ているのを見たわ!」
エミリーの顔がぱっと明るくなる。
これでロバートも間違いを認めて謝ってくれると思ったのだ。
だけどロバートはふっと笑っただけだった。
「今のシヴェラ伯爵夫人は後妻だ。前妻が亡くなった後、伯爵がすぐに馴染みの娼婦を身請けして後妻にしたのは有名な話だ。つまり君たちも同じ様に見られている」
「…っ!!」
デミオンは前妻が亡くなってすぐにアンジュを後妻として迎え入れた。
アンジュは娼館にいたわけではない。だけどずっと愛人として囲われていた。
お金をもらって体を開いていた…と言えなくはない。
ショックを受けるエミリーにロバートが溜息を吐いた。
「こうなるとお祖母様は間違われたという妃殿下の言葉に頷かざるを得ないな。君たち母娘は一度公爵家を見て高位貴族が何を好み、どんな考え方をするのか知るべきだったんだ」
そこへ年配のメイドが現れ、ロバートへ頭を下げた。
エミリーはこのメイドもほとんど知らない。
これまでお世辞を言って取り入ろうとする使用人しか周りに置いていなかったから、それ以外の使用人がいるとは思ってもいなかった。
ロバートが許可をして、メイドが顔を上げる。
メイドはまるでエミリーが見えていないかのように振る舞っていた。
「お話し中に申し訳ありません。業者の者があちらの品も運び出して良いのか指示をいただきたいと申しております」
「あちらの品?」
「ジェーンお嬢様のウエディングドレスや嫁入り調度品です」
「ああ!」
ロバートは合点がいったように頷いた。
ジョッシュとエミリーをちらっと見てから視線をメイドへ戻す。
「あれはそのままエミリーが使う。1つも持ち出さない様に伝えてくれ」
「かしこまりました」
メイドは指示を受けると素早く立ち去った。
業者がロバートの指示を待っているのだ。
その背中を見送っロバートは、エミリーとジョッシュへ視線を向けた。
先ほどまではなかった侮蔑の色が滲んでいる。
「結婚式の支度についてだが、公爵閣下が援助金を出しておられたのはジェーンの為だ。花嫁が代わったのだから当然援助は打ち切られる。だがこれまで使った分の返金は求めないそうだ。ドレスも調度品もそのまま持って行ってくれ」
ロバートの怒りが籠った視線にジョッシュは身震いをした。
あのドレスや調度品にはアンジュの悪意が込められている。
「本当に愛しているのはエミリーなのだと示してやりなさい」と言われて喜んでいたかつての自分が信じられない。
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エミリーはジェーンの為に揃えられるドレスや調度品が羨ましくて仕方なかった。
あの素敵なドレスを着てジョッシュの隣を歩くのが何故私じゃないのかと、何度も歯噛みしていた。
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侯爵家に似つかわしくない調度品と娼婦の様なドレスだ。
結婚式が終わったらすぐに奪ってやろうと思っていたのに、もう魅力を感じられない。
「別のドレスにすることは…?」
「作り直す金があるのか?」
ロバートのきつい言葉に首をすくめる。
ジョッシュの顔を窺ってみたが、そっと首を横に振られた。
もう他に選択肢はないのだ。
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