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3章
164 ロバートとの再会①
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「ノティス、私と一緒に行きましょう」
ジェーンの方へ踏み出そうとしては躊躇うノティスへ声を掛けたのはカナリーだった。
カナリーは先程までサディアスと踊っていたはずだ。サディアスはどうしたのかとフロアを見渡せば、同年代の男性数人と談笑している。学園の同級生だろう。
男性には男性の社交がある。
カナリーもこの後しばらくは女性の友人と交流する為に別れたのだ。
カナリーとジェーンに親交があることは、以前アリシアのお茶会に出た夫人たちから広まっている。
確かにノティスが1人でジェーンへ声を掛けるより、カナリーと一緒の方が良い。
2人の背中を見送るアリシアをレイヴンが抱き寄せた。
「カナリーがいるから大丈夫だよ」
レイヴンがアリシアの耳元で囁く。
周囲の人からは耳元に口づけている様に見えるのだろうか。悲鳴のような歓声が聞こえていた。
「私、お義姉様なのですね」
アリシアも小声で囁く。
いつの間にかノティスを義姉として案じるようになっている。
「お兄様もこんな気持ちなのかしら」
アリシアがそう言うと、レイヴンが笑った。
そこへ近づいてくる人影があった。
長身で、よく知っている人物だ。
そして、ここにいるはずがない人物でもあった。
「お久しぶりです、殿下、妃殿下」
ロバートが2人の前で恭しく頭を下げる。
アリシアは驚きすぎて応えることができない。
ロバートはキャンベル侯爵家の領地を立て直す為に忙しくしているはずだ。王都に戻っているとは聞いていない。
それに今日はルーファスが来ている。
「少し遅れてしまいました。遅くなりましたが、ご挨拶をさせて下さい」
「ロバート殿…」
ロバートは必死で動揺を押し隠すアリシアににこりと笑ってみせた。
アリシアが案じていることがわかっているようだ。
「何分やらなくてはならないことばかりで領内を飛び回っており、当分王都に戻る予定はなかったのですが、殿下がわたしの居場所を探して直々に招待状と文を送って下さったのですよ。『ジェーン嬢の晴れの日だから是非』とね」
「え?」
先程同じような話を聞いた気がする。
アリシアがレイヴンの顔を見ると、レイヴンがきまり悪そうな表情をしていた。
「君たちは本当に仲が良かったから、ジェーン嬢の晴れ姿を見たいだろうと思ったんだ」
「ですが今日は…」
「殿下からの文には兄も招待していることが書かれていましたから大丈夫ですよ」
「っ!!」
ロバートは舞踏会に出席しない理由を領地の立て直しで忙しいからと言ったが、本当は違う。
ルーファスを刺激しないように社交界から距離を置いているからだ。
実際に今でもロバートに気付いた貴族たちがひそひそと言葉を交わしているのが聞こえてくる。
「お気遣いいただき、ありがとうございます。おかげで素晴らしい淑女になったジェーンの姿を見ることができました。それにあれだけ堂々と人前で話すことができるのは自分自身に自信があるからです。ジェーンにチャンスをくださり、ありがとうございます」
素晴らしい淑女となったジェーンの姿をロバートに見せたい気持ちはアリシアにもあった。
だけどロバートは独立した後、王都や伯爵家と距離を置いている。
その気持ちがわかっているので、アリシアたちは今日ここにロバートがいないことも仕方がないと思っていた。
だけどレイヴンが呼んでくれていたのか。
ロバートは不本意ではあっても子爵位を得た。
アナトリアの貴族である以上、王太子からの招待に応えないわけにはいかない。
「行きたいけど行けない」気持ちを、「行きたくなくても行かなければならない」に変えてくれたのだ。
「ありがとうございます」
アリシアはレイヴンへ頭を下げた。
ロバートはきっと昼の部のスピーチもどこかで見ていたはずだ。
立派になったジェーンの姿を見てもらうことができた。
「余計なことだったかもしれないけど、喜んでもらえたなら良かった」
レイヴンの言葉にロバートは静かに頭を垂れた。
そんなロバートにレイヴンが声を掛ける。
「モルガン伯爵とルーファス殿を明日王宮へ招待しているんだ。ロバート殿も良ければ是非」
「…そうですね。いつまでも避けているわけにはいかないと、わかっているのです」
