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3章

104 伯爵家の三兄弟①

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 レイヴンからライアンについて訊かれたアリシアは、アダムとよく似た容姿の男性を思い浮かべた。

 ルトビア公爵家はどうやら血が濃いようで、血筋の者は皆栗色の髪、緑色の瞳をしている。
 アダム、デミオン、ライアンの三兄弟も同じであり、アリシアとレオナルドはもちろん、従兄妹のジェーンとエミリー、ロバートを含めたモルガン伯爵家の三兄弟も同じ栗色の髪と緑色の瞳だ。

「ライアン伯父様はお優しい方ですわ。伯父様は領地にいることが多いのでお会いすることはあまりありませんけれど、お会いした時は伯爵領の特産である織物をいつもお土産に下さいましたし、領地のお話を良くして下さいます。ジェーンのことも心配していて、良く気遣ってくれていました」

 話を聞きながら、レイヴンもライアンの顔を思い浮かべる。
 ライアンは宮廷で役職についていないので直接話をしたことはほとんどない。
 年に数回王宮で開かれる大きな舞踏会で挨拶を受けるくらいだ。
 
「ライアン伯父様がどうかしたのですか?」

「宰相と違ってあまり面識がないから、どんな方なのかと思っただけだよ。アリシアの伯父上だからね」

 アリシアの不安気な様子に気がついたレイヴンは、明るい声でそう言うとアリシアの額に口づけた。
 レイヴンがライアンのことを話題にするのは初めてなので、何かあったのかと不安に思っても仕方がない。
 王位継承権のことをアリシアに話すつもりのないレイヴンは、ただアリシアの身内のことが知りたいだけなのだと誤魔化すことにする。

 そんなレイヴンにアリシアは少し考える様子を見せた後、話し出した。

「ライアン伯父様は優しい方ですわ。勿論厳しいところもありますけれど、思いやりのある方で…、とても公平な方です」

「それは良いことだよね?」

 アリシアが上げるライアンの特徴は美点のはずだ。だけどアリシアはどこか話しづらそうにしている。

「勿論ですわ!私、伯父様は素晴らしい方だと思っています!」

 自分の話し方のせいでレイヴンにおかしな印象を与えてしまった。
 そのことに気がついたアリシアは、打ち消そうとして大きな声を出していた。
 言ってしまった後でハッとしてレイヴンの顔を見る。
 レイヴンは急に大きな声を出したアリシアに驚いているようだ。
 
「…レイヴン様は、ライアン伯父様の長男であるルーファス殿をご存知でしょうか」

「ルーファス殿?いや、モルガン伯爵と同じで面識があるくらいかな。舞踏会で挨拶を受けたことはあるけど、親しく言葉を交わしたことはない」

「ルーファス殿の評判はご存知でしょうか」

「評判?…いや、それもあまり聞いたことがないな」

 レイヴンはルーファスのことを思い浮かべるが、挨拶を受けた時の真面目そうな顔が浮かんでくるくらいだ。
 モルガン伯爵家の次期当主として届け出られていることは知っているけれど、それ以上の話を聞いたことは無い。

 モルガン伯爵家で有名なのは三男のロバートだ。
 ロバートは子どもの頃からとても優秀だと言われていた。
 レイヴンの側近に選ばれなかったのは少し年が離れすぎていることと、公爵家にレオナルドがいたからだ。

「…つまりはそういうことですわ」

 考えを巡らせるレイヴンに、アリシアが悲しそうな声でそう言った。




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