頷いたロバートの顔は穏やかだった。
ジェーンの方へ踏み出そうとしては躊躇うノティスへ声を掛けたのはカナリーだった。
カナリーは先程までサディアスと踊っていたはずだ。サディアスはどうしたのかとフロアを見渡せば、同年代の男性数人と談笑している。学園の同級生だろう。
男性には男性の社交がある。
カナリーもこの後しばらくは女性の友人と交流する為に別れたのだ。
カナリーとジェーンに親交があることは、以前アリシアのお茶会に出た夫人たちから広まっている。
確かにノティスが1人でジェーンへ声を掛けるより、カナリーと一緒の方が良い。
2人の背中を見送るアリシアをレイヴンが抱き寄せた。
「カナリーがいるから大丈夫だよ」
レイヴンがアリシアの耳元で囁く。
周囲の人からは耳元に口づけている様に見えるのだろうか。悲鳴のような歓声が聞こえていた。
「私、お義姉様なのですね」
アリシアも小声で囁く。
いつの間にかノティスを義姉として案じるようになっている。
「お兄様もこんな気持ちなのかしら」
アリシアがそう言うと、レイヴンが笑った。
そこへ近づいてくる人影があった。
長身で、よく知っている人物だ。
そして、ここにいるはずがない人物でもあった。
「お久しぶりです、殿下、妃殿下」
ロバートが2人の前で恭しく頭を下げる。
アリシアは驚きすぎて応えることができない。
ロバートはキャンベル侯爵家の領地を立て直す為に忙しくしているはずだ。王都に戻っているとは聞いていない。
それに今日はルーファスが来ている。
「少し遅れてしまいました。遅くなりましたが、ご挨拶をさせて下さい」
「ロバート殿…」
ロバートは必死で動揺を押し隠すアリシアににこりと笑ってみせた。
アリシアが案じていることがわかっているようだ。
「何分やらなくてはならないことばかりで領内を飛び回っており、当分王都に戻る予定はなかったのですが、殿下がわたしの居場所を探して直々に招待状と文を送って下さったのですよ。『ジェーン嬢の晴れの日だから是非』とね」
「え?」
先程同じような話を聞いた気がする。
アリシアがレイヴンの顔を見ると、レイヴンがきまり悪そうな表情をしていた。
「君たちは本当に仲が良かったから、ジェーン嬢の晴れ姿を見たいだろうと思ったんだ」
「ですが今日は…」
「殿下からの文には兄も招待していることが書かれていましたから大丈夫ですよ」
「っ!!」
ロバートは舞踏会に出席しない理由を領地の立て直しで忙しいからと言ったが、本当は違う。
ルーファスを刺激しないように社交界から距離を置いているからだ。
実際に今でもロバートに気付いた貴族たちがひそひそと言葉を交わしているのが聞こえてくる。
「お気遣いいただき、ありがとうございます。おかげで素晴らしい淑女になったジェーンの姿を見ることができました。それにあれだけ堂々と人前で話すことができるのは自分自身に自信があるからです。ジェーンにチャンスをくださり、ありがとうございます」
素晴らしい淑女となったジェーンの姿をロバートに見せたい気持ちはアリシアにもあった。
だけどロバートは独立した後、王都や伯爵家と距離を置いている。
その気持ちがわかっているので、アリシアたちは今日ここにロバートがいないことも仕方がないと思っていた。
だけどレイヴンが呼んでくれていたのか。
ロバートは不本意ではあっても子爵位を得た。
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「行きたいけど行けない」気持ちを、「行きたくなくても行かなければならない」に変えてくれたのだ。
「ありがとうございます」
アリシアはレイヴンへ頭を下げた。
ロバートはきっと昼の部のスピーチもどこかで見ていたはずだ。
立派になったジェーンの姿を見てもらうことができた。
「余計なことだったかもしれないけど、喜んでもらえたなら良かった」
レイヴンの言葉にロバートは静かに頭を垂れた。
そんなロバートにレイヴンが声を掛ける。
「モルガン伯爵とルーファス殿を明日王宮へ招待しているんだ。ロバート殿も良ければ是非」
「…そうですね。いつまでも避けているわけにはいかないと、わかっているのです」
頷いたロバートの顔は穏やかだった。
